【第4章】第7話 「放っておけない」
―第7話「放っておけない」
和希は昔から、
面倒を見るのが嫌いじゃなかった。
困ってる人がいたら声を掛けるし、
放っておけない。
薫にもよく
「保護者みたい」
と言われる。
自覚は少しあった。
☆
透真と初めてちゃんと話したのは、
春の放課後だった。
屋上。
風が強い日。
一年生を部活に勧誘しないとな、と
思いながらも屋上でのんびり過ごしていたときだった。
そこへ誰かが入ってくる。
「……あれ?」
一年。
しかも見慣れない顔。
和希が近付く。
その瞬間。
透真が空を見上げた。
夕焼け。
風で揺れる黒髪。
光が横顔を照らしている。
綺麗だと思った。
びっくりするくらい自然に。
☆
「何してるの?」
声を掛ける。
透真が少し驚いて振り返った。
「あ……すみません」
「怒ってない怒ってない」
和希が笑う。
すると透真は少し安心したように、
また空を見る。
「今日、
雲綺麗だなって」
その言い方が、
なんだか子どもみたいだった。
和希は隣へ並ぶ。
「空好き?」
「好きです」
即答。
しかも。
「星とか、
宇宙とかすごい好きで――」
そこから早かった。
透真、
急にめちゃくちゃ喋る。
星座。
惑星。
流星群。
話しながら目がどんどん輝いていく。
和希は少し目を丸くした。
こんなに楽しそうに
“好き”を話す人、
久しぶりに見た。
☆
「天文部来る?」
気付けば、
自然に誘っていた。
透真がぱっと顔を上げる。
「天文部あるんですか!?」
「あるよ〜」
「望遠鏡とかあります?」
「ある」
その瞬間の顔。
ほんとに嬉しそうだった。
和希は思わず笑う。
「そんな好きなんだ」
「好きです!」
また即答。
分かりやすい。
☆
それから。
透真は毎日のように部室へ来た。
星の話をしてる時は、
ずっと楽しそう。
昴の説明を聞いてる時なんて、
目がキラキラしている。
その顔を見るのが、
和希は結構好きだった。
☆
でも。
透真はそれ以外になると、
途端に危なっかしい。
プリント忘れる。
コード踏みそうになる。
荷物落とす。
飲み物飲み忘れる。
ほんとに目が離せない。
☆
「透真くん、
髪濡れてる」
雨の日。
部室。
透真は窓際で星図を見ていた。
和希は呆れながらタオルを投げる。
「風邪ひくよ〜」
「わ」
透真が慌てて受け取る。
「ありがとうございます……」
「ちゃんと拭きなさい」
完全に保護者だった。
薫が後ろで笑ってる。
「和希先輩、
マジで親」
「うるさい」
でも。
世話を焼きたくなるのは本当だった。
☆
ある日。
観測準備中。
透真が脚立に乗って機材を取ろうとしていた。
危ない。
しかもかなりギリギリ。
「透真くん!」
和希は反射的に近付く。
その直後。
ぐら。
脚立が揺れた。
「わっ」
透真の身体が傾く。
和希はすぐ腕を掴んだ。
「落ちるって!」
「ご、ごめんなさい……」
透真がしゅんとする。
和希は思わずため息を吐いた。
「怪我したらどうすんの」
「気をつけます……」
反省してる顔。
でもたぶんまたやる。
☆
「和希先輩って、
優しいですよね」
帰り道。
透真が隣を歩きながら言う。
「ん?」
「いつも助けてくれるから」
嬉しそうに笑う。
その顔。
ほんとずるい。
和希は少しだけ目を細めた。
「透真くんが危なっかしいからでしょ」
「そんなに?」
「かなり」
透真は少し考えてから、
困ったように笑った。
「じゃあ、
また助けてください」
無防備。
しかも自然。
和希は思わず顔を覆いたくなった。
☆
たぶん最初は、
ただ気になる後輩だった。
綺麗な横顔が印象に残って。
星の話をする顔が可愛くて。
放っておけなくて。
でも。
今はもう違う。
透真が笑うと嬉しい。
困ってると気になる。
誰かと仲良くしてると、
少しだけ落ち着かない。
「和希先輩?」
透真がまた覗き込む。
近い。
和希は苦笑した。
「ほんと、
無防備すぎるんだよなあ」
「?」
分かってない。
その無意識に振り回されてる人、
かなりいるのに。
読んでいただきありがとうございます!
ー
和希先輩の話。
ちなみに和希先輩は本人自覚ないけどめっちゃモテます(笑)
ー
毎日21時に投稿予定です५✍⋆*
続きが気になったら評価やブックマークをお願いします
⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/




