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【第3章】第3話 「夜更かしと本音」

―第3話 「夜更かしと本音」



観測を終えて宿へ戻る頃には、

空はすっかり深い夜色になっていた。


山の夜は静かだ。


虫の声。


遠くの風。


少し冷たい空気。


「いや〜……

今日めちゃくちゃ見えたね!」


夕花が興奮したまま言う。


「流れ星三回見た!」


「夕花ちゃん、

ずっとテンション高いね〜」


和希先輩が笑った。


その横で、

透真はまだ空を見上げている。


「……すごかった」


ぽつり。


「空、

ほんと近かった」


その声が、

あまりにも嬉しそうで。


神代先生は少し後ろを歩きながら、

静かに目を細めた。


……本当に星が好きなんだな。



消灯後。


男子部屋。


布団が並ぶ静かな空間。


「……寝れない」


透真が小さく呟く。


「子どもか」


薫が即座に返した。


「だって今日すごかった」


「それ五回くらい聞いた」


「もっと言える」


「やめろ」


そのやり取りに、

裕翔が吹き出す。


「薫、

なんだかんだ全部返事するよな」


「うるさい」


伊織は静かにその空気を聞いていた。


部屋の雰囲気は心地いい。


でも。


透真は少しだけ身体を起こした。


「……ちょっと水飲んでくる」


「んー」


裕翔が眠そうに返事する。


透真は静かに襖を開けた。



夜の廊下は薄暗かった。


窓の外には、

山の夜空。


静かな藍色。


透真は自販機で水を買って、

そのまま窓際へ向かう。


「……まだ起きてたのか」


低い声。


振り返ると、

神代先生が立っていた。


片手には缶コーヒー。


どうやら見回り中らしい。


「あ、先生」


「眠れないか?」


「ちょっとだけ」


透真は窓の外を見る。


「今日の星、

綺麗すぎて」


神代先生はその横顔を静かに見た。


嬉しそうで。


満たされた顔。


昔の自分も、

こんな顔をしていただろうかと思う。


その時。


廊下の向こうから、

もう一人足音が近づいた。


「透真?」


伊織だった。


透真が少し笑う。


「伊織くんも眠れないの?」


「……うーん、少しだけね。」


伊織は透真の隣へ来る。


神代先生は二人を見て、

小さく息を吐いた。


「俺は見回り戻るから、

長居するなよ」


「はーい」


透真の返事は軽い。


神代先生はそのまま歩き出した。


でも曲がり角を曲がる前、

少しだけ後ろを見る。


並んで夜空を見る二人。


静かな空気。


……伊織、

あれはだいぶきてるな。


先生だからこそ、

分かることもある。


神代先生は苦笑して、

そのまま廊下を去った。



窓際。


伊織が静かに言う。


「透真って、

夜似合う」


透真が少し驚いた顔をする。


「そう?」


「うん」


短い返事。


でも優しい。


透真は少し笑った。


「伊織くんも、

静かな夜似合うよね」


伊織は一瞬だけ目を瞬く。


そのまま、

透真を見る。


窓から入る月明かり。


柔らかい黒髪。


眠たそうな目。


でも星を見る時だけ、

そこに光が宿る。


伊織は静かに言った。


「……透真も」


透真は少し照れたように笑った。


その笑顔を見て、

伊織はふっと目を細める。


静かな時間だった。


たくさん話すわけじゃない。


なのに居心地が良い。


透真は窓の外を見ながら呟く。


「こういう夜、

ずっと覚えてたいな」


伊織は答えない。


でも胸の奥では、

同じことを思っていた。



部屋へ戻る。


襖を開けた瞬間。


「……どこ行ってた?」


裕翔の声。


まだ起きていたらしい。


透真は少し目を丸くする。


「水飲みに」


「長くない?」


「伊織くんと話してた」


その瞬間。


空気が少し止まった。


裕翔は「ふーん」と返した。


それだけ。


それだけなのに。


なんとなく声が低い。


透真は気付いていない。


その横で、

薫が静かに眉を寄せていた。


……なんでそんな気になるんだよ。


伊織と話してただけだろ。


別に普通。


普通なのに。


胸の奥が妙にざわつく。


透真はそんな空気も知らず、

自分の布団へ戻った。


「明日も晴れるかな」


嬉しそうな声。


誰もすぐには返事をしなかった。


ただ静かな夜だけが、

部屋の中に広がっていた。



読んでいただきありがとうございます!

伊織くんとの会話は静かな空間が似合うと思って作ったお話です。

裕翔と薫がちょっとだけ嫉妬します(笑)

毎日12時か21時に投稿予定です५✍⋆*

続きが気になったら評価やブックマークをお願いします


⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/

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