180話 そこはやっぱり
人生で1番、服を着替えた日なのは確実だ・・・。
そして、折角だから。と、今日買った服を着たまま宿に帰らされた・・・。
元の世界に居た頃だったらまだ余裕があったはずだが、オゥンドさんの護衛として毎日長距離を歩き続けたり、馬に跨り続ける毎日を送ったり、毎日の様にダンジョンに潜り続けたりした結果体型がだいぶ変化した。
俗に言う逆三角形ってヤツで、肩幅は広くなり胸板も厚くなったが逆にウエストは締まったし腹筋だって割れている。
そんな体型でかなりタイトなスーツっぽいのを着ると・・・シャツもジャケットも胸と肩はパツパツで、パンツもウエストに余裕はあっても太ももがパツパツなので立ってジっとしている分には良いが座ったり身体を捻ったりする動作をすると窮屈で仕方無い。
そして・・・。
「良くお似合いかと」
「いや・・・まぁ、ありがとうございます・・・」
ちゃんと自覚している。馬子にも衣装ですら無い。
「わ、私もユウさんの服選びたいですっ」
「えっ」
今日はもう遅い事もあって明日エイミーと買い物に行く事が決定した。
今日、明日と情報収集や消耗品や食料の補充をして明後日からダンジョンに潜る予定だったが、もしかしたら明々後日からになるかもしれないな・・・。
まぁ、その予想は見事に的中した。
レイジアが寝ている隙にエイミーと2人でデートしたのがズルいと言う事で。
補填としてレイジアとデートをしたのだから、またエイミーと2人でデートするのはズルいとの事で・・・エイミーとレイジア2人で俺の服を選ぶ事になってしまった。
2日続けて興味の無い男物の服を選ぶのにレイジアは飽きた様で、途中から・・・いや、結構序盤から俺の服選びでは無くエイミーの服を選んでいた。
レイジアがエイミーの服を選び、エイミーが俺の服を選ぶ。
だから・・・。
「ユウ様が私の服を選んで下さい」
「えっ、俺が?」
「はい」
と、無理難題を押し付けられた・・・。
元々、自分の服にもそこまで拘りがある訳でも無く。
高校生になっても母親が買って来てくれた服を着ているくらいには頓着が無い。
そんな俺が女物の服なんて分かるはずもなく。
ましてや異世界の女物の服なんて全く見当も付かない。
なので・・・。
「これとかどうかな?」
「「え?」」
「あれ?ダメかな?」
「ユウ様は私の服を選ぶんですよ?」
「う、うん・・・ごめん・・・」
これはダメらしい・・・。
フリルとかあって可愛らしいデザインで女の子らしいと思ったがダメだった。
「これはどうかな?」
「そろそろ真剣に選んで頂けますか?」
「ご、ごめん・・・」
それから何度か同じ様なやり取りを繰り返した結果・・・。
「もう結構です!」
「ユウさん・・・それは流石に酷いと思います・・・」
そう言われても・・・。
「レイジア様にはフォローを入れておきます」
「お願いします・・・」
「真剣に選ばれていたとお伝えします」
「はい」
「ただ、絶望的なまでにセンスが皆無だっただけだと」
「くっ・・・はい、お願いします・・・」
結局、この日も着せ替えに1日を費やし消耗品等の買い物には行けなかった。
そして、俺の評価がダダ下がりの1日でもあった・・・。
「酷いよなぁ」
「えー?」
「俺に女の子の服を選ばせるとか無理に決まってるだろ?」
「おじーちゃんダサいもんねー。キャッキャッキャ」
「なっ・・・はぁ・・・そろそろ寝る時間だよ」
「えー、まだお話聞きたーい」
「続きはまた明日」
「えぇー」
うん。孫が可愛い。
娘も息子も可愛かったが、その比では無い。
「愛梨にダサいって言われた・・・」
「ま、まぁ、ユウさんはダs・・・あ、それよりも、ちゃんとエリーって呼ばないとですよ?」
「あ、そっか」
「今日はどんな話したんですか?」
「エイミーとレイジアとシオリさんと4人で全国のダンジョンを回ってた時に服屋に寄った時の話とかね」
「あぁ、それで・・・」
「それにしても懐かしいよなぁ」
「ですねっ」
「レイジアは明日だっけ?」
「予定では明日帰ってくるはずですっ」
エイミーは妊娠を機に冒険者を引退し。俺も孫が生まれたのを機に引退した。
レイジアは今も領主として走り回っている。
名目上の領主は俺なんだけど、冒険者しかやって来なかった俺に務まるはずもなく。
領主代理としてレイジアが全権を担っている。
「そういえば」
グゥ───。
「ふふふ。お夜食にでもしますか?」
「お願いしよっかな」
「はいっ。何が良いですか?」
「釜玉うどんっ」
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