↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古竜は勇者の夢を見る  作者: akaru
第一章:古竜の旅立ち編
8/18

第八話:人の輪、街へ到着

 イリアは知り合った冒険者に付いて、街へと向かった。

 肉とパンの包みも忘れずに持ってきている。


 イリアは道中、仲良くなった冒険者から次に訪れる街の情報を集めることにした。


 なんでもクライスルの街といい、この辺りではそこそこの大きさの街らしい。


 通行税を取られるという話だった。

 手に持った荷物は何かと聞かれ、肉とパンだと答えると、課税対象だと教わる。


 ちょっと街に入るのをためらいたくなるような話だ。

 冒険者は免状があるそうだが。


 そして、クライスルの街では、今ちょっとした騒動が起きているらしい。


「ほう、ギルドがのう」


「ああ、商人ギルドが幅利かせてるのが面白くないってんで、職人ギルドが立ち上がってえらい騒ぎになってるぜ」


「冒険者はどうなんじゃ?」


「様子見さ。職人ギルドに肩入れするやつが多いがね」


 なんでも街の政治をめぐって、ギルドが対立しているようだ。


 ギルドと言えば、同業者の助け合いの組織。


 だが、政治に参加できるのは商人ギルドだけで、職人ギルドは参加できないらしい。

 それで職人ギルドも政治に一枚噛むために、色々動いているとのことだった。


 話しているうちに、空を見上げれば、夕日が暮れかかっている。

 向こうに街の城壁が見えだしていたが、まだかかるだろう。


 日が沈めば、市門は閉まってしまう。

 どうやら今日中に街の門をくぐることはできなさそうだ。


「どうするんじゃ?」


「あー、こりゃ野宿だな」


「まあ、明日には着くさ」


 けが人を連れてのことだったので、一行の歩みが遅かったのが原因だろう。


 一行は街道を逸れ、草地で野宿の準備をした。


 彼らは荷物が少なく、武具、ナイフ、水筒、腰の巾着といったモノしか持っていなかった。


 イリアは手に持った二つの包みを置きながら、通行税のことを考える。

 この肉とパンは課税対象だそうだ。


(こりゃいかん、取られてしまう)


 イリアは、せっかく買った肉とパンが税に取られてしまうことを憂慮した。

 手荷物は構わないようだが、旅人は小銀貨1枚の人頭税と、荷物分の現物か金銭を支払わないといけない。


 荷物というのは、市内で商いが出来る荷物のことだ。


 冒険者ギルドの組員は、通行税の免状を持っているそうで、それがあれば通行税は取られないという。

 

「免状、うらやましいのう」


「そうだなあ。嬢ちゃんは冒険者じゃないのか」


「生憎とのう」


「そりゃ災難だ。まあ、あんだけ戦えるんだ。どうせなら冒険者でもやればいいと思うぜ」


「違いない。金級(ゴールド)だって狙える」


「ごーるど?」


「金貨を稼ぐ組員、って意味さ。俺等は銀級(シルバー)だからな」


 なるほど、稼げる貨幣が金貨なのか、銀貨なのかによって、ギルド員のランク分けがあるようだ。


「考えておこう。ところで、わしの肉とパンなんじゃが、税に取られると言っておったな」


「ああ、手荷物には見えないからな」


「せっかくじゃ。どうせ取られるなら、わしからみなに振る舞おうかと思っての」


 なんたって8人いる。

 行商から買った肉とパンだが、銀貨1枚分ずつ買ったので量が多い。

 イリアがちびちび食べても、まだ半分以上残っていた。

 ここにいる全員に回る分だけはあるだろう。


「おい、いいのかい?」


「なに、色々教わった礼じゃよ」


「そいつはいい、腹減ってたんだ」


「すまないな、肉を食えるのはありがたい」


 そう口々に言う冒険者たち。


 イリアは包みを広げると、魔法を使ってさくっと切り分けた。


「ほれ、肉とパン、それぞれ持っていっとくれ」


 冒険者たちは口々に礼を言いながら、広げられた布から肉とパンを取っていった。


「こりゃあ食いでがあるな」


「久々にガッツリ食えるぜ」


「ありがとな」


 そうして9人の車座になって、わいわいと話しながらの晩餐となった。




 翌朝早く、一行は9人で連れ立って出発した。

 昨日食い物を分け合ったお陰か、お互いの距離感が近づいた気がする。


 半刻ほどで街に到着し、入市のための列に並ぶ。

 大して長い列ではなかった。馬車が2台、徒歩が数名といったところ。


 馬車は商人のようで、荷を改められた後、一台目は布織物を、二台目は袋を一抱え降ろしている。どうやら税の現物納入のようだ。


 通行人はみな荷物が少なく、金銭を払っていた。


 会話しながら気長に待っていると、順番がやってきた。


 冒険者たちは、懐から布切れのようなものを出して見せる。

 あれが免状とやらだろう。


 イリアの番が来た。旅人であることを告げる。


「旅人ね。杖に……その鞄は?」


「わしの手荷物じゃ」


「中を見せてくれ」


「ほれ」


 魔法の鞄である。頑丈で、中身が零れず、雨に濡れても染みない優れモノ。

 保存の魔法が掛かっていて、中に入れたものは腐敗から保護される。


 その中には、山から持ってきた金貨に銀貨、磨かれた宝石が5つ。

 霊薬の瓶が3本。謎のよくわからない物体。

 あとは肉とパンを包んでいた布地などが入っていた。


「またずいぶん高価なものを」


 徴税人から胡乱げな目を向けられた。


「わしの財産じゃ。持ち運んどる」


「ふん、どうかね」


 徴税人はなかなか納得してくれない。


「宝石の持ち込みには税がかかっている」


 徴税人は情け容赦なく、宝石を鞄から抜き取った。


 ――ああ?!


 秤にかけられ、どれくらいの価値か割り出される。

 イリアは愕然とした顔でその様子を眺めた。


「その薬は?」


「霊薬じゃ……」


「霊薬……? なんだそれは。上級のポーションということか」


 手荷物は大丈夫と聞いていたが、この流れはまさか――。


 霊薬も、よく分からない物体も、なんと課税対象とされた。


 顔から余裕の表情が消えていくイリア。

 やがて、徴税人の計算が終わった。


「税として、金貨2枚。それと1トール」


 イリアは観念した。

 山から持ってきた金貨と、行商のお釣りの銀貨を1枚を渡す。


 渡す手がプルプルと震えている。

 徴税人は仏頂面で受け取った。


「ようこそ、クライスルへ」


 イリアは涙目になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。