【第5章】第8話「星より眩しい」
―第8話「星より眩しい」
後夜祭が終わった頃には、
校舎はもう静かだった。
さっきまでの賑やかさが嘘みたいに、
廊下には人影も少ない。
遠くで机を運ぶ音。
笑い声。
片付けの空気。
文化祭の終わりだけが、
ゆっくり残っていた。
☆
一年教室。
『宇宙博覧会』
そう書かれた看板は、
半分外されていた。
床には段ボール。
剥がされた星型装飾。
ラメの残る机。
楽しかった時間の跡みたいだった。
「つっかれた〜……」
夕花が机に突っ伏す。
「夕花、
今日ずっと動いてたもんね」
透真が笑う。
「誰かさんが危なっかしいから」
「え、俺?」
「自覚ないの?」
「ない」
即答。
薫が呆れた顔をした。
「ある意味すごい」
☆
紬は剥がした装飾を静かに箱へ入れている。
その横で、
透真も一緒に片付けていた。
「これどうする?」
「そっちの箱」
「了解」
自然な距離。
自然な会話。
それだけなのに、
紬は少しだけ嬉しくなる。
☆
「透真、
そこ届く?」
後ろから声。
裕翔だった。
「ちょっと届かない」
「貸して」
自然に手を伸ばす。
高い位置の飾りを外して、
そのまま透真へ渡した。
「ありがと」
「ん」
あまりにも自然すぎるやり取り。
薫がなんとなく面白くなくて、
小さくため息をつく。
☆
「お疲れ、一年組」
教室の扉が開く。
和希と昴だった。
「先輩!」
透真が嬉しそうに顔を上げる。
その反応だけで、
二人とも少し表情が柔らかくなる。
「片付け順調?」
「もうちょっとです!」
「なら差し入れ」
和希がコンビニ袋を持ち上げた。
ジュース。
お菓子。
歓声が上がる。
「和希先輩神!」
夕花が即反応する。
「だろ?」
和希が笑った。
☆
昴は教室を見回した。
剥がされかけた星。
黒板の宇宙イラスト。
文化祭の終わり。
そして。
窓際に立つ透真。
夜空を見ていた。
「……透真」
呼ぶと、
ゆっくり振り返る。
その顔が、
やっぱり綺麗だった。
☆
「文化祭、
終わっちゃうね」
透真が小さく言う。
窓の外。
夜空。
文化祭のライトが少しだけ残っている。
「寂しい?」
伊織が静かに聞く。
透真は少し考えて。
それから笑った。
「……うん。
でも、すごく楽しかった」
その笑顔が、
柔らかくて。
満たされていて。
全員、
少しだけ息を止める。
☆
“この時間、
終わってほしくない”
誰も口にはしない。
でも。
きっと同じことを思っていた。
☆
神代先生が教室へ顔を出す。
「おー、
まだ残ってたのか」
「先生」
「片付け終わったら帰れよ。
青春もほどほどにな」
笑いながら言う。
でも。
その視線は少し優しかった。
楽しそうに笑う生徒たちを、
静かに見守るみたいに。
☆
最後の装飾を箱へ入れる。
教室の灯りが消える。
文化祭終了。
廊下へ出ると、
窓の向こうに夜空が広がっていた。
透真は足を止める。
そして、
小さく空を見上げた。
「……星、見える」
その声に、
みんなもつられて空を見る。
文化祭の終わり。
夏と秋の間。
少しだけ冷たい夜風。
☆
透真が笑う。
「またみんなで、
こういうのしたいね」
その言葉が。
夜空より、
星より、
ずっと眩しかった。
読んでいただきありがとうございます!
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この高校の文化祭豪華だなーと思いながら作っています(笑)
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毎日21時に投稿予定です५✍⋆*
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