【第5章】第6話「文化祭デート」
―第6話「文化祭デート」
文化祭二日目。
今日は校内公開日。
昨日より少しだけ、
空気が自由だった。
一般客がいない分、
生徒たちも浮かれている。
廊下には笑い声。
写真を撮る女子たち。
軽音部のリハ音。
どこも騒がしくて、
文化祭らしい熱に包まれていた。
☆
「透真ー!」
朝から呼ばれる。
振り返ると、
夕花だった。
今日はクラス当番も少なく、
比較的自由に回れる日。
「今暇?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ先に二年見に行こ」
「え、いいの?」
「いいから」
夕花はそのまま透真の腕を引っ張った。
☆
二年フロア。
廊下には派手な装飾が並んでいる。
『お化け屋敷』
『射的』
『メイド喫茶』
一年とは違う、
“イベント感”。
「すご……」
透真が目を輝かせる。
その反応に、
夕花がちょっと笑った。
「ほんと反応いいよね」
「だって楽しい」
その言い方が子どもみたいで、
夕花は少しだけ顔を逸らした。
☆
「いらっしゃいませ〜」
聞き慣れた声。
振り返ると、
喫茶店の呼び込みをしていた和希がいた。
「和希先輩!」
「お、透真くん」
和希は今日、
黒シャツにエプロン姿だった。
妙に似合う。
「入ってく?」
「行きたい」
即答。
和希が笑う。
「じゃあ特等席案内しよっか」
「え、ずる」
夕花が横から睨む。
「だって可愛い後輩だから」
「保護者面がすごい」
「否定しない」
☆
窓際の席。
和希がジュースを置く。
「はい、サービス」
「ありがとうございます」
透真は嬉しそうに笑った。
和希はその顔を見ると、
なんだか満足してしまう。
「文化祭楽しんでる?」
「すごい楽しいです」
「そりゃよかった」
その時。
「和希、
サボるな」
低い声が飛ぶ。
昴だった。
今日は射的担当らしく、
法被姿だった。
「昴先輩似合ってる!」
透真が目を輝かせる。
昴は少しだけ黙った。
「……そうか?」
「かっこいい」
さらっと言う。
和希が吹き出した。
「はい昴ダメージ入りました〜」
「うるせぇ」
でも耳が少し赤い。
☆
その後。
射的コーナー。
「透真、
やってみる?」
昴が銃を渡す。
透真は慎重に構える。
真剣な顔。
でも。
「わっ」
全然当たらない。
「下手すぎ」
薫が後ろから笑う。
「難しいんだって!」
「貸せ」
薫が自然に隣へ立つ。
距離が近い。
「こう構える」
後ろから手を添える。
透真が少しだけ驚く。
「近……」
「うるさい」
薫はそのまま撃つ。
景品が落ちた。
「おお!」
透真が拍手する。
その反応が嬉しくて、
薫は少しだけ笑った。
☆
午後。
軽音部ステージ。
校庭に音楽が響く。
透真と薫は、
少し後ろで並んで見ていた。
風が吹く。
秋空。
ステージライト。
「文化祭って感じする」
透真が小さく言う。
薫は隣を見る。
楽しそうに笑ってる。
その横顔を見ると、
胸が少し落ち着かなくなる。
「……透真」
「ん?」
「お前、
今日ずっと楽しそう」
「楽しいから」
透真は笑った。
その顔に、
薫は少し目を逸らす。
……だから困る。
☆
その頃。
校舎内展示エリア。
「これ、
去年の写真らしいよ」
伊織が静かに説明する。
写真部展示。
風景写真が並んでいた。
透真はじっと見上げる。
「綺麗」
「透真の方が、
星見る時そんな顔してる」
「え?」
伊織は少しだけ笑う。
「夢中な顔」
透真は照れたように笑った。
その空気が、
静かで心地いい。
☆
夕方前。
中庭ベンチ。
「はい」
裕翔が缶ジュースを渡す。
「ありがと」
透真は自然に受け取った。
二人並んで座る。
騒がしい文化祭から、
少し離れた静かな場所。
裕翔は小さく息を吐いた。
「やっと捕まえた」
「え?」
「今日ずっと誰かといた」
少し拗ねた声。
透真はきょとんとして。
それから笑った。
「文化祭だからね」
「……まあ、
楽しそうならいいけど」
本当は。
少しだけ。
自分とももっと回ってほしかった。
でも。
透真が笑ってるなら、
それでいいと思ってしまう。
☆
夕焼けが、
校舎を赤く染める。
文化祭二日目。
楽しくて。
騒がしくて。
でも。
その中心には、
いつも透真がいた。
読んでいただきありがとうございます!
ー
和希先輩のエプロン姿、昴先輩の半被姿がとんでもなく似合う気がするんだ!!
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