【第6章】第2話 「白い吐息」
―第2話 「白い吐息」
観測が終わった頃には、
夜もかなり深くなっていた。
屋上は冷え切っていて、
みんな白い息を吐いている。
「さっむ……」
透真が肩を縮める。
「だからもっと厚着しろって」
薫が呆れながら言った。
「してるよ?」
「それで?」
「してるつもり」
「だめじゃん」
すぐ返される。
昴が小さく笑った。
☆
今日は帰る方向の関係で、
帰り道は四人だった。
透真。
伊織。
薫。
昴。
駅まで続く夜道。
街灯の明かり。
静かな住宅街。
冬の空気は冷たいのに、
どこか心地いい。
☆
「今日、
星すごかったね」
透真が空を見上げながら言う。
「オリオン座めちゃくちゃ綺麗だった」
「透真、
ほんと好きだよな」
昴が隣で言う。
「好きです」
即答。
迷いがない。
その言い方が、
昴は昔から少し好きだった。
☆
「伊織」
透真が振り返る。
「ん?」
「今日あんまり喋ってなかった」
伊織は少しだけ目を瞬かせた。
ちゃんと見てるんだ。
「……聞いてる方が楽しかったから」
「ほんと?」
「透真、
今日ずっと楽しそうだったし」
透真は少し照れたように笑う。
「冬の星好きなんだよね」
その顔が柔らかい。
伊織は少しだけ目を細めた。
やっぱり、
見ていて飽きない。
☆
コンビニ前。
「ちょっと寄る?」
昴が聞く。
全員頷いた。
暖房の空気に、
透真が「生き返る……」と呟く。
薫が笑った。
「大袈裟」
「ほんとに寒かったんだって」
透真は温かい缶ミルクティーを選ぶ。
伊織はホットコーヒー。
昴はブラック。
薫はココア。
「薫、
甘」
「うるさい」
そのやり取りに、
透真が笑う。
☆
店を出ると、
また冷たい風。
「うわ寒っ」
透真が缶を両手で持つ。
その時。
「透真」
伊織が呼ぶ。
「ん?」
「マフラーずれてる」
「あ」
伊織は自然に手を伸ばした。
少しだけ近い距離。
透真の首元へ、
マフラーを巻き直す。
指先が頬に少し触れた。
冷たい。
でも、
どこか熱い。
「はい」
「……ありがと」
透真が少しだけ目を丸くする。
伊織は静かに目を逸らした。
薫はその光景を見て、
なんとも言えない顔をする。
モヤモヤする。
でも、
理由を考えたくない。
☆
駅前。
「じゃあここで」
昴が言う。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
みんなそれぞれ別方向。
でも。
透真だけ、
まだ空を見上げていた。
「透真、
歩きながら空見るな」
薫が腕を引く。
「あ、ごめん」
そのまま少し近い距離になる。
伊織はその横顔を静かに見ていた。
白い吐息。
冬の夜。
静かな帰り道。
透真は小さく笑う。
「なんか今日、
冬って感じだったね」
その言葉が、
妙に胸へ残る。
☆
伊織は帰り道の途中、
ふと思った。
星を見てる透真も好きだ。
笑ってる透真も。
でも。
こうして、
何気なく歩いてる時間が。
一番好きかもしれない。
読んでいただきありがとうございます!
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珍しいメンバーでの帰宅です。
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