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【第7章】第3話「入部希望」


四月。


放課後。


新歓期間の天文部は、

少しだけ賑やかだった。



「わ、望遠鏡すご!」


「プラネタリウムまた見たい!」


「星って意外と面白いかも」


部室には、

見学の一年生たちが何人か来ている。


友達同士で来た子。


なんとなく興味を持った子。


文化部を探している子。


春らしい空気。



その中心で。


透真は楽しそうに話していた。


「これ木星!」


「今日、

衛星も見えるんだよ」


「えっほんと!?」


「ほんと!」


目をきらきらさせながら、

説明している。


完全に通常運転だった。



「透真くん、

完全に生き生きしてるなぁ」


和希が笑う。


「新歓向いてるかもね」


裕翔も苦笑した。


「星の話し始めると止まんないけど」


「それはもう諦めてる」


昴が静かに言う。



その少し離れた場所。


琉衣は椅子に座りながら、

透真を見ていた。


視線が、

分かりやすい。


隠す気がない。



「……あれ絶対透真目当てだろ」


薫がぼそっと言う。


「だねぇ」


和希は即答だった。


「分かりやすすぎる」


「毎回透真くんしか見てない」


紬も小さく呟く。


夕花は腕を組む。


「なんかもう、

距離近いんだよね」



「琉衣くん!」


透真がぱっと振り返る。


「今日も来てくれた!」


その笑顔に。


琉衣も自然と笑った。


「はい」


「嬉しい!」


距離が近い。


近すぎる。



裕翔が小声で言う。


「懐くの早くない?」


「透真くんが無防備すぎる」


和希が苦笑する。


「誰にでもああだからなぁ」


「だから危ないんだろ」


薫が顔をしかめた。



数日後。


見学者は少し減った。


さらに数日後。


もっと減った。


リアルだった。



「今日少ないねぇ」


和希が部室を見回す。


「最初だけ来る人多いからな」


昴が言う。


「そっかぁ」


透真は少し残念そうだった。


でも。


その部室の隅には。


今日も、

琉衣がいた。


普通にいる。


自然にいる。



「……まだいる」


薫がぼそっと呟く。


「いるね」


裕翔が頷く。


「毎回来てない?」


夕花が言う。


「来てる」


紬も静かに頷いた。


完全に包囲網だった。



でも。


琉衣はそんな空気を気にしない。


むしろ真っ直ぐだった。


「透真先輩」


「ん?」


「今日の星、

何見えるんですか?」


「今日はね、

春の大三角!」


透真が嬉しそうに説明を始める。


その横顔を、

琉衣は楽しそうに見ていた。



そして。


四月の終わり頃。


部室には、

もうほとんど見学者はいなくなっていた。


静かな放課後。


窓の外は夕焼け。



「……入部したいです」


琉衣が、

真っ直ぐ言った。


部室が少し静かになる。



透真の目がぱっと輝いた。


「ほんと!?」


「はい」


「嬉しい!!」


その笑顔が、

あまりにも嬉しそうで。


既存メンバーの空気が、

静かに死んだ。



「よろしくね、琉衣くん!」


「はい」


琉衣も小さく笑う。



その後ろ。


和希が肩を震わせる。


「これはもう確定だねぇ」


「何が」


透真が首を傾げる。


「なんでもないよ」



神代先生が入部届を見る。


「今年の新入部員は一人か」


「でも濃いですよね」


和希が笑う。


「間違いない」


昴も静かに頷いた。



薫は黙ったまま、

琉衣を見る。


裕翔は小さくため息をついた。


「……嫌な予感しかしない」


その言葉に。


夕花も、

紬も、

静かに同意していた。



でも。


透真だけは、

何も気付いていなかった。


「これからよろしくね!」


そう言って笑う。


春の夕焼けの中。


新しい後輩は、

嬉しそうにその笑顔を見つめていた。

読んでいただきありがとうございます!

毎日21時に投稿予定です५✍⋆*

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