【第4章】「星に惹かれる」 第1話 「ずっと知ってる」
第4章の始まりです。
この章では各メンバー視点の話になります。
―第1話「ずっと知ってる」
小学生の頃。
夏の夜。
「裕翔、見て!」
住宅街の公園。
まだ幼かった透真が、
夜空を指差していた。
黒髪が風で揺れる。
目は驚くくらい輝いていた。
裕翔は隣でジュースを飲みながら、
ぼんやり空を見る。
「どこ?」
「あそこ!
今光った!」
「え、分かんね」
「もう一回流れるかも!」
透真は本気だった。
小さい頃からそうだ。
好きなものの話になると、
周りが見えなくなる。
夢中になる。
でも。
その顔を見るのが、
裕翔は結構好きだった。
☆
「星ってさ、
落ちてこないのかな」
帰り道。
透真が空を見上げながら呟く。
「落ちてきたら危なくね?」
「でも近くで見たい」
「透真、
絶対触ろうとするじゃん」
「したい」
真顔だった。
裕翔は吹き出す。
「バカだろ」
でも透真は楽しそうに笑う。
その笑顔を見ていると、
なんとなく安心した。
☆
中学で、
透真が引っ越した。
親の仕事の都合だった。
「また会えるよ」
透真は笑っていた。
でも裕翔は、
少しだけ寂しかった。
部活帰り。
空を見る癖だけ残った。
透真がいなくなってから、
なんとなく夜空を見ることが増えた。
星を見るたび、
思い出す。
楽しそうに笑う顔。
夢中で話す声。
「……何やってんだろ」
自分で呟いて、
苦笑した。
☆
高校。
再会した透真は、
少しだけ変わっていた。
背が伸びて。
顔立ちも綺麗になって。
でも。
星を見る時の顔だけ、
何も変わってなかった。
「裕翔!」
嬉しそうに名前を呼ぶ。
その瞬間。
なんかもう、
ダメだった。
☆
「なあ裕翔、
これ見て」
放課後。
天文部帰り。
透真がスマホを見せてくる。
星雲の写真。
「これ、
昨日撮れたやつ!」
目がキラキラしてる。
昔と同じだ。
裕翔は少し笑う。
「ほんと好きだな」
「好き」
即答。
そういうところだよ、
と思う。
真っ直ぐで。
無防備で。
隣にいると、
放っておけない。
☆
「透真」
「ん?」
帰り道。
夕焼けの空。
透真はまた空を見ながら歩いている。
危ない。
裕翔は自然に腕を掴んだ。
「前見ろ」
「あ、ごめん」
そのまま、
少しだけ距離が近くなる。
でも透真は全然気にしていない。
昔からそうだ。
裕翔には普通に触れる。
普通に隣に来る。
普通に笑う。
その全部が、
自分だけのものだと思っていた。
――思っていたのに。
最近、
違う。
部室で。
透真はみんなに笑う。
薫にも。
伊織にも。
先輩たちにも。
夕花にも紬にも。
誰にでも、
あの顔をする。
それが妙に落ち着かなかった。
☆
「……裕翔?」
透真が不思議そうに覗き込む。
近い。
夕焼けが瞳に映っている。
昔から知ってる顔。
ずっと見てきた顔。
でも最近、
たまに心臓が変になる。
「どうしたの?」
「……なんでもない」
裕翔は目を逸らした。
透真は首を傾げる。
分かってない。
全然。
裕翔は小さく息を吐いた。
昔から知ってる。
夢中になると周りが見えないところも。
星を見ると嬉しそうに笑うところも。
危なっかしくて、
放っておけないところも。
ずっと知ってる。
知ってるはずなのに。
最近の透真は、
知らないくらい眩しい。
読んでいただきありがとうございます!
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第1話は幼馴染である裕翔視点の話。
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毎日12時か21時に投稿予定です५✍⋆*
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