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【第7章】第4話「距離が近い後輩」


「透真先輩」


放課後。


部室の扉が開く。


その声だけで、

何人かが顔を上げた。



「琉衣くん!」


透真がぱっと笑う。


「今日早いね」


「授業早く終わったので」


琉衣は自然な動きで、

透真の隣に座った。


近い。


かなり近い。



「……またそこ座るんだ」


薫がぼそっと言う。


「空いてたので」


琉衣は涼しい顔だった。


その返しがまた強い。



透真は全然気付いていない。


「琉衣くん、

星座覚えるの早いよね」


「透真先輩の説明、

分かりやすいです」


「え、ほんと!?」


「はい」


真っ直ぐ見つめる。


褒める。


距離近い。


逃げない。



和希が小さく笑った。


「いやぁ……

すごい後輩入ったねぇ」


「分かりやすすぎる」


裕翔が引きつった顔をする。


「透真しか見えてなくない?」


「見えてないと思う」


紬が静かに言った。



「透真先輩、

今日髪跳ねてます」


「えっ」


透真が慌てて前髪を触る。


「ほんとだ」


「かわいい」


「え?」


透真がきょとんとする。


琉衣は平然としていた。



夕花が思わず立ち上がる。


「距離近!!」


「夕花ちゃん声出てる」


和希が笑う。



観測準備中。


透真が脚立に乗ろうとすると。


「透真先輩、

危ないです」


琉衣が自然に脚立を支える。


「ありがとう!」


「いえ」


その距離。


近い。


自然すぎる。



「……あいつ絶対計算してる」


薫が真顔で言う。


「してるねぇ」


和希が頷く。


「でも透真くん、

全部“懐かれてる”で処理してるからなぁ」


「そこが一番厄介」


昴が静かに言った。



帰り道。


校門前。


「透真先輩」


「ん?」


「一緒帰ってもいいですか?」


自然。


あまりにも自然。



「いいよ!」


透真は即答した。


「ちょうど駅まで一緒だしね」


「はい」


琉衣が嬉しそうに笑う。



数歩後ろ。


裕翔が固まる。


「え、

普通に二人で帰るの?」


「マジか」


夕花が顔をしかめる。


薫は露骨に不機嫌だった。


「……なんなんだよあいつ」


「分かりやすすぎて逆に清々しいね」


和希は楽しそうだった。



「透真先輩って、

優しいですよね」


帰り道。


琉衣がぽつりと言う。


「え?」


「文化祭の時も、

すごく助けられました」


透真は少し照れたように笑う。


「そんな大したことしてないよ」


「しました」


琉衣は迷いなく言った。


その目は真っ直ぐだった。



透真は、

その視線の意味をまだ知らない。


ただ。


「琉衣くん、

ほんと素直だよねぇ」


嬉しそうに笑うだけ。



翌日。


部室。


「おはようございます、

透真先輩」


「おはよー!」


琉衣、

透真の隣。



「……またいる」


薫が呟く。


「もう固定席だね」


伊織が静かに言った。


「距離感バグってる」


裕翔が遠い目をする。



その中心で。


透真だけが、

何も知らずに笑っていた。


「琉衣くん、

今日も来てくれて嬉しい!」


その一言で。


琉衣の機嫌が、

目に見えて良くなる。



和希がぽつりと呟く。


「これ、

春の嵐っていうか……」


「台風レベルだろ」


薫が即答した。

読んでいただきありがとうございます!

毎日21時に投稿予定です५✍⋆*

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