【第2章】第6話 この場所の星
放課後のチャイムが鳴る。
その音を聞きながら、透真は窓の外を見上げた。
今日は晴れている。
薄青い空の向こうに、夜の気配が少しだけ混ざり始めていた。
「透真、部室行く?」
裕翔が鞄を肩にかけながら聞く。
「行く」
「即答」
「今日空綺麗だから」
「はいはい」
もう見慣れた返事だった。
二人で廊下を歩いていく。
途中で夕花と紬に会って、そのまま自然に一緒になる。
「今日観測できそうだねえ」
紬が柔らかく笑う。
「できると思う」
透真の声は少し弾んでいた。
その反応に、夕花が笑う。
「ほんとわかりやすい」
「最近みんなそれ言う」
「だってわかりやすいもん」
そんな会話をしながら部室へ向かう。
扉を開けると、すでに和希がいた。
「お、来た来た」
「こんにちは」
「透真、今日は元気だね」
「空綺麗なので」
「理由がずっと星なんだよなあ」
和希が笑う。
窓際には昴がいて、静かに資料を読んでいた。
その近くでは伊織が本を開いている。
薫は椅子に座ったままスマホをいじっていた。
いつもの光景だった。
でも。
少し前までは、“自分の居場所”なんて考えたこともなかった透真にとって。
この空気は、ちゃんと特別になり始めていた。
「今日、木星見えるかな」
透真が窓の外を見ながら呟く。
「時間的にいけそう」
昴が答える。
「あと春の大三角も綺麗だと思うよ〜」
和希が続ける。
その会話に、透真の目がまた少し輝いた。
「じゃあ望遠鏡調整した方がいいですね」
「透真、ほんと楽しそう」
夕花が笑う。
透真は少しだけ照れた。
でも嫌じゃなかった。
こうやって話す時間が、最近少し好きだと思う。
放課後になれば自然とここへ来て。
みんながいて。
星の話をして。
気づけば笑っている。
不思議だった。
入学した頃は、学校なんて“通う場所”くらいにしか思っていなかったのに。
今は少し違う。
「……学校、前より好きかも」
ぽつりと零れた言葉。
その瞬間、部室が少し静かになった。
「え?」
和希が聞き返す。
透真は自分で言った後に少し恥ずかしくなった。
「いや、その……天文部あるし」
「……」
「みんなといるの、楽しいから」
その言葉に。
誰もすぐには返事をしなかった。
裕翔は少し目を細める。
夕花は嬉しそうに笑って。
紬は静かに透真を見ていた。
伊織は本を閉じる。
薫は何も言わないまま視線を逸らした。
そして昴は、小さく口元を緩めた。
放課後。
みんなで屋上へ向かう。
空はゆっくり夜へ変わっていた。
フェンス越しに広がる星空。
春の夜風。
透真は望遠鏡を覗いたあと、ふわりと笑った。
「……綺麗」
その笑顔は、あまりにも無防備だった。
嬉しそうで。
楽しそうで。
心からこの時間を好きだと思っている顔だった。
だから。
その場にいた全員が、一瞬だけ言葉を失う。
夜風が静かに吹き抜ける。
誰も何も言わなかった。
ただ同じように思っていた。
──ずるい。
そんな顔、見せられたら。
もっと、特別にしたくなる。
読んでいただきありがとうございます!
ー
望遠鏡で大好きな星空をみて微笑む透真
周りのみんなが見惚れる
そんなイメージで作りました。
ー
毎日12時か21時に投稿予定です५✍⋆*
続きが気になったら評価やブックマークをお願いします
⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/




