表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/67

【第2章】第4話 守りたい人

―第4話 守りたい人



 体育終わりの教室は騒がしかった。


 男子たちは汗を拭きながら話していて、窓も全開になっている。


 透真は自分の席で、少しぐったりしていた。


「……疲れた」


「体力なさすぎじゃない?」


 前の席の夕花が呆れたように振り返る。


 ポニーテールを揺らしながら笑う姿は、今日もどこか爽やかだった。


「長距離嫌い……」


「顔死んでるよ」


「生きてる」


 そんな会話をしていると、教室の後ろから男子たちの声が聞こえてきた。


「透真ってさ、運動ほんと苦手だよな」


「なんか守ってあげたくなる系?」


「わかる。女子っぽいっていうか」


 悪意の強い言い方ではなかった。


 ただの軽口。


 でも透真は少しだけ困ったように笑う。


「……まあ、運動は苦手」


「否定しないんだ」


「事実だし」


 その時。


「透真は別にそれでいいじゃん」


 夕花がぴしゃりと言った。


 教室の空気が少し止まる。


 夕花は椅子に座ったまま、真っ直ぐ男子たちを見た。


「得意不得意あるでしょ」


「いや、別に悪く言ったわけじゃ──」


「わかってる。でも透真困ってるじゃん」


 さらっと言う。


 透真は目を瞬かせた。


「夕花……」


「大体、透真運動苦手でも星のことめちゃ詳しいし」


「それ関係ある?」


「ある」


 夕花はなぜか自信満々だった。


 男子たちは苦笑しながら「はいはい」と話題を変えていく。


 空気が戻った頃。


 透真は少しだけ夕花を見た。


「……ありがとう」


「別に」


 夕花は照れ隠しみたいに前を向く。


 でも耳が少し赤かった。


 その様子を、教室の端で紬が静かに見ていた。


 放課後。


 透真は部室へ向かう前に、自販機の前で立ち止まった。


「スポドリ飲む?」


 隣から柔らかい声。


 紬だった。


 ふわふわした三つ編みを揺らしながら、透真を見上げている。


「あ……うん」


「はい」


 紬は自然にスポーツドリンクを一本差し出した。


「え、いいの?」


「今日疲れてそうだったから」


「……ありがとう」


 透真が受け取ると、紬はふわっと笑った。


 静かな子だ。


 でも気づくといつも近くにいる。


「透真くん、ちゃんと水分取らなそうだし」


「そんなことない」


「あるよお」


 柔らかい口調なのに、妙に見抜かれている。


 透真は少しだけ困った顔をした。


 その時。


「透真ー!」


 遠くから夕花の声が飛んできた。


 ジャージ姿のまま走ってくる。


「今日部活ないから一緒に途中まで帰ろ!」


「え、うん」


 夕花は透真の隣へ並ぶ。


 健康的な汗の匂いと、明るい空気。


 透真はふと気になって聞いた。


「夕花って、格闘技いつからやってるの?」


「小学生から!」


「すご……」


 透真の目が一気に輝く。


「だから動き綺麗なんだ」


「え?」


「体育の時も重心全然ブレてなかったし、フォームもすごかった」


「……」


「あと反応速い。たぶんかなり強いよね?」


 完全に“好きなものを見る目”だった。


 キラキラしている。


 夕花は一瞬固まる。


「……そ、そう?」


「うん。かっこいいと思う」


 真っ直ぐ。


 嘘がない。


 夕花の顔が一気に熱くなる。


「っ……」


「夕花?」


「な、なんでもない!!」


 勢いよく顔を逸らした。


 透真は本気でわかっていない。


 一方、少し後ろを歩いていた紬は、その様子を静かに見ていた。


「……夕花ちゃん、わかりやすい」


 小さく呟く。


 でも。


 紬自身も気づいていた。


 透真が誰かに笑いかけるたび。


 少しだけ、胸がざわつくことに。




読んでいただきありがとうございます!

女の子組です。

夕花と紬は同じ中学出身です。

毎日12時か21時に投稿予定です५✍⋆*

続きが気になったら評価やブックマークをお願いします


⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ