1-14:師匠の師匠であること
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「ヴァーレクスさん、ついに働くんだ! 無職を脱するんだね! おめでとう!」
感動した声色でモニカが叫び、エレナが胸を撫で下ろし、アーシェティアが深く頷いた。シュレーンまで小さく拍手していて、クローネはその横でにっこりと笑っていた。いったい、師匠は何をしでかしていたのだろう。恐る恐る尋ねれば、まあ、予想はしていたが酷い話であった。
ツカサが学園で忙しく、そして大変な思いをしている間、家に来てコーヒーをもらっていたのは本人から聞いたが、その滞在の仕方が【お貴族様】だった。
ソファに座ったら動かない。食事を当然のように食べ、暇だから読み物を出せ、というのでエレナが適当に本を与え、コーヒーをモニカに淹れさせ、時折アーシェティアを遊び相手に裏庭で剣戟を交わす悠々自適ぶりだった。
アーシェティアも、鍛錬自体は勉強になったものの、こちらの家事都合を無視して言ってくるので付き合ったのは三回程度、あとは全て断ったらしい。自身の実力を伸ばすために鍛錬を怠らないアーシェティアが断るのだから、よほどタイミングが悪かったのだろう。
ちょうどお手伝いさんもいない頃、エレナとモニカの妊娠もわかり、家の中がばたついていた。エレナの眠りつわりも酷く、家の中のことをモニカとアーシェティアでやり繰りするしかなくなった。それでもヴァーレクスは気にもせず「来たぞ、コーヒー」という感じだったらしい。ツカサは頭を抱えた。アーシェティアから追撃があった。
「だから、モニカがついに言ったんだ」
「なんて言ったの?」
「ヴァーレクスさん、お仕事しましょう、働きましょう。正直すごく邪魔です、って」
モニカははっきりと言ったそれを繰り返してツカサに聞かせた。
そこから出るわ出るわヴァーレクスへの文句のオンパレード。ツカサはその内容を聞いて、それは言われても仕方ないと思った。
食費も入れず、スカイでは高いコーヒー豆代も支払わず、モニカが好きで、自分の稼ぎで買って飲んでいた高価なものを、買った本人が飲めないのにぐびぐびと飲んでいく。それは腹も立つというものだ。食後の後片付けも手伝わず、帰る時の挨拶もせずにぬるりといなくなる。聞いているだけでツカサにもストレスが感じられた。実際にそれを体験した女性陣の苛立ちは想像に易い。妊婦になんてことをするのか。
「ツカサのお師匠さんだっていうから暫く我慢してたんだけど、無理だった」
「本当にごめんなさい。もう家に入れなくていいです」
ツカサがヴァーレクスの代わりに謝れば、女性陣は苦笑を浮かべていた。ちなみに、シュレーンやクローネがお手伝いさんとして参加してからも何度か来ていたらしく、ツカサのダンジョン研修中がそれに該当するらしい。あの男、エレナやモニカに会うなと言われていたにも関わらず、随分と居座ってくれたようだ。正直、こうなってくるとツカサに会うなと言ったのも遠回しにここに来るな、と言いたかったのではないかとすら思える。きっとそうなのだ。
「だから、ツカサがお休みの間そばに居られないことはちょっと寂しいけど、ヴァーレクスさんがお仕事できるようにするためなら、喜んで、いってらっしゃい!」
「応援してるわ、本気で頼むわね」
「ツカサ殿、私が言えた話ではないが、きっちりと仕込んでおいてくれ」
「おうちのことはわたくしどもにお任せください」
「お任せくださぁい」
アーシェティアも来る気はなさそうだ。こんなにもアルブランドー邸の人々から嫌がられて、名付け親になりたいと言われているなど伝えられそうにもない。それはもっと未来の話だから置いておこうとツカサは一旦放り投げた。
やはり、どういう態度で接するかというのは非常に大事だ。ツカサもヴァーレクスを甘やかしすぎたところはあるのでおおいに反省するところではあるが、これを反面教師とすべきであろう。
見本とすべきはやはりラングだ。自分のことは自分でやり、ついででもなんでも、家のことを、誰かの助けになることを嫌がらずにやっていた。料理は趣味としても、後片付けも皿洗いも、洗濯物を干したり畳んだりもそう。ルフレンの排泄物の世話だって、トイレ掃除だってやってくれる人だった。アルブランドー邸でトイレ掃除をしているラングを見た時、ツカサだけでなくモニカも悲鳴をあげてしまい、それからなんとなく気まずくなってラングはやっていいことをモニカに尋ねたりなんかもしていた。
そういう人だから頼られていたし、やるからいいよ、ゆっくりしてて、なんて言われたりもしていた。真似をするなら当然こちらだろう。
アルは家事をエフェールム邸の人々がやってくれていたので苦手だが、お礼を言葉にできる人だったので、なんとなく許されていた。感謝を示すことも大事なのだ。
日頃の態度と行動がいかに大切なのか、ツカサはヴァーレクスの事象を通して改めて気をつけようと思った。
ヴァーレクスにしっかりと【常識】というものを教えようと覚悟を決め、二日後、ホムロルルとともに冒険者ギルドへ向かった。
賑やかな冒険者ギルドに足を踏み入れれば、【快晴の蒼】の手筈が進んでいるのか、【異邦の旅人】、灰色の、学園の教師、鷹、という単語がちらほらと聞こえた。ギルドマスターに話も聞きたいが、今日は一先ずヴァーレクスの方だ。ツカサはきょろりとギルド内を見回した。
他の人よりも身長の高い男は遅いと言いたげにこちらを睨んでいた。ぬらりとした長身、背中に背負ったタルワールは業物。案外ヴァーレクスは目立つらしい。ツカサは小走りでそちらへ合流した。ヴァーレクスの首からぬるっと蛇が出てきて、近くの人が悲鳴を上げて逃げていった。なぜかツカサが苦笑を浮かべながら周囲に大丈夫、ペット、とフォローした。ペット、嘘だろ、と蛇が魔獣の分類である人々は恐々、興味津々でこちらを眺めてくるが、もう面倒で気づかないふりをした。
「早いじゃん、ヴァーレクス」
「小僧が遅いのだ。師を待たせるなど首を斬られても仕方がない」
「ヴァーレクスの家の位置と俺の家の位置考えてよ。そしたらちょっと準備しようか」
できているだろうと言いたげに片眉がくいっと上がった。ツカサはわざとらしく溜息をつき、ヴァーレクスの腕を掴んで依頼ボード前に引っ張っていった。説明することは毎度同じ、何を狙うかをここである程度決められるということだ。ヴァーレクスはこうしたボードに興味がなく、初めてそういう意図があることを知ったらしい。さすがに感心して腕を組んでいた。
「今まではどうしてたの?」
「とりあえず入った。前を歩く冒険者が突然消えたこともあり、何かの罠かと思い、出たが」
「あぁ、なるほど、転移だね。そこから話そうか」
そういえば、ヴァーレクスがツカサたちとダンジョンに入る時はいつもイレギュラーだった。
【転移石】【離脱石】【帰還石】という単語を知っているかと問えば、見たことはないと返ってきた。ヴァーレクスだって勘が悪いわけではない。実物は知らなくとも単語から【移動ができるもの】【逃げられるもの】【帰れるもの】だろうという推測は出てきた。これだけダンジョンと密接な世界であっても、知らない人は知らないのだと驚いた。
ヴァーレクスはアズリアでもダンジョンには入っていなかったというので、心底興味がなかったのだろう。ダンジョンに入った最初の一歩もまたラングを追いかけてのことで、二回目もそうだったはずだ。呆れは浮かんだが、しかして、ひとつヒントを得てから【転移石で移動をしたから消えた】のだというところまでは早かった。
それらの石はダンジョンでドロップし、【転移石】はドロップしたダンジョン限定、【離脱石】と【帰還石】は他のダンジョンでも扱えることを話せば、ではまず【転移石】を得るべきだろうというところも理解が早い。
「それで、じゃあどのダンジョンを狙うかってところ。正直、俺なんかはアイテムに困ってないから、食材目当てで行くばっかりなんだよね」
「ドロップ品の調査はまだということだな。金になるものはなんだ」
「一番高いのはアイテムバッグ系、でも、ドロップ確率が低いんだ。だからこそ高価なんだけどさ。そもそも、冒険者が手に入れて手放すことがほとんどないんだよ。ヴァーレクスだって時間停止機能付きだったら、ご飯楽でしょ? というわけで、それ以外だと飲食店とか、仲卸が出してる食材系。それを狙って、ついでにマジックアイテム系がドロップすればラッキーかな」
ツカサが腰の水のショートソードを見せ、こういうの、と示した。
「俺、それなりの数を見てるんだけど、武器類が出るのも結構レアらしいんだよね。それに、みんな短剣以外はそんなに手放さないから市場に出回ってないみたい。短剣、使い勝手いいんだけどなぁ。まぁ、俺も水のショートソードを腰に置いてる時点でわかるはわかる」
ツカサはそこそこ金に換えてきたので忘れていたが、武器防具屋でもドロップ品はかなり値段が高い。そこにも数が少ないから高いという理由があるのだ。ヴァーレクスは髭の剃られている顎を撫でた。
「恒常的に価格が変動しにくいものを狙い、レアものを運に任せる、か。依頼というのが多いのは肉のようだな」
「そうだね。イーグリスはご飯の種類というか、【渡り人】の故郷の料理が多いから、こだわりが強くて、これを使いたいって指定が多いんだよね。あ、でも、だからって道中根こそぎ狩っちゃだめなんだよ」
なぜだ、と視線で問われ、ツカサは周囲で聞き耳を立てている冒険者にも聞こえるように言った。
「間引きパーティっていうのがいるんだ。担当の階層を持ってて、冒険者が少なくなった上層とか、中層で魔獣を定期的に狩ってるパーティ。間引きパーティだって魔獣を狩って素材を納品して生活してるからさ、守らないといけない秩序なんだよ。間引きパーティが魔獣を間引くから、上層での魔獣暴走が防げるんだ。魔獣が溢れても魔獣暴走が起きるからね」
へぇ、とか、おぉ、とか冒険者の声がした。間引きパーティはよく見かけるものの、何をしているのかを気にしたこともなければ自分には関係のない話だ。だから、仕事内容を知らない冒険者も実は多い。こうして話が広がっていけば上層で狩りたい新人も乱獲はしないはずだ。そもそも、新人に対しどうぞと譲る間引きパーティもいるのだからここも共存であり、互いの配慮だ。
上層で狩りを引き受ける冒険者がいるからこそ、下層攻略が進む。下層攻略をする冒険者がいるからこそ、上層でその情報をじっくりと待てる。そんな感じだ。
「イーグリス周辺のダンジョンの場合、攻略本が出るくらい何度も踏破されてるけど、ダンジョンはいきなり、何があるかわからないしね」
たとえ踏破されていたとしても、ツカサが触れてきたダンジョンは生きものなので急に成長したり、進化したりする可能性があってもおかしくはないと考えていた。
そもそも、学園の中にあった転移魔法陣はその予兆ではないだろうか。魔法の師匠であり世界を見守る者であるシェイが酔いの席でアッシュに語った、【転移魔法陣はダンジョンが抱えきれない魔獣を、溢れた場所から移動させるためにダンジョンが生み出す別の出口、緊急排出口である】という話をツカサは忘れていなかった。その出口を封じたのはツカサとアッシュなのだ。その転移魔法陣の先へ行き、違法行為ながら間引きを行っていた学園のキッチン担当も今はいない。あの転移魔法陣の件がいずれどこかで何かを起こす予感がしていた。
「それで、どこがいいんだ」
ヴァーレクスの問いかけで思考から戻り、ツカサは腕を組んだ。
「ううん、ヴァーレクス、ご飯っていつも何食べてるの?」
「どういう意味だ」
「いや、売る分もそうなんだけど、食材があれば料理……しないんだっけ」
ふん、と馬鹿にするような鼻息が零された。こいつ、キスクの世界でもよく生きてこられたな。
「じゃあ、食材を手に入れても意味がないってことで、ほとんど全て売るとしたら、オススメは【紫壁のダンジョン】かなぁ。俺も実は行ったことがないんだけど、ここってエネルギー、魔力石の入れものが落ちるんだよ。魔力石って知ってる?」
「スカイにおいて、風呂の湯を沸かしたり、コンロを使う際に必要なものだろう」
「そう、で、その魔力石のもとになる石が落ちるんだよ」
ほぅ、とヴァーレクスがこれには少し興味を持ってくれたので、先生は嬉しそうに話した。
そもそも、魔石とは何か。これはダンジョン内で魔獣を倒せばほぼ全て、必ずといっていいほどドロップするものだ。その魔石も品質はピンキリ、クズ魔石と呼ばれるものから高品質なものまで幅が広い。ツカサはクズ魔石と最上級品の魔石を手に出し、ヴァーレクスにその差を見せた。冒険者たちが最上級品を覗き込んでいたのでそちらにも見せた。
「クズ魔石の多くは焚火の火種だったり、数を冒険者ギルドに卸して、冬場、暖炉を温めたりしてるって聞いた。魔石は使うと消えるんだけど、それは知ってる?」
「知っている」
ツカサは頷いた。では、魔力石とは何か。ツカサは冒険者ギルドのカウンターへ頼み、灰色の石を持ってきてヴァーレクスへ見せた。
「魔力石は使った後、空っぽになった灰色の石が残るんだ。これは空っぽの魔力石、ここに魔力を入れることで再利用できるってわけ」
「……魔力石とやらはスカイの技術で魔導士が生み出す魔石ではないのか」
当初、ツカサもそう考えていた。
スカイに渡ってきてすぐ、ハーベル港に降り立った際、エレナからスカイでは魔導士が魔力石というものを作って、それを使っていたりすると説明を受けていた。そうして戦う以外にも魔力を生かす場所があり、仕事があることにホッとしたものだった。
その時はそれで終わらせてしまったが、後々、学園の教師になる際、冒険者にならなかった魔導士の職業を調べていて詳細を知ることができた。魔力石は特定のダンジョンでドロップし、魔力が収まっていることもあれば、空っぽのままであることもある。そこに魔力を込める魔導士の仕事はとても需要があるのだそうだ。
魔力石に魔力を入れるのにもコツが要り、自分で調整して入れることができる人もいれば、変換器という、ガソリンスタンドの給油機みたいなものを利用する人もいる。それを利用すると魔力石の器が壊れない程度に上手く入るらしい。
そうして魔力の収まったものが魔力石と呼ばれ、スカイでは各家庭のコンロや風呂で大活躍しているのだ。しかし、この話からわかるとおり、魔力は本来、そうした器がなければ留まらないものだ。魔法を使ったあとに残る痕跡だっていずれ薄れ、消えていく。
つまり、魔力を凝縮してそこに残せるシェイは、やはりおかしいのである。
ツカサは改めて気づいた真実から目を逸らすように一度瞬き、魔力石をカウンターに返して戻ってきた。
「……というわけで、使い切って空になった魔力石に魔力を込めることを仕事にしている人もいるんだ。ぎゅっと凝縮するようにするから、コツがいるんだって。魔力石に魔力を送るために道具もあるんだよ」
「使いまわせるのならば値崩れしそうなものだが」
「器が消耗品なんだってさ。何回か使うとひび割れて魔力が入らなくなっちゃうんだ。我が家は毎食料理をするから、何回か俺も、お手伝いさんも魔力を入れてて、でもひび割れてダメになって取り換えたりしてるって言ってた」
ヴァーレクスはほぅ、ともう一度感心したように頷いた。この男、本当に戦うこと以外、ダンジョンに関わることや生活をするための術を知らないのだ。ツカサは教えられることがあることに嬉しくなったが、同時にこの男がどう生きてきたのかが気にもなった。ダンジョンとそれに付随するものごとは、この世界では切っても切れないはずだ。それはまた別の機会に聞くことにした。
「うん、だから、魔力を溜められる石はいい値段で買い取ってもらえる。イーグリスを始め、スカイ王国で魔道具が浸透しているのはそういう魔力石になる石がダンジョンで採れるからなんだ」
これはヴァンが個人授業で教えてくれた歴史が役に立った。そしてイーグリスが守られる理由のひとつでもあるのだ。ヴァーレクスは案外真面目に授業を聞いてくれていた。
「確かに、スヴェトロニアでは魔道具よりもダンジョン品のほうが広く普及している。風呂に湯を張るための魔石湯は魔石を使い切りだが、魔力石があればそうではなくなる、か。興味深い話ですねぇ」
ツカサはむずりとして体を揺らした。ヴァーレクスが素直に感心しているのは面映い。
「ええと、そういうわけで、俺もまだ行ったことがないし、いろいろ勉強ついで稼ぐならオススメは【紫壁のダンジョン】かな」
「ふむ、意図としては理解した。だが、魔力石なるものの価格はボードに記載がないようだ」
「冒険者ギルドでしか売れないからだよ。ドロップしたものを個人的に利用してる魔導士はいるけど、それを許可なく販売した時はちゃんと罰則がある。魔力の込め方を間違えると危ないらしくて。価格は攻略本に記載があるよ」
ツカサは買うだけ買ってまだ読み込んでいない【紫壁のダンジョンの攻略本】を取り出して開いた。ぬぅっと長身の男が身を屈めて手元を覗き込んできて、肩のホムロルルもまたぐぅっと首を伸ばし、蛇まで覗き込んでいる。周囲の冒険者たちが珍獣の集まりに、そっと、一歩距離を取った。
魔力石、ひとつ一万リーディ。銀貨一枚だ。
「安い」
「そうでもないよ? 一回のダンジョン攻略でこれが五十も百もあったら、あっという間に俺に返済できるし、再来年の家賃も払えるよ」
「数が出ればの話だ。実際はどうなのだ」
おっと、意外と現実的だ。ツカサは実際に行ったことがないのでよくわからず、ううん、と唸り周囲を見回した。パチリと目が合った冒険者が一瞬びくりと震えた後、そろりと前に出てきてくれた。
「あー、【紫壁のダンジョン】な、俺らが前にいった感じだと、【転移石】で中層に行って、六日籠って、魔力石は三十個くらいだったかな?」
「そうだな、それで、ついでに短剣のドロップ品もあって、結局あれいくらだったっけ?」
「二十万リーディで売れた。だから稼ぎは六日で五十万。俺らは一回の攻略で十万を必ずパーティ資金、宿代とか飯代に充ててるから、あの時は残りを四人で割ってひとり十万リーディだったかな」
「短剣のドロップは運がよかったよな。それがない計算で考えたらどうだ? いやぁ、まぁ、【灰色の】が居ればもっといけそうだけどな……」
思い出して面白くなったのかパーティ内で盛り上がり始め、さらに周囲の冒険者たちも俺の時は、あたしたちは、と事例を多く出してくれた。結果、中層から下層に行く場合は【転移石】を前提としてだいたい六日から十日で二十から三十個、ついでにドロップ品があればプラスアルファがあるということがわかった。
面白いのはドロップ品がばらついていることだった。基本的に魔力石を目当てに行く人が多いのでドロップ品はオマケ扱いになっていて、その品ぞろえは武器と防具だけではなく、アクセサリーもあるらしい。何か特殊な効果があるものではなく、ただのアクセサリーというのも多いそうだ。
「装飾品は当たりなんだぜ。職人の技が光るのも人気だけどよ、不思議な力でつくられたダンジョン品は歪まないしくすまないんだ」
「だってさ、そういうのドロップしたらいいよね」
「望ましい話ではある」
すっかり依頼ボード前会議になってしまった。ある程度方針が決まり、ヴァーレクスが【紫壁のダンジョン】でいいと頷いた頃、冒険者から問われた。
「そういや【灰色の】、あんた、その男は新しい生徒なのか? それにしちゃ年が行ってるけどよ」
「ううん、この人も俺のパーティメンバー。兄さんがいつの間にか加入させててさ、覚えておいてあげてよ」
「【黒仮面】の紹介か。その割にはダンジョン初心者だなぁ?」
「今まで傭兵みたいなことをして生きてたっぽいんだ。本当に初心者だから、優しくしてあげてね」
肩を竦めて紹介すれば、笑いが起こり、不愉快に思ったらしいヴァーレクスがじろりと睨んできた。その視線を真っ直ぐに見つめ返し、ツカサはにんまりと笑った。
「これで顔を覚えられたからね。【異邦の旅人】として、きちんと秩序とマナーとモラルは守ってよね、ヴァーレクス」
「私がやらかした時、お前が責任を負うことを忘れるな」
頼むからやらかさないでくれと願わずにはいられなかった。
いつも旅路にお付き合いいただきありがとうございます。
説明回。
そういえばですが、エレナの誕生日が、今週末、10/3です。
じわじわと登場人物の誕生日を出していっているきりしま、
アルの誕生日もぽろりしました。8/17です、
今後ともこそこそ出していきますので、引き続きよろしくお願いいたします
<追記>
眠い時に更新をして、「完結」に誤操作でチェックを入れました。
申し訳ございません、まだ長く続く物語です!
引き続き旅路にお付き合いください……!
面白い、続きが読みたい、頑張れ、と思っていただけたら★★★★★やリアクションをいただけると励みになります。




