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【第6章】第7話「春を待つ」

―第6章「冬空と、君の体温」


 第7話「春を待つ」



冬の終わり。


夕方の空は、

薄いオレンジに染まっていた。


空気はまだ冷たい。


でも、

少しだけ春の匂いがする。



駅前の本屋。


透真は小さな紙袋を持って店を出た。


中には、

星の特集が載った雑誌。


新しい流星群の記事を見つけて、

つい買ってしまった。


「今日空晴れるかなぁ」


誰に言うでもなく呟く。


白い吐息が、

夕暮れに溶けた。



その時。


向こうから歩いてくる制服姿が見えた。


黒髪。


少し疲れた顔。


塾帰りらしい鞄。


透真は目を丸くする。


「……琉衣くん?」


その名前に。


琉衣が、

ぴたりと足を止めた。



文化祭以来だった。


会いたかった。


でも、

会える理由なんてなかった。


連絡先も知らない。


だから。


もう会えないかもしれないと、

少しだけ思っていた。


なのに。


「久しぶり!」


透真が、

いつもの距離感で駆け寄ってくる。


柔らかい笑顔。


夕焼けの光。


文化祭の時と同じ声。


琉衣の心臓が、

一気にうるさくなった。


「……お久しぶりです」


「塾帰り?」


「はい」


「受験近いもんね」


透真は自然にそう言った。



「大変?」


「……まあ」


琉衣は少し笑う。


本当は、

結構きつかった。


模試。


面談。


志望校。


周りの期待。


不安。


ずっと張っていた糸みたいなものが、

透真の前だと少しだけ緩む。



「頑張ってるんだね」


透真が静かに言った。


その声は、

変に励ます感じじゃなかった。


本当に、

そう思ったみたいな声。


「……頑張ってます」


「知ってる」


琉衣が顔を上げる。


透真は笑った。


「文化祭の時も、

すごい真面目そうだなって思ってた」


「……」


「だから、

頑張ってるの知ってる」


その言葉が。


びっくりするくらい、

胸に残った。



「これ」


透真が紙袋を少し探る。


「ん」


差し出されたのは、

小さなしおりだった。


星座が描かれている。


深い青色。


「本屋でもらったやつなんだけど」


透真が笑う。


「お守り代わり」


「……え」


「受験、

応援してる」


琉衣は、

しおりを見つめた。


たぶん。


ずっと大事にする。


そう思った。



空が少し暗くなる。


街灯が灯る。


「透真先輩」


「ん?」


琉衣は少しだけ迷った。


でも。


ちゃんと言いたかった。


「……絶対、

この高校行きます」


透真が目を丸くする。


それから、

嬉しそうに笑った。


「うん」


その笑顔が、

春みたいだった。


「待ってる」



帰り道。


琉衣はしおりを握りしめる。


冷たい空気。


夕暮れ。


まだ少し遠い春。


でも。


前より、

ちゃんと頑張れる気がした。


それはきっと。


あの人が、

待っているから。

読んでいただきありがとうございます!

憧れの人、好きな人にこんなこと言われたら頑張れちゃう気がする!!

毎日21時に投稿予定です५✍⋆*

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⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/

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