【第4章】第2話 「気づけば目で追ってた」
―第2話「気づけば目で追ってた」
薫は、
高校生活にそこまで期待していなかった。
騒ぐのは面倒。
群れるのも疲れる。
だから教室でも、
基本ひとりでいることが多い。
そんな中で。
同じクラスにいた星宮透真は、
少し変なやつだった。
☆
四月。
昼休み。
透真は窓際の席で、
空を見ていた。
ぼんやり。
でも退屈そうじゃない。
むしろ、
楽しそうだった。
薫は頬杖をついたまま、
なんとなくその横顔を見る。
その時。
「今日雲少ない……」
透真が小さく呟いた。
……何見てんだあいつ。
それが最初の印象だった。
☆
数日後。
放課後。
薫はいつものように天文部へ向かう。
元々、
小学校から仲の良かった
和希先輩がいるから入った部活だった。
静かだし、
居心地がいい。
そこへ。
「失礼します……!」
聞き覚えのある声。
振り返る。
透真だった。
しかも。
「わ……すご」
望遠鏡見ただけで目が輝いてる。
分かりやすい。
和希先輩が笑った。
「透真くん、
星好きなんだよね〜」
「はい!」
返事がでかい。
しかも嬉しそう。
その後ろで、
昴先輩が星図を広げる。
透真はすぐ隣へ行った。
「これって今見えるやつですか!?」
完全に夢中だった。
薫は少しだけ目を丸くする。
ここまで全力で“好き”出せるやつ、
初めて見た。
☆
その日から。
透真は放課後になると、
ほぼ毎日部室へ来た。
窓際で星の本読む。
昴先輩に質問する。
和希先輩に世話焼かれる。
そして。
よく薫にも話しかけてくる。
「薫って星詳しいよね」
「普通」
「普通じゃないよ」
透真は真顔だった。
「この前教えてくれたやつ、
すごい分かりやすかった」
真正面から言う。
お世辞じゃない。
本気でそう思ってる顔。
薫は少し黙る。
「……別に」
「あと優しい」
「は?」
意味が分からない。
透真は首を傾げた。
「だって機材運ぶ時、
さりげなく持ってくれた」
覚えてない。
たぶん無意識。
でも透真は嬉しそうに笑った。
「ありがと」
その笑顔に、
妙に調子が狂う。
☆
教室でもそうだった。
授業中。
透真は窓の外を見ていることが多い。
しかも結構堂々と。
「星宮」
先生に名前を呼ばれる。
透真がハッとして前を見る。
「聞いてたか?」
「……ちょっとだけ」
クラスが笑う。
薫も思わず吹き出しそうになった。
すると透真が、
後ろを振り返る。
目が合った。
透真、
少し照れたように笑う。
その瞬間。
なぜか胸がざわついた。
☆
気付けば。
薫は透真を見ていた。
教室でも。
廊下でも。
部室でも。
笑ってる時。
星の話してる時。
先輩に「透真」って呼ばれて振り向く時。
全部、
自然に目に入る。
☆
ある日の放課後。
部室には二人しかいなかった。
薫は参考書を読んでいて、
透真は星図を見ている。
静かな空気。
突然。
「薫」
名前を呼ばれる。
「……何」
「これ見て」
透真が隣へ来る。
近い。
ノートを覗き込むみたいな距離。
「この星、
今日見えるかな」
目がキラキラしてる。
ほんと、
好きなんだなと思う。
薫は少し視線を逸らした。
「……晴れてれば」
「そっか」
透真は嬉しそうに笑う。
その顔。
真正面から向けられると、
心臓に悪い。
☆
――気づけば目で追ってた。
最初は興味なんかなかった。
ただ同じクラスで。
たまたま同じ部活で。
それだけだったはずなのに。
透真はずるい。
真っ直ぐで。
無防備で。
しかも、
嬉しそうに笑う。
「薫?」
また顔を覗き込まれる。
近い。
薫は耐えきれず、
透真の額を軽く押した。
「近い」
「え?」
「……なんでもない」
透真は不思議そうな顔をする。
分かってない。
こっちはもう、
かなり振り回されてるのに。
読んでいただきありがとうございます!
ー
同じクラスの薫の話。
ストレートに褒められる方が薫の印象に残りそう。
ー
毎日12時か21時に投稿予定です५✍⋆*
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