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【第5章】第7話「浴衣の夜」

―第7話「浴衣の夜」




文化祭二日目。


校内放送が流れる。


『これより後夜祭を開始します』


歓声が上がった。


夕暮れから夜へ変わる校庭。


提灯。


ライト。


音楽。


文化祭最後の熱が、

学校中を包み込んでいた。



「……遅い」


夕花が腕を組む。


隣では紬も静かに待っていた。


二人とも浴衣姿。


夕花は深い紺色。


紬は淡い薄紫。


普段の制服姿とは違う、

柔らかな雰囲気だった。


「絶対似合うよね」


紬がぽつりと呟く。


「……まあ、

顔はいいし」


夕花が小さく返した時。


「ごめん、待った?」


声。


振り返る。


その瞬間。


二人とも固まった。



透真だった。


淡い藍色の浴衣。


白い帯。


黒髪がいつもより柔らかく見える。


夜の光に溶けそうなほど、

透明感が強かった。


「……どうかな」


少し困ったように笑う。


夕花、

完全停止。


紬も静かに目を見開いていた。


「えっと……変?」


透真が首を傾げる。


「……っ、変じゃない!!」


夕花が勢いよく言う。


声が少し裏返った。


透真が笑う。


「よかった」


その笑顔で、

さらにダメージが入る。



「うわ」


後ろから声。


和希だった。


今日は黒地の浴衣。


いつもの柔らかい雰囲気に、

少しだけ大人っぽさが混ざっている。


周りの女子がざわつく。


「和希先輩、

めっちゃ似合ってます」


透真が素直に言う。


和希は少し笑った。


「透真くんに言われると嬉しいな」


そして。


「でも今日一番ずるいの、

透真くんだね」


その言葉に、

周囲が静かに同意した。



「……目立つ」


低い声。


昴だった。


紺の浴衣姿。


普段より少しラフなのに、

逆に色気が増している。


「昴先輩も似合ってる!」


透真が即答する。


昴は少し黙って。


「……ありがと」


小さく返した。


耳が少し赤い。


和希が横で笑っている。



屋台が並ぶ校庭。


射的。


焼きそば。


りんご飴。


提灯の赤い光。


夏祭りみたいな空気。


「わ……すごい」


透真は完全に楽しそうだった。


見るもの全部に反応する。


「透真、

迷子になるなよ」


裕翔が隣で言う。


今日は制服のまま。


でも、

透真から目が離せない。


「ならないって」


「信用できない」


「ひどい」


笑い合う。


その距離感が自然すぎて、

薫が少しだけ眉を寄せた。



「透真」


薫が呼ぶ。


振り返った透真の横顔に、

提灯の灯りが映る。


綺麗だった。


……今日ずっと、

心臓がおかしい。


「何?」


「……りんご飴食う?」


「食べたい!」


即答。


薫は小さく笑った。


単純。


でも、

そういうところが好きだと思ってしまう。



紬は少し後ろから、

その様子を見ていた。


透真は、

誰といても楽しそうに笑う。


優しくて。


無防備で。


だから、

みんな好きになる。


でも。


“自分だけが知ってる顔”

が欲しくなる。


紬は静かに目を伏せた。



その時。


「花火始まるぞー!」


誰かが叫ぶ。


みんな空を見上げる。


夜空。


一発目の花火が咲いた。


光が、

透真の瞳に映る。


「綺麗……」


小さな声。


その横顔に。


全員、

また見惚れてしまった。



花火の光。


浴衣。


笑い声。


夏の終わりみたいな夜。


透真は空を見上げたまま、

ふわりと笑う。


その姿が、

あまりにも眩しくて。


誰も、

目を逸らせなかった。


挿絵(By みてみん)

読んでいただきありがとうございます!

頑張って透真くんは浴衣着てくれました!!

毎日21時に投稿予定です५✍⋆*

続きが気になったら評価やブックマークをお願いします


⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/

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