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【第6章】第5話「触れた体温」

―第6章「冬空と、君の体温」


 第5話「触れた体温」



天気予報では、

今夜から雪だった。


まだ降ってはいない。


でも、

空気は痛いくらい冷たい。



放課後。


天文部の部室。


ストーブの前に、

透真が完全に居座っていた。


「動けない……」


「またか」


薫が呆れた声を出す。


「だって寒い」


透真はストーブへ向かって、

両手を伸ばしている。


猫みたいだ。



「透真くん」


和希が近づく。


「マフラーぐちゃぐちゃ」


「あ」


透真の首元へ、

自然に手が伸びた。


するり、と整える。


距離が近い。


でも和希は、

それを当たり前みたいにやる。


「これでよし」


「ありがとうございます」


透真は素直に笑った。


その顔見て、

和希が少しだけ目を細める。



「透真、

手」


裕翔が突然言う。


「ん?」


「貸して」


意味も分からず差し出した手を、

裕翔が両手で包み込んだ。


「冷たっ!?」


「だから言っただろ」


「え、裕翔あったか……」


透真がびっくりした顔をする。


裕翔は少し目を逸らした。


昔からそうだった。


透真は放っておくと、

すぐ無防備になる。



「星宮」


薫が何か投げる。


「わ」


小さなカイロだった。


「手袋しろって何回言わせんの」


「持ってるよ?」


「持ってるだけだろ」


正解。


透真が黙る。


「……図星」


「アホ」


でも。


薫の声は、

少しだけ優しかった。



「はい」


昴が缶ココアを差し出す。


「冷えてるぞ」


「わ、ありがとうございます」


透真は嬉しそうに受け取る。


缶の熱で、

白くなっていた指先が少し赤くなる。


昴はその様子を見ながら、

小さく笑った。


「ほんと分かりやすいな」



「透真」


夕花が近づく。


「襟折れてる」


「あ、ほんとだ」


直そうとして、

うまくできない。


「貸して」


夕花が制服の襟を整える。


近い。


顔も近い。


「……はい」


「ありがとう!」


透真は何も気にしていない。


夕花だけが、

耳まで赤かった。


「夕花、

顔赤くない?」


「うるさい!!」



「……透真くん」


紬が小さな袋を差し出した。


淡い色の布ポーチ。


「これ……?」


「カイロ入れるやつ」


透真が目を丸くする。


「え、すご……!」


ふわふわした内側。


丁寧な縫い目。


小さな星柄。


「紬が作ったの!?」


こくり。


小さく頷く。


「かわいい!」


透真が本気で嬉しそうに笑った。


「めっちゃ使う!」


紬は静かに固まる。


その横で、

夕花がちょっと羨ましそうだった。



部室でのんびりしすぎたせいで、

外はもう真っ暗だった。


「……眠」


透真が机へ突っ伏す。


「お前今日朝早かったんだっけ」


薫が聞く。


「うん……」


声がもう眠そうだった。


伊織はその様子を静かに見ていた。


それから、

透真の隣へ座る。


「透真」


「んー……?」


「肩貸す?」


透真が少し顔を上げる。


「……いいの?」


「うん」


自然な声。


透真は少し迷ってから、

伊織の肩へこてんと寄りかかった。


「……あったかい」


小さく呟く。


伊織は何も言わなかった。


でも、

その横顔は少しだけ柔らかかった。


部室が妙に静かになる。


裕翔が目を細める。


薫はなんとも言えない顔。


昴は缶ココアを飲みながら、

小さく笑った。


和希だけが、

「あーあ」と呟く。



帰り道。


夜の空気はさらに冷えていた。


白い吐息。


静かな住宅街。


透真は完全防寒状態だった。


* マフラー巻かれてる

* カイロ持たされてる

* 缶ココア持ってる

* 手袋まで装備済み


「……」


透真が少し笑う。


「なんかみんな、

過保護過ぎない?」


その言葉に、

全員少し止まる。


でも。


透真は続けた。


「でも、ありがとう」


少し照れたみたいに笑う。


その瞬間。


全員、

静かにやられた。



裕翔は目を逸らす。


薫は顔をしかめた。


「……知らねぇし」


伊織は何も言わない。


でも、

透真が寄りかかっていた肩を、

少しだけ気にしている。


昴は小さく笑った。


和希は困ったように息を吐く。


「もっと甘やかしたくなるなぁ」


夕花は真っ赤。


紬は完全に固まっていた。



その中心で。


透真だけが、

不思議そうな顔をしている。


「え、なんでみんな黙るの?」


本当に分かっていない。


だから。


こんなにも、

目が離せない。

読んでいただきありがとうございます!

みんな透真に対して過保護です(笑)

毎日21時に投稿予定です५✍⋆*

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⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/

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