4-47:降り注ぐいのち
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魔法障壁で防いだはずの剣戟、ギリギリと拮抗しているはずのそれが、じわり、じわりと魔法障壁に斬り込まれていることに気づいて青ざめた。シュンは爆発を利用して距離を取り、空に逃れて冷や汗を拭う。
深緑のマント、黒い仮面、先ほどまで大虎の背に居たのとは違う、圧倒的な存在感と威圧。スッとそれが消えて、視覚的にはそこにいるのに、居ないも同然となったそれには覚えがある。あの黒いダンジョンでまさしくこの首を斬った男だった。爆風をばさりとマントで軽く振り払う余裕を見せてから、握った剣の一本で右肩をトンと叩き、こちらを見上げながらこてりと首が傾げられた。
「どうした、逃げるだけか?」
リガーヴァルの言葉が通じている。さっと視線を巡らせれば、くすんだ緑のマントの黒い仮面がいない。
「どういう、ことだ……!?」
さすがに理解の範疇を超えている。何が起こった。空に逃れ、即座に襲われることはないだろうが、魔法障壁を再度二重、三重に張り直してシュンは転がっている体を数えた。ツカサ、アル、クソ護衛、虎に、その横に鳥、ユキヒョウはキスクを捉えていた魔法障壁に頭突きをかましたり掻いたりして外そうともがいていた。
「キスクを、キスクを返すのであるー!」
何度目かの頭突きでそれが割れ、ああした獣が神獣、魔力の対極にあるものだと理解した。動物愛護精神を持っている場合ではなかったか、とシュンは再び深緑のマントの男へ視線を戻した。あちこちに目をやっている間に男が消えていた。やばい、どこに、と探せばアルを担いでツカサのもとへ運んでいた。殺せない、殺したくないの組み合わせだ。脈を確かめているらしい行動をつい見守ってしまい、深緑のマントの男が悠々と立ち上がるのを待ってしまった。
「随分と神らしくなったものだな。見違えたぞ」
「おかげさまで? ところでお前どこから湧いて出た? まさか成長したわけじゃねぇだろ」
「ふむ、私にも少々、状況が疑問ではあるのだが」
こてりと首を傾げながら顎を撫でる動作が滑らかだった。再び双剣を抜いた深緑のマントの男はもう一度剣で右肩を叩き、左手をこちらへ差し出して剣先を向けてきた。
「弟と相棒を随分と可愛がってくれたことはわかる。ならば、礼をせねばならんだろう」
「ッハ! 言ってろ! どうせここまで来ることもできねぇだろうによ」
ふむ、と小さな思案の声の後、深緑のマントの男が消えた。シュンは目で追えず、魔力を広範囲に放って索敵に利用した。そうして見つけた深緑のマントの男は自身の背後にいた。
「だから! お前、なんなんだ!」
未だ魔力圧で重力の狂っていた瓦礫を踏んで、シュンへ飛びつけるルートを一瞬で判じ、ここまで来たのだろう。一直線に跳んでくる軌道に向かって炎魔法を撃てば、くんと急に挙動を変えて深緑のマントの男はそれを避けた。キュッ、と弦楽器がチューニングされるような音がして、深緑のマントの男は別の浮いている瓦礫の上に立った。
「造作もないことだったな」
「逐一腹が立つなぁ」
なら、逃げる道を全て塞げばいいだけだ。この体には命がたくさんある。小さな宝石の粒を指先で潰すようにすればそれだけで大きな爆発が起きる。こうなればアルを殺したくないとか言っている場合ではない。あとで死体は拾うさ、と思考を切り替えてただ敵を殺すことだけに意識を向ける。
炎魔法はここで爆発する、というのとその距離感を的確に測られ、氷魔法はその剣でするりと受け流される。風魔法はどういうわけかマントすら掠らずに通り過ぎる。いったいこいつには何が視えているんだ、とシュンは感心してしまった。前ならばこういう時に焦ってしまっていたが、今は心が凪いでいる。それは深緑のマントの男からの決定打がこちらに届いていないという余裕もあるからだった。空を自由に浮いていられること、ツカサすら圧倒するほどの魔力があることはシュンの中で成功体験となっているのだ。
時間は掛かるがやれる、とシュンには確信があった。
「でも時間を掛けるのはまずそうだよな」
ツカサがいつ意識を取り戻すかわからない。アルがまた槍を振るえば魔法障壁をひらかれる。そう、同時にこいつら三人を相手にするのは都合が悪いのだ。だとするのならば、もう、いっそのこと、この場所を全て燃やし尽くしてしまい、片付けた方が無難か。
「二つ、いや、三つ」
シュンは内側から取り出したものを両手に持ち、ぎゅっと握り潰した。
「仕事だ! 小娘!」
意識の範囲外から男の声がした。体がビシリと固まって動かない。握り潰した命すらその場に留まったまま、まるで封じられたかのようだ。どこだ、なんだ、と視線を巡らせれば、死角になっている足元、ローブの向こうで何かが発動している。
「あの声、クソ護衛か!」
動けないができることはある。内側から命を追い出して、黒い生きものを瓦礫に落とす。足元で何かをしているそいつを取り込むなり、殺すなりすればいい。やっていることを中断させればいい。その間に深緑のマントの男が間髪入れずに剣を振り下ろしてきて、魔法障壁はじわじわと斬られていく。命を使って斬られた分だけ魔法障壁を補填、即座に斬られない余裕は状況を見る時間をシュンに与えてくれた。
黒い生きものがクソ護衛に近寄っていく。そこへ駆けつけたのは槍使いだった。
「世話ぁ焼かせんなよ!」
「お言葉ですがねぇ、貴様と違ってこちらはいくつか骨が折れているんですよ!」
一閃された黒い生きものは泡となって消えていったのか、風に飛ばされたのが視界に映った。足元でよく見えない、何が起こっている。
「よそ見をするな」
囁くように深緑のマントの男が言った。そちらを見れば、いつの間にか刃が魔法障壁あと一枚のところまで来ていた。それを冷静に眺めてから、シュンは吐き捨てた。
「本当に、うぜぇ」
パッ、と光が弾けた。シュンの身動きを封じていたものが押し退けられ、近づいていた刃が弾かれ、辺り一面を光が焼け焦がしていく。皆の姿が光に消えていこうとする中、灰色のマントが駆けだしてきて、両手を上にあげた。
「シェイさん! お願い、力を貸して……! 時の死神!」
ふっと深緑のマントの男が消え、くすんだ緑のマントになった。バチンッと魔法障壁が剣を弾き、くすんだ緑のマントの男が吹き飛ばされる。その代わり、灰色のマントは黒いローブに変わった。
なびく銀髪、金の目が、その左目が不思議な色合いに輝き、瞬かれた。
――城郭の外で見ていた人々には、その光がまるで終末の、この世の終わりのように思えたらしい。何度も陽が爆発し、一瞬、夜が来て、また昼に変わる。そうした光景に絶望を覚える人もいれば、ここから再起するのだと思う者もいたらしい。
守護騎士・ルシリュは後者だった。首都・レワーシェから逃れた人々を小高い丘まで連れて行った後、その光を見ながら声高にこう言ったという。
刮目せよ、我らは今、我らの新生を目の当たりにしているのだ。と。
――光は、激しく爆発することはなかった。スゥっとあたりを包み込んで、ふわりと消えた。それがいったい何の魔法であったのか、使ったシュン本人ですら理解できていなかったのだと思う。ツカサは自身の腕が、体が、感じたこともない魔力を内包し、行使したその感覚に震えていた。
「ったく、世界を見守る者である俺を、【時の死神】を利用して呼び降ろすとは考えたもんだな。褒めてやるぜ、ツカサ」
だるそうにポケットに手を突っ込んだ師匠の背中がツカサには視えていた。自分に記憶降ろしをしたはずなのだが、不思議な光景を見ている。
「いいか、こういう魔法ってのは、魔法障壁ってのは、逸らすことを目的にするといいんだぜ。お前それは得意だろ? あの時は後ろにオーリレアがあったから、受け止めなくちゃならねぇってだけで、本来、俺だってあんなもん受け止めねぇよ」
「シェイさん、でも、今のどうやって」
「イーグリステリアとは違って、ただ魔力として力を使うなら俺の領分だからな。魔力総量が多くたって、俺の方が技量は何億倍も上なんだ。ちょっと魔力に指突っ込んで、眩しいだけの光になるように、中和してやっただけだ」
肩越しにこちらを振り返る左目が不思議な色合いに輝き、ツカサを呼んだ。ふらりと近づき、手を差し出して光を掴まされた。
「俺の教えを、やり方を思い出せ。エフェールム邸で嫌ってほど、お前の魔力を調整と制御させただろ。コツは掴んでるはずだぜ? 何より、【変換】なんぞより、負担はねぇだろ」
乗せられんなよ、とツカサに重なっていた手が消えていく。黒いローブが光に紛れて薄まって、灰色のマント、白い右目、黒い左目のツカサが戻った。
「ありがとう、シェイさん、【時の死神】!」
戦える。どういうわけか魔力も戻っている。口の中に感じる鉄さびのような味を今すぐハーブティーで流したかったが、それはあとで祝杯としよう。
まるでツカサが命を誘った時のように光の粒子が舞い、シュンは自身が行使した魔法とは違う結果に呆然とそれを見渡していた。ゆっくりとツカサに向いたシュンの目が、苛立たしげに燃えていた。
「アルを殺すついでに殺しておけばよかった」
「残念、判断を誤ったね」
「クソガキが!」
再び同じように命を燃やす魔法を撃たれ、ツカサは腕を前に出して魔法に指先を突っ込んだ。焼ける痛みはもちろんある。治癒魔法を併用しながら、その魔法の奥に触り、属性を知る。そうだ、そもそも、オーリレアでその魔法にも触れていて、どういうものかは理解している。この熱いところが危ないのだから、それに氷の属性を通せるようにこちら側から調整、制御、相殺をする。相手の魔力を利用して内部で魔法を使うのだ。するとどうだろう、熱を失った爆破魔法はまるでテーマパークで使われるミストのようになって、ぶわりと一同を包んだだけだった。砕けた命はアルがそこにいる、そのまま泡となって消えるに任せた。
「す、すごい! シェイさんすごい!」
「浮かれてる場合か! 攻めるぞ!」
駆けつけたアルからの当然の疾呼にツカサはパァッと浮かんだ笑顔を引き締めた。マール・ネルを瓦礫についてヴァーレクスはさすがに限界だった。くすんだ緑のマントに戻ったラングもまた、剣をついてガクガクと震えていた。
シュンがキスクに気を取られている間にラングはツカサのもとへ駆け寄っていて、その際、【時の死神】からツカサの記憶を渡されて、その身に【ラング】を顕現していたのだ。一度シュンを殺している【ラング】は【シュン】という神であればもう一度殺せるのではないか、とツカサが考えたからだ。魔法障壁へ剣が入っていたので、ギリギリそれは許されたものだったらしい。
そうして【命の女神の欠片】をラングに戻す形で一時的に得ていた力は、ラングの体にとっては大きな負担だった。【時の死神】がそれを成すにも負担のある方法なのだから、生身の人間ではどれほどのものか、想像もつかない。
ツカサの前には敢えてアルが立った。シュンに対し、アルを殺すついでにツカサを殺せる、という利点を与えるためだ。そうすれば今そこで膝をついている仲間たちに視線が向かないだろうという思惑もあった。シュンの冷静な魔法がそちらへ向こうとすればアルの槍が魔法障壁を斬りひらいて注意を引きつけた。アルもまた、その体を赤く染め上げていた怪我などないかのように立ち回った。
「切り札は!?」
「豊穣の剣! でも、どこに落ちたか……!」
大爆発により意識を失った際、見失ってしまった。ラングもまたあの爆風で数秒気絶していたためわからないと首を振っていた。あとで感ずるものも探さねばならない。アルは舌打ちをした。
「豊穣の剣があったら、どうする!?」
「シュンに刺す!」
「単純明快でいいな! 探してこい!」
「わかった!」
適材適所、魔法を受けてもひらけるアルならば任せられる。ツカサは魔力を発し、自身の魔力の沁み込んだ物の位置を探した。遠い、吹き飛ばされて、ここから別のところだ。風魔法を踏んで瓦礫を登り、走り、拾いに行くには隙を見せすぎる。しかし、行くしかない。
「次は何を考えてる!」
炎がこちらへ迫ってきていた。アルが槍で振り払ったとして、その余波はラングとヴァーレクスを焼くだろう。いや、そちらを焼くつもりでツカサを巻き込む形だ。だめだ、離れられない。ツカサは再び炎魔法に指を突っ込み、それを水と相殺させながら、相手の魔力を利用して治癒魔法を使った。ラングとヴァーレクスに降り注いだミストは治癒を含んだ水になった。ぎらりとそれぞれの目が力を灯すのがツカサには見えた。
誤魔化しながらあれもこれも降り注がせる。熱された瓦礫がしゅうしゅうと息を吐き、風に吹き飛ばされていく。もはや汗なのか蒸気なのかツカサが相殺したミストなのかわからない。水魔法を撃つふりをしながら、倒れ伏す大虎に、ホムロルルに癒しの泉エリアの水をかけた。ユキヒョウはキスクを庇い続けていた。
一手を決めきれない、だが、ツカサはその時を待った。
――焦るな、時は来る。
「そう、必ず来るんだ」
ずっと、首都・レワーシェに残っている魔法障壁がまだある。ここにいない者がいる。ツカサの魔力が見つけていた豊穣の剣を拾い、ここに駆けてくる者たちがいる。
「俺には、たくさんの協力者がいるからね!」
ツカサの自信に溢れた笑みに応えるように、高らかな蹄の音がした。
「トルトンテが参りました!」
「やっと着いたぞ! シュン!」
牡鹿・トルトンテが高く飛び、ポソミタキはその手に豊穣の剣を持っていた。
「ラング! アル! ヴァーレクス!」
ラングは素早くツカサに駆け寄り、ヴァーレクスは瓦礫の山を駆け上がり、破片を踏んで跳んでいく。アルは槍を上段に構えた。
「ラング、矢を……っ!」
ラングの腕が矢筒に回り、そこにあるものが折れていて使い物にならないことに二人で息を呑む。そうだ、あれだけの爆発、背中を守った矢筒はへこみ、その中にある矢はへし折れ、零れるのは当然だ。魔法で作るか、しかし構造を知らない、と逡巡、ラングとツカサの間に矢が突き刺さった。
ハッと振り返れば弓を手にしたフィエルタが叫んだ。
「神子っち! 使え!」
なぜいるのかと問う頭はなかった。ラングが矢を引き抜き、ツカサはシュンに通じたものを全て乗せた。魔法障壁を砕くための一点集中型の魔封じを矢じりの先へ、矢そのものを魔封じに【変換】した。
ラングが矢を番え、弦を引いた。
「俺の欠片のご友人って奴か! 鹿ごとさよならだ!」
「させるかぁ!」
アルの槍が上段から振り下ろされ、十八番の斬撃がシュンのもとへ届き、外側の魔法障壁がひらく。再度展開される前にヴァーレクスが跳びついてその身、その首に腕を回した。
「私のことを忘れがちですねぇ……!」
「きっしょくわりぃ! 離せ!」
「小娘! マール・ネル!」
直接杖を持って封じられ、先ほどよりも力が強いのだろう。シュンはバチバチと音を立てながらそれに抗い、叫んでいた。触れているヴァーレクスの体もその余波で血を飛ばしていたが、ニタァっと笑みを浮かべたまま、耐えていた。ツカサはヴァーレクスの視線を受けて叫んだ。
「ラング!」
スッと一直線に矢が放たれ、シュンの顔色が変わる。先端についた視えないナイフ、矢についた効果は既に一度胸に突き刺さっている。
「うわあぁぁぁ! やられてたまるかあぁぁ!」
シュンがマール・ネルの封じに抗い、ヴァーレクスの腕が焼けていく。
「離すな! 小娘!」
「離せええぇぇ!」
「行け! ヒトの子よ!」
牡鹿が背を差し出し、ポソミタキが放り出されるように飛んだ。ラングの矢がシュンの抵抗を砕き、その胸に刺さり魔力を封じた一瞬、ポソミタキがその矢の横に豊穣の剣を突き刺した。
「シュンからの伝言だ」
ポソミタキが囁いた。
「人様に迷惑をかけたら、ごめんなさいと、償いが必要なんだぜ、だとさ」
シュンの苦痛に満ちた表情が、ゆっくりと泣きそうな顔に変わっていった。シュンの胸に刺さった豊穣の剣は、ポソミタキの手も刺していて、縫い付けられていた。
「一人じゃないさ、シュン。見てたなら知ってるだろ? 一緒にいこう。俺は、熱い男なんだ」
はは、と笑うポソミタキの顔に釣られて、シュンは少しだけ笑った。
「はは……、その世界に生かされてる。その世界の人々から居場所を分けて貰ってる。決して、俺たちが主役の舞台にはならないんだ……、か」
ざらりと豊穣の剣の先から、ポソミタキの手が、笑顔が、体が穀物に変わっていく。その粒を手に受けて、握り締め、シュンはツカサを見遣った。
「……そのとおりだったな。お前の勝ちだ。せいぜい、俺の代わりに異世界を謳歌しろよ、ツカサ……」
さぁっと吹き抜けた風が、小さな雫をツカサの頬へと届けた。
「うん、任せて。……最後は逃げなかったね、シュン」
歩み寄ることは互いにできなかった。それでも、この瞬間だけは、まるで友達のように笑い合えた。
――内包されている命が、魔力が、穢れが、全てが、パッと弾けた。
崩れてはいても高いところで戦っていたからだろう。中途半端に残った塔の高いところから、黄金にも見間違う小麦が、大麦が、根ざして糧を与えるものが首都・レワーシェ中へ降り注いだ。いや、その外にも、風に乗り、水に落ちてさらに流れて海へ、波に揺られてもっと先へ。
光り輝く黄金の雨に向かって、人々は空へ手を伸ばした。
元々、フォートルアレワシェナ正教は豊穣を祈ることを目的としていて、人々が自然から糧を得ることへの感謝や、豊作の祈願を目的とした穏やかなものだった。神殿の建造物が高いのは塔の最上階から種を蒔き、それが大地に根を張り、また糧となることを祈るためだ。しかし、それを見た者はこの百年近く、ひとりも存在しなかった。
「初めて見た……。種を蒔き、それが大地に根を張り、また糧となることを祈る……。こんなに綺麗なの……」
テルマの声にテルタが空を見上げて口開けたまま呆然とし、その中に転がり込んできたものを思わず噛み、香しい小麦の味にぽろりと涙を流した。商会長代理、知らず、商会長となったニテロは手のひらに降り注ぐ種を握り締めた。
「解放の黄金の雨だ、理の女神の加護が、戻って来たんだ! 我らが理の女神に! 真なる神子に! 感謝を!」
ルシリュの声に人々が歓喜の声を上げ、感謝をと叫ぶ。空は暗雲が晴れ、本物の太陽の光が黒い雲を払い、冬空から美しく注ぎ、崩壊した首都・レワーシェへ降り注ぐ黄金をキラキラと輝かせていた。
暗澹とした夜は終わり、眩い暁の光が人々の胸に差し込んだ。




