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【第6章】第6話「甘い温度」

―第6章「冬空と、君の体温」


 第6話「甘い温度」



二月。


放課後の部室は、

甘い匂いで満たされていた。


「……なんか今日、

部室お菓子の匂いする」


透真がきょろ、と周囲を見る。


その瞬間。


夕花と紬が、

同時に少し固まった。



「はい、これ」


夕花が机に袋を置く。


続けて紬も、

小さな紙袋を並べた。


「バレンタイン」


「おおー!」


透真が一番最初に反応する。


「手作り!?」


「……うん」


「みんなの分あるから」


夕花が少し早口で言う。


机の上には、

同じデザインのラッピング袋。


シンプルな透明袋に、

小さな星シール。


見た目は全部同じだった。



「すご」


裕翔が袋を覗く。


「マフィンまである」


「紬のクッキー、

めっちゃ綺麗」


和希も感心したように笑った。


「売り物みたい」


紬は少し照れたように目を伏せる。


夕花は腕を組みながら、

そわそわしていた。


透真が袋を開ける。


「わ、美味しそう……!」


その瞬間。


薫が眉をひそめた。


「……お前、多くね?」


「え?」


透真が自分の袋を見る。


確かに。


みんなより少し中身が多い。


クッキーも一枚多いし、

マフィンも少し大きい。


しかも、

小さいチョコまで入ってる。


「ほんとだ」


裕翔も気付く。


「絶対多い」


「気のせい!!」


夕花が即答した。


「いや無理あるだろ」


薫が冷静に突っ込む。


「星宮だけ明らか多いじゃん」


「うるさい!!」


夕花の顔が真っ赤になる。


「たまたま!

サイズの問題だから!」


「へぇ」


薫がニヤつく。


「へぇじゃない!!」



その横で。


透真がもう一つ袋を開ける。


「……わ」


小さな星型クッキー。


綺麗なアイシング。


夜空みたいな青。


「星だ!」


透真の目が一気に輝く。


「かわいい……!」


紬が小さく肩を揺らした。


「……透真くん、

好きそうだったから」


「嬉しい!」


透真は本気で嬉しそうに笑う。


「食べるのもったいないなこれ」


紬、

静かに固まる。



和希はすぐ全部理解した。


「あー……なるほどねぇ」


楽しそうに笑う。


昴は何も言わない。


でも、

静かに気付いている。


伊織はクッキーを見ながら、

小さく目を細めた。


「……分かりやすい」


「だよな」


裕翔がぼそっと返す。


「無自覚なの、

透真だけ」



「いいなー星」


透真が嬉しそうに言う。


「夕花のマフィンも、

めっちゃ美味しそう!」


「……まだ食べてないだろ」


「でも分かる!」


何の根拠もない。


でも、

透真は本気でそう言う。


だから困る。



「いただきます!」


部室に、

柔らかい声が響く。


甘い匂い。


冬の夕方。


ストーブの音。


何気ない放課後。


でも。


たぶんみんな、

少しだけ特別だった。



「美味しい!」


透真が幸せそうに笑う。


その顔見て。


夕花はまた赤くなって。


紬は静かに視線を逸らして。


男子組は、

なんとも言えない顔をした。



「……なんか、

みんな優しいよね」


透真がぽつりと言う。


「?」


「最近、

すごい甘やかされてる気がする」


全員、

一瞬固まった。


でも透真は続ける。


「嬉しいなぁ」


ふわっと笑う。


その瞬間。


夕花は机に突っ伏した。


紬は完全停止。


裕翔は目を逸らす。


薫は深いため息。


伊織は静かに黙り込む。


昴は小さく笑った。


和希だけが楽しそうに言う。


「そりゃ甘やかしたくもなるよ」


「?」


透真だけが、

やっぱり何も分かっていなかった。

読んでいただきありがとうございます!

女子組が張り切るバレンタイン回です!

毎日21時に投稿予定です५✍⋆*

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⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/

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