12話 美八原戦2
「今村栄人、逃げたかと思ったぜ」
「ん?誰だっけ?」
「ふざけるな」
知っては居たが、小場を挑発する栄人。
ボールを持つと、小場が早速栄人のマークに入る。
何で、因縁つけられなきゃならんのだと思いながら小場の出方を伺う。
誰にパスを送ろうか、チラチラ目線でフェイクを入れながら回りを確認する。
「スキありー」
一瞬の隙をつき、小場が栄人からボールを奪うが、直ぐ様バックハンドで小場からボールを奪い返す。
この、ワンプレイで観客が沸いていた。
「あぶねーな」
「このやろー、カウンターのチャンスを」
と、言っている間に栄人が動き出した。
パスを送った先は泰だった。
泰がボールを受け取ると、そのままシュートに持ち込み14対8となる。
栄人が入った事により緊張の糸もほぐれ、聖峰ディフェンス陣が気合いを入れ直す。
その後、一志、淳大で中を攻め、大樹の連続スリーポイントで聖峰陣怒涛の攻撃が始まり、第2クォーター開始早々、20対18と逆転していた。
「あの7番が入ってから、勢いが凄いな」
「でしょでしょ、聖峰は強いよ」
「何で嬉しそうなんだ?卜部」
それよりも、青山が嬉しかったのが淳大の成長、様になっているじゃないかと絶賛している。
徐々に、美八原陣営に衰えが見え始め、小場にも焦りの様子が伺える。
・・・拝啓、卜部卯月様、あんたの方が100倍強えぇ。
続く第3クォーター、第4クォーターも聖峰の手は緩める事なく、98対48と初戦を大勝利に収めるのだった。
卜部と青山、そして観客は思った、聖峰のエースは間違いなく栄人だと。
それは、聖峰の選手も栄人がエースだと認めだした。
栄人には全く自覚はないのだが。
「みんな、お疲れ様、上出来よ」
「ヒデくーん」
観客から美奈の声がし、目を向けると栄人に向かって手を振り、栄人もそれに応える。
当然、聖峰メンバーが黙っていない。
「オイッヒデ、誰だ?あの子は」
「えっいや、幼なじみですが」
一志を始め、全員が栄人に問いただす。
「お前も、リア充かこのやろー」
「痛い、カズ止めろ、疲れてるんだから」
その元気を、試合でぶつけろと言いたい沙弥だが、もはや何も言う気はない。
それよりも、菜々子の顔が怖い。
「今村くぅーん、マッサージ、し・よ・う・か」
菜々子の指示で、全員に取り押さえられた栄人、菜々子から強烈なマッサージの施しを受ける羽目になる。
「いってぇーーーー」
解放された後、栄人の頭が真っ白になり試合より体力を使った気分。
小場はと言うと約束通り坊主にされ、先輩に対して取った、傲慢な態度に厳しいお叱りを受けていた。
このまま勝ち進むと、ベスト8であの四天王青山がいる、北都商業と対決が待っている。
その夜、窓際越しで美奈と会話する栄人、月明かりがとても綺麗な夜だった。
「凄いね、大差だよ」
「勝ったにしても、お前の学校に勝っちゃったから、何か後味悪いと言うか・・」
「気にしなくて良いよ、私はヒデ君のファン1号だから」
笑顔で良くもまぁ、そんな事言えるなと感心する栄人、反面自分の事を応援してくれる人がいるから嬉しさもあった。
徐々にだが、聖峰を注目し出す人が増えて来ている。




