【第6章】第3話「クリスマスの約束」
―第3話「クリスマスの約束」
十二月も後半に入ると、
街は一気にクリスマス色になった。
駅前のイルミネーション。
店先のリース。
流れるクリスマスソング。
冬の空気の中、
どこも少し浮かれて見える。
☆
放課後。
天文部の部室。
ストーブの前に、
みんな自然と集まっていた。
「あったか……」
透真が幸せそうに呟く。
「そこ動かない気だろ」
薫が呆れる。
「だって寒い」
透真はマグカップを両手で持ったまま、
ストーブの前から離れない。
和希が笑った。
「猫みたい」
「透真くん冬弱そうだもんね」
「弱いです」
即答。
☆
「そういえばさ」
夕花が机へ頬杖をつく。
「もうすぐクリスマスじゃん」
その瞬間。
空気が少し変わる。
「……あー」
裕翔が微妙な顔をした。
「リア充イベント」
「偏見すご」
薫が返す。
紬は静かに紅茶を飲んでいた。
昴は機材を触りながら、
特に反応しない。
でも。
みんな少しだけ、
意識はしていた。
☆
「クリスマスかぁ……」
透真が窓の外を見る。
駅前のイルミネーションが、
遠くに少し見えた。
そして。
「みんなでどっか行く?」
さらっと言った。
一瞬、
部室が静かになる。
「……みんなで?」
裕翔が聞き返す。
「うん!」
透真は楽しそうだった。
「イルミネーションとか見たい!」
完全に無邪気。
何も考えてない顔。
でも。
だから余計に破壊力がある。
☆
「別にいいけど」
薫が先に目を逸らす。
「人多そう」
「クリスマスだしな」
昴も小さく頷いた。
「でも絶対綺麗ですよ!」
透真はもう行く気満々だった。
「冬の空って、
イルミネーションも映えるし!」
「発想が天文部」
夕花が笑う。
☆
「どこ行く?」
和希がスマホを開く。
「駅前?
それとも中央公園の方?」
「中央公園、
毎年すごいらしいよ」
紬が静かに言う。
「行きたい!」
透真が即反応。
その顔を見て、
みんな少しだけ笑った。
☆
でも。
問題は別にあった。
――誰が透真と行動するか。
☆
「当日、
集合どうする?」
伊織が聞く。
「駅?」
「じゃあ俺、
透真迎え行く」
裕翔が自然に言う。
「は?」
薫が反応した。
「なんでお前が」
「家近いし」
「別に現地集合でいいだろ」
「迷うかもしれないじゃん」
「子どもじゃねぇよ」
「でも透真だぞ」
全員、
ちょっと納得してしまった。
「え、ひどくない?」
透真が抗議する。
☆
「じゃあ帰りは?」
夕花が聞く。
「夜遅くなるし、
女子だけ別の方がいいかも」
和希が真面目に言う。
「送るよ」
「え、和希先輩優しい」
「知ってる」
その横で、
昴が小さくため息をついた。
なんかもう、
全員自然に透真中心で考えてる。
☆
「透真くん、
楽しみ?」
紬が小さく聞く。
「うん!」
透真は嬉しそうに笑った。
「みんなで行くの、
絶対楽しい」
その笑顔が、
あまりにも嬉しそうで。
誰も、
“二人がよかった”
なんて言えなくなる。
☆
帰り道。
「……みんなで、か」
裕翔がぽつりと呟く。
「不満?」
薫が聞く。
「別に」
即答。
でも。
少しだけ思う。
透真と二人で、
イルミネーション見たらどうなるんだろう。
☆
その頃。
透真は夜空を見上げながら、
一人でちょっと浮かれていた。
「クリスマス楽しみだなぁ」
完全にイベントを楽しみにしてる顔。
恋愛感情、
ゼロ。
だからこそ。
周りだけが、
どんどん苦しくなっていく。
読んでいただきありがとうございます!
ー
透真は純粋にみんなと行きたいだけ
みんなはそれぞれ透真といきたい…そんな回です。
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毎日21時に投稿予定です५✍⋆*
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