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11話 初戦美八原戦

 試合当日、駅に集まり試合会場に向かうが・・栄人が来ていない。


「監督、今村君がまだ来ていないです」


「あのバカ、何をやっているのよ、全く・・誰か今村君に連絡して」


 試合会場までは電車で30分だが、車だと多く見て1時間はかかる。


「もしもし、今村君、今どこにいるの?」


 菜々子が栄人の携帯に連絡するが、栄人は駅に向かう商店街にいると報告入り、たまらずに、菜々子から沙弥に電話の話し相手となる。


「もしもし、今村君・・・ふむふむ・・・わかったわ、必ず間に合わせなさい、私達は先に行くわ」


「監督?」


「今村君は人助けの為、直接試合会場に向かうわ」


「どういう事?」


「詳しくは後で話すわ、さぁ行くわよ」


 沙弥だけが遅刻の理由を知っているが、詳細を話す時間がないのでやむを得ず電車に乗り込む。


 栄人不在のまま、試合会場に到着し、控え室で準備をする聖峰メンバー、やはり栄人不在が大きいのか、選手達から不安の表情が見受けられる。


「今村君は駅に向かう途中、救急搬送者を見かけ、集合に間に合わなかったわ・・・」


「ヒデが人助け?」


 普段、のほほんとしている栄人が、バスケとなると人が変わる栄人が人助けを・・・・

 当然、皆驚くのも無理はない。


 ****


 皆が駅に集まる少し前、いつもの様に駅に向かう栄人、信号待ちの途中妊婦が隣に居たのだが。


「うっ・・・」


 信号が青に変わった途端、妊婦がうずくまり、苦しそうな表情を浮かべる。


「ちょっ大丈夫ですか?」


 栄人が声を掛けても、妊婦は唸ってうずくまるばかり。


「誰か、誰か、手を貸して下さい」


 真っ先に救急車を呼び、栄人の必死の叫びに、通行人が手を差し伸べ妊婦を日陰に避難させる、どうやら出産が近いようだ。

 栄人の迅速な処置により、救急車は程なくして到着し妊婦は救急車に担ぎ込まれた。

 その後、妊婦は出産を無事に終えた事は栄人はまだ知らないまま、急ぎ試合会場に向かう。


 ・・・・皆、負けるなよ、必ず行くから・・・


 ププーッ


 栄人の横に一台の車が停まり、栄人に話し掛ける。


「ヒデ?何やってんだ?試合だろ?」


「テツさんどうしたの?」


「どうしたのは、こっちのセリフだ」


 事情を話すとテツがあっさり快諾し、栄人を車に乗せる、運転席にはシュウも居た。


「なるほどな、お前ヒーローじゃん、そんなヒーローに試合出れませんでした、なんて、シャレにならん、シュウ高速使うぞ頼めるか?」


「任せろテツ」


 完全にスピード違反を覚悟したシュウの運転、警察にいつ見つかるかハラハラしながら高速道路に入っても、100キロオーバーのスピードで車を走らせる。

 全ては栄人の為に、自分達の弟子が公式戦デビューするのだから。


 高速を無事に降りて、市街を爆走するシュウ達、当然白バイが隠れていて、サイレンを鳴らしシュウの車を追いかけ出した。


「やべ、見つかった・・・ヒデ試合は何時からだ?」


「9時からだから、後10分で9時になるよ」


「テツ、ヒデと一緒に行け、俺は罰を受ける・・・」


「シュウさん・・・」


「ヒデ、ここからはタクシー捕まえて行くぞ、シュウお前、男だな」


 親指を立て、シュウを残し、タクシーを拾い急ぎ会場に向かう。

 シュウは白バイ警官にこってり絞られ、後日スピード違反で罰金を支払った。


 ****


 栄人の到着を待ちながら、聖峰の開幕戦が始まった。

 スタメンは、河村、大樹、泰、一志でスタート

 対する美八原は、3年生を中心に1人だけ一年生の小場が入っている。


「あれ?ねぇ今村栄人は?」


「ヒデはトラブルに巻き込まれ遅刻だ」


 一志がそう言うと、小場は自信ありげな勝ち誇った顔をし始めた。


「逃げたかと思ったぜ、でもヤツが来る前に俺がガンガン点を取るから、出番ないかもな」


 観客席に高々と拳を上げると、美奈が視界に入っている。


 ・・・美奈ちゃん君の為に勝利を捧ぐ・・・。


「ねぇ、美奈、小場君こっち見てるよ」


「あははは」


 美奈と連れの友達も小場に気づくが、恥ずかしいから知らん顔。

 それよりも、何故栄人が居ないのか?しか頭にない。


「おいっテメー、ヒデの出番はねーとかぬかしたな?なめてんじゃねーぞ」


 小場の挑発に河村を除いて聖峰メンバーに怒りがこみ上げる特に一志と淳大。


 ジャンプボールを制し、河村がゲームメイクをする、手始めに一志と淳大で中を攻める。


「頂きー」


 淳大がシュートモーションに入る手前に、小場がスティールを仕掛け、あっさり先制点を許してしまった。


 調子の良い事を言う割には、きっちりやる事をやる、嫌らしい性格だ。


「皆、まだ始まったばかりだよ、取り返そう」


 気持ちを切り替えて、河村の掛け声が木霊し再び聖峰の攻撃。

 一志が小場を引き付け、淳大をフリーにし早速練習の成果を見せる。


「よっしゃ」


 見事に決まり、あっさりと同点に追いつくが、まだ全員の動きに固さが目立つ。

 何となくはわかっていたが、沙弥も選手を信じて、まだ動かないでいる。


「先輩、この試合俺にボール全部下さい、奴らをギャフンと言わせますから」


 小場の発言に、流石にキレそうになる美八原の選手達だが、小場は先輩を凌ぐ実力を持っているので認めざるを得ない部分もあった。


「小場、負けたら坊主な」


「任せてくださいよ、坊主になんかなりません」


 小場にボールが渡ると、聖峰の意表を突いたスリーポイントシュートを放ち、見事に決まりだす。

 こいつ、調子良い事言ってはいるが、実力はある。

 聖峰メンバー誰もが、そう思い始め出した。


 その後、泰と淳大で中を攻めるが小場に生意気な口を聞かれて、美八原陣営のディフェンスが厚くなり攻め倦む。


 小場を中心に、美八原のカウンター攻撃で聖峰ゴールに襲いかかり、9対2とリードを奪われた。


 予想も出来ない、トリッキーな動きに翻弄され、一杯食わされた感覚、栄人が来るまでは食らいつかねば。


「河村さんボール下さい」


 大樹にボールが渡り、スリーポイントかと思われたが、相手にフェイクを入れ抜き去るとすぐに、小場がマークに付いた。


「俺がいる限り好きにはやらせねーよ」


「あっそ・・・」


 直ぐ様、大樹が小場を抜き1ゴール取り返す。


「皆、直ぐ戻れ」


 大樹が大声を張り上げた、自分の存在感を出すため、沙弥に言われた事の答えを見つけ出した。


 中が泰、淳大の高さに圧倒されたのか、美八原メンバーは小場を始めスリーポイントやミドルシュートを連続して打ってくる。

 聖峰からしたら、精神的に徐々にボディーブローが来ている。


 終わってみれば、第1クォーター14対6とリードを許す展開となり、第1クォーター終了。


「なぁ、卜部、遠藤はわかったが、今村てヤツは?」


「あれ?来てないなぁ、て、今来たよ」


 第1クォーター終了と同時に、栄人が到着、アップの時間もなく直ぐに試合の準備をする。


「今村君、待ってたわよ」


「遅れてすんません、8点差か」


 栄人の到着に、観客席から安堵の表情を浮かべる美奈。


「あれ?美奈ちゃんこっちに帰ってたの」


「テツさん久しぶり」


 美奈も又、テツとは知り合い、栄人にバスケを勧めたのは美奈だったから。


「じゃ、反撃開始」


 栄人の掛け声で、聖峰の反撃が始まろうとしている。

























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