【第7章 後輩という嵐】第1話「新しい春」
―第7章「後輩という嵐」
第1話「新しい春」
春。
校門前の桜が、
風に揺れていた。
新しい制服。
新しい教室。
新しい一年。
少し浮ついた空気が、
学校中に広がっている。
☆
「よっしゃ!!」
朝。
掲示板を見た瞬間、
裕翔が声を上げた。
「透真! 同じクラス!」
「ほんと!?」
透真も慌てて名簿を見る。
「あ、ほんとだ!」
二人で顔を見合わせて笑った。
「やったー!」
「今年めっちゃ楽しくなりそう」
「絶対うるさい一年になるな」
後ろから和希が笑う。
「朝から星の話してそう」
「する!」
透真が即答した。
☆
その少し離れた場所。
薫は新しいクラス表を見ながら、
無言だった。
「……別か」
小さく呟く。
去年。
透真は、
気付けばいつも隣にいた。
休み時間。
放課後。
どうでもいい話。
毎日のやり取り。
それが当たり前になっていたから。
少しだけ。
本当に少しだけ。
胸の奥が引っかかった。
「薫?」
隣から声がする。
伊織だった。
「……伊織」
「同じクラスだね」
「ああ」
伊織は静かに名簿を見る。
透真の名前は、
別のクラスにあった。
また離れた。
去年もそうだった。
でも。
放課後になれば、
自然と会えてしまう。
だからきっと、
今年も同じだ。
そう思うのに。
少しだけ、
物足りなさを感じる。
☆
「薫ー!」
そこへ、
透真が駆け寄ってくる。
「クラス違った!」
「見りゃ分かる」
「伊織とも一緒なんだ!」
「うん」
伊織が静かに頷く。
「えー絶対寂しいじゃん」
「は?」
薫が顔をしかめる。
透真は楽しそうに笑った。
「でも部活あるしね!」
その一言で。
薫の中の、
小さな違和感が少しだけ薄れる。
「……別に、
部活で会うし」
「うん!」
透真が嬉しそうに頷いた。
その横顔を、
伊織は静かに見ていた。
☆
「紬、一組だって」
「夕花は?」
「……二組」
「あ」
夕花が固まる。
「離れた……」
「でも隣のクラス」
紬が静かに言う。
「近い」
「そうだけど……!」
夕花はちらっと透真を見る。
透真は裕翔と楽しそうに話していた。
「……なんか悔しい」
「分かる」
紬が小さく頷く。
☆
三年生の教室。
和希は新しいクラス表を見ながら、
苦笑していた。
「とうとう三年だって」
「実感ないな」
昴が窓際で言う。
春の風がカーテンを揺らした。
進路。
受験。
卒業。
去年より、
“終わり”が近づいている。
でも。
「まあ、
今年も賑やかそうだけど」
和希が校庭を見る。
そこには、
透真たちがいた。
笑っている声が、
ここまで聞こえる。
昴も小さく笑った。
「確かに」
☆
始業式が終わり。
校舎の空気が少し落ち着き始めた頃。
透真は資料を持って、
職員室へ向かっていた。
窓の外。
校門の近くを、
新入生たちが歩いていく。
緊張した顔。
真新しい制服。
その中に。
見覚えのある黒髪がいた。
少し長めの前髪。
細身の背中。
透真は一瞬だけ目を止める。
でも。
ちょうど先生に呼ばれて、
そのまま歩き出した。
気付かない。
その新入生が。
ずっと、
自分を探していたことに。
☆
校門前。
琉衣は立ち止まる。
春風が桜を揺らした。
そして。
小さく笑う。
「……会えた」
その目は、
まっすぐ校舎を見上げていた。
読んでいただきありがとうございます!
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透真も高校2年生になりました!
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