【第7章】第2話 「再会」
放課後。
体育館には、
新入生たちが集まっていた。
部活動紹介の日。
ステージ横では、
各部活が最後の確認をしている。
☆
「透真くん、
ほんとに説明覚えてる?」
和希が苦笑する。
「覚えてる!」
透真は元気よく頷いた。
でも。
「資料逆」
昴が静かに言う。
「あっ」
慌てて持ち替える。
「やっぱ緊張してるじゃん」
裕翔が笑った。
「だって、
こういうの初めてだし……」
透真が小さく呟く。
「去年やってなかったっけ?」
夕花が首を傾げる。
「え?」
透真は本気で不思議そうな顔をした。
「去年、
天文部の部活紹介ありました!?」
「……あったよ」
薫が即答する。
「え、全然覚えてない」
「お前たぶん、
空見てただろ」
「あー……」
思い当たる節がありすぎて、
透真が黙る。
和希が吹き出した。
「透真くんらしいなぁ」
☆
「次、
天文部お願いします」
呼ばれて、
透真が小さく息を吸う。
「頑張れ」
和希が肩を軽く叩いた。
☆
ステージの照明。
集まった新入生たち。
透真は少し緊張しながら、
マイクを持つ。
「天文部です」
でも。
星の話を始めた瞬間、
自然と顔が柔らかくなった。
「星って、
難しそうって思われること多いんですけど」
「実際は、
今日ちょっと空見てみようかな、
くらいでも楽しいんです」
「あと春の星座って――」
「長くなるぞ」
袖から薫の声。
体育館に笑いが起きた。
透真が慌てる。
「すみません!」
そのやり取りに、
空気が少し和らぐ。
☆
体育館後方。
新入生の列の中で。
琉衣は、
ずっとステージを見ていた。
文化祭の時と同じ声。
楽しそうに星を語る姿。
変わっていない。
でも。
前より少しだけ、
遠く見える。
先輩になったからだ。
☆
ずっと会いたかった。
この学校に入りたかった。
その理由が、
今ステージに立っている。
☆
全部の部活紹介が終わる。
体育館に解散の空気が流れ始める。
新入生たちが、
友達と話しながら出口へ向かう。
透真はステージ袖で、
資料をまとめていた。
「疲れたー……」
「途中から楽しそうだったけど」
裕翔が笑う。
「楽しかった!」
「知ってる」
薫が呆れたように言った。
☆
その時。
背後から、
少し緊張した声が聞こえた。
「……透真先輩」
透真が振り返る。
そこで。
ぴたりと動きが止まった。
☆
新しい制服。
黒髪。
少し長めの前髪。
文化祭の時より、
少しだけ大人っぽくなった顔。
でも。
ちゃんと分かった。
「……琉衣くん?」
琉衣は小さく笑った。
「受かりました」
その瞬間。
透真の顔が、
ぱっと明るくなる。
「ほんとに!?」
「はい」
「すごい!!」
透真が嬉しそうに駆け寄る。
その距離の近さに。
少し離れた場所の空気が、
静かに止まった。
☆
「おめでとう!」
「ありがとうございます」
「ちゃんと来てくれたんだ……!」
透真は本当に嬉しそうだった。
その笑顔を見て。
琉衣の胸が、
じんわり熱くなる。
☆
少し後ろ。
和希が目を細めた。
「あー……なるほど」
「完全に透真くん目当てだねぇ」
裕翔が引きつる。
「やっぱそう見える?」
薫は露骨に顔をしかめた。
「嫌な予感しかしねぇ」
伊織は静かに琉衣を見る。
夕花は腕を組む。
「なんか距離近くない?」
紬も小さく頷いた。
「近い」
☆
でも。
透真だけは、
何も気付いていなかった。
「琉衣くん、
部活見学来る!?」
嬉しそうに笑う。
その言葉に。
琉衣は迷わず頷いた。
「行きます」
春風が吹く。
その瞬間。
天文部の空気が、
少しだけ変わり始めていた。
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