10話 県大会前夜
青山に圧倒的な力の差を見せつけられた淳大、その事はまだ自分の胸の内に留め、県大会までひたすら練習をしていた。
「皆、県大会の初戦の相手が決まったわ」
沙弥が皆の前に顔を出すと、真っ先に初戦の相手が通達される。
「初戦は美八原高校、そこそこに強い相手よ」
「美八原だってぇ?」
「今村君知っているの?」
「えっ?あっ・・・いや・・その・・バスケには関係ないけど・・知り合いが居て・・」
言えない・・・幼なじみの女の子が対戦校に居るなん、とても言えない・・・と、胸の中に終う栄人。
練習後、複雑な思いで家に帰るが・・・。
「あっ、ヒデ君、今帰り?」
「うん、美奈も?」
「そうだよ、一緒に帰ろ」
家が隣だけあって帰る方向も同じだが、回りから見たらカップルに見られてもおかしくはない。
「県大会もうすぐだね、応援に行くよ」
「いいのか?相手はお前の学校だぞ」
「えっ、そうなんだ、でも、幼なじみのよしみで私はヒデ君を応援するよ」
言いきった、言いきったよ・・この子、言わんばかりの栄人の表情だが卜部と再戦を約束したので、負けるわけには行かない。
「アーッ美奈ちゃん、誰その男?」
帰り道途中、栄人と同じくらいの背丈の男が現れた。
制服からして美奈と同じ学校の生徒だが。
「あっ小場君、彼は今村栄人君、ヒデ君とは幼なじみで家が隣で・・・」
「な、何ぃー」
二人の前に現れた男は、小場雄基どうやら美奈に惚れている様に見える。
「テメー、家が隣だからって調子に乗んなよ」
「・・・・・」
何の因果か栄人に因縁を付ける小場だが、どうして良いのかわからない栄人。
そんなのお構い無しに小場の話が永遠と。
・・・早く帰ってシャワー浴びたい・・・腹減った・・・小場の言う事は耳に入らず、早く終わんないかなぁと顔に出す。
「聞いてるのか?テメー」
「ごめん、何だっけ?」
「やめて、小場君」
栄人の胸ぐらを掴もうとした時、美奈が仲裁に入る。
「小場君、乱暴はやめてヒデ君とはそんな関係じゃないから、それにヒデ君試合近いから暴力はやめて」
「試合?」
「ヒデ君は聖峰高校のバスケ部なの」
「聖峰だってぇ?そうか、お前対戦相手だったのか、俺は美八原高校一年、小場雄基、ポジションはフォワードだ、一年にして唯一のレギュラーだ、時にお前女子にモテるの?」
「知らない・・・」
どうでも良いが、早く帰らせろと態度を顔に出す栄人だが、小場は自分の話しをまだまだ語り出す。
仕切りに小場がスマホを取り出し、栄人に見せびらかす。
「見ろこれを、女子の連絡先いっぱいだ、お前はこんなに女子の友達は少ないだろ」
「はいはい、それで?」
「羨ましくないのかお前、だったら試合で美奈ちゃんを賭けて勝負だ、そして、俺が勝ったら美奈ちゃんに近づくな」
特に飛び抜けたイケメンでもないのに、何なんだこいつは・・・只のナンパ野郎じゃないかと言いたいが、そんな事はどうでも良かった。
「言っとくが、美奈は物じゃねーし、誰を選ぶかは美奈が決める事、お前に指図される筋合いはねーぞ、それに、俺も再戦を約束した相手がいるから、負けるわけには行かねーぞ」
「くっ、クッソー、試合で吠え面かくなよ」
そう言って、小場は走り去り栄人の前から居なくなった。
「ヒデ君・・・ありがとう・・」
「良いって事よ、あいつ、面倒な奴だな・・」
栄人が許せなかったのは、男女の恋愛は自由だし、勝負事で人を賭けの対象にした小場の態度と何より第3者の気持ちを尊重しない所。
次の日も、県大会に向けて栄人達の猛練習が始まり、試合は週末土曜日、全員まだ怪我なく済んでいるのが幸いしている。
「そういや、四天王とか言われている奴ら、勝ち上がればいずれ戦うんだよな?」
「・・・・」
「淳大どうした?」
「な、何でもねーよ」
一志が四天王の話をすると、淳大の顔つきが変わるが、まだ青山と当たるまでは胸の内に閉まっておく事にした。
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青山珈琲店、青山の両親が経営しているお店、青山も時折手伝っているが。
「卜部、いらっしゃい」
「青山君、キャラメルラテ頂戴」
「相変わらず、甘いの好きだなお前」
「ブラックコーヒー苦いから、嫌だ」
「青山弘毅スペシャルブレンドが出来たのに・・この、香りの良さがわからないとは」
青山と卜部はライバル関係であり、バスケを通じた友でもある。
「俺らシードだから、開幕戦暇だな・・」
「なら聖峰の試合観に行く?」
「聖峰にこだわるが、注目選手でもいるのか?」
「特に今村君と遠藤君、あの二人は驚異だよ」
「ほぅ・・・」
コーヒーを飲みながら、聖峰について、語り出す二人だが青山にとっては淳大が気がかりであった。
「聖峰には、俺の後輩が居てな・・・佐久間淳大、あいつがどれだけ成長したか楽しみだ」
「あぁ、あのデカイ10番、彼は荒削りだが、ドツボにハマると怖いよ・・」
「なぁに、誰が来ようと俺が勝つ」
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県大会前日、軽めに調整し、明日に備える聖峰メンバー。
「明日は7時に駅集合、各自遅れないように」
「はいっ」
「河村君、一言」
沙弥が、連絡事項を述べると、河村に大会に向けてのスピーチを要求。
「えっと・・・皆先ずは、この部に入ってくれてありがとう、初の公式戦だ・・・先ずは1勝しよう、いや、全国目指すわけだから、勝ちに行こう」
・・・・パチパチパチ・・・・
部長として、主将として、河村に挨拶をさせた沙弥、期待通りのコメントをして貰い、ご満足し、皆からの拍手も体育館全土に響き渡る。




