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【第4章】第6話 「先輩って、ずるい」

―第6話「先輩って、ずるい」



昴は昔から、

星が好きだった。


小学生の頃から図鑑を読んで。


中学では望遠鏡を触って。


気付けば、

空を見ることが当たり前になっていた。


だから天文部でも、

知識量は自然と増えた。


機材にも詳しくなった。


観測方法も。


星図も。


宇宙の話も。


でも。


同じ熱量で話せる相手は、

ほとんどいなかった。



「昴、

それ好きだよね」


和希が笑う。


放課後の部室。


昴は望遠鏡を調整しながら、

小さく肩をすくめた。


「好きじゃなきゃやらないだろ」


「はいはい」


いつもの会話。


穏やかな空気。


その時。


ガラ、と扉が開く。


「失礼します……!」


昴が顔を上げる。


そこにいたのは、

星宮透真だった。



「わ……」


透真は部室へ入った瞬間、

目を輝かせた。


望遠鏡。


星図。


本棚。


全部を見て、

嬉しそうにしている。


分かりやすい。


和希が笑った。


「透真くん、

星好きなんだよね〜」


「はい!」


即答。


そのあと。


透真は昴の近くへ来た。


「これって、

実際に使ってるやつですか?」


望遠鏡を見ながら聞く。


目がキラキラしている。


昴は少しだけ目を丸くした。


「……そう」


「すごい」


心から感動してる顔だった。



それから。


透真は毎日のように部室へ来た。


昴の話も、

本当に楽しそうに聞く。


「へえ……!」


「知らなかったです」


「それって実際見るとどんな感じなんですか?」


ちゃんと興味を持ってくれる。


しかも。


理解が早い。


「……詳しいんだな」


昴が言うと、

透真は少し照れたように笑った。


「好きだから」


その答えが、

妙に嬉しかった。



ある日の放課後。


観測準備。


昴は機材を調整していた。


透真は隣で、

星図を広げている。


「昴先輩」


名前を呼ばれる。


自然な声。


でも。


その呼び方だけで、

少し心臓が跳ねる。


「ここ、

この位置で合ってますか?」


透真が覗き込む。


近い。


しかも。


少し上目遣い。


「……先輩?」


その瞬間。


昴は固まった。



無防備だった。


本人は何も分かっていない。


ただ聞いているだけ。


でも。


その目。


その距離。


その声。


全部、

破壊力がおかしい。


昴は視線を逸らした。


「……合ってる」


「ほんとですか!」


透真が嬉しそうに笑う。


心臓に悪い。



「昴先輩って、

ほんとすごいですよね」


帰り際。


透真が言う。


「機材のことも詳しいし、

星の話してる時すごく楽しそう」


夕焼けの光が、

透真の横顔を照らしていた。


綺麗だった。


昴は少しだけ黙る。


今まで。


星の話をしても、

ここまで真っ直ぐ受け取ってくれる相手はいなかった。


透真は違う。


ちゃんと楽しそうに聞く。


夢中で話す。


しかも。


その顔を見ていると、

もっと話したくなる。



「先輩?」


また覗き込まれる。


近い。


近すぎる。


昴は小さく息を吐いた。


「……お前、

距離近いな」


「え?」


「無防備すぎる」


透真はきょとんとしている。


分かってない。


ほんとに。



たぶん。


おかしくなったのは、

あの瞬間からだ。


上目遣いで、

“先輩?”って呼ばれた時。


あんな顔で頼られて。


嬉しそうに笑われて。


平気でいられるわけがない。


昴は窓の外を見る。


夕焼けの空。


その隣で、

透真がまた星の話をしている。


楽しそうに。


眩しいくらい真っ直ぐに。


昴は静かに思った。


……たぶんもう、

かなり手遅れだ。



挿絵(By みてみん)

読んでいただきありがとうございます!

昴先輩の話。

透真の上目遣い「…先輩?」は破壊力があります。

毎日21時に投稿予定です५✍⋆*

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⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/

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