第10話 ミラーワールドの使い手〜ミロ
組織の幹部が帰ってから、マウは組織の命令に従うことに躊躇いはなかった。
理由は二つ。
一つ目は、無敵を自負していた「ダークマター(自分の思い通りの事象を起こせる能力)」を持つマウにとって、赤子の手を捻るほどの忍術を持つ者がいたこと。しかも、その能力はまだまだ謎を秘めている。
更に、その隣にいた男のオーラは、その忍術でさえも従える能力者であることを示しており、謎の能力者である。
相手の能力がわからない以上、ダークマターであろうと、命も落としかねない。
「この能力を自分のものする」という事実をダークマターで実現させたいと思ったからだ。
二つ目は、依頼の暗殺ターゲットが、自らが尊敬するジンであり、かつ、謎の組織アルファのボスであるということ。
そのボスである彼は、最も油断ならない、時空操作を操る能力者。
以前に出会った時は、ジンが能力者として成熟していなかったため、いとも簡単に勝利出来たが、使い方次第では最強。
しかも、そのアルファという組織は、同様のイオ6人が彼を取り巻いているという。
さすがのマウも一人でどうにかなる相手ではない。
世界を征服するには、遅かれ早かれ、必ず、向き合う敵。
叩くには、完成度の低い今しかチャンスはない。
マウの能力、ダークマターは、他の能力のどれをも凌ぐだろうが、最も恐れていたのは、能力者同志の協力による攻撃だった。
マウ自身、自分の能力ダークマターの全容は熟知していないが、今わかっているのは、脳が働く限り、体が裂けようと、重い病にかかろうと、金がなくなろうと、愛を失おうと、何でも思い通りになる能力である、ということ。
それこそ、リュウの忍術もジンの時空操作も、イメージさえ出来れば、思い通りに奪える。
「アルファの崩壊」という発動をすれば、全てが一瞬で終わるだろう。
「マウ以外の者の能力をなくす」という発動をすれば、それで万事解決することだろう。
しかし、それでは、楽しみがなくなってしまう。
一人ずつ、じっくりと痛めつけたいというのが、マウの本心。
正にマウが「無敵」と呼ばれる一方、唯一の「弱点」でもあった。
そのマウの能力を以てしても、流石に、不意や素早い攻撃にはかなわないと感じていた矢先のことだった。
「今日は、いつにもまして、生きている心地がする。
まだ、強い奴がこの世界にはごまんといるんだな。
これからが楽しみだ。
それにしても、昨日の奴らがくれたこのイヤホン。。。
これは何なんだ?!耳にくっついて取れないが、、。」
そう言いながらも、ダークマターで簡単に取れると思いこんでいただけに、一層、衝撃だった。
「ダーク!」
と念を唱えたあと、意気揚々とそれを外そうとしたが、ビクともしない。
「!?」
マウは心底焦っていた。
「バカな!!俺の絶対的な能力を以てしても、外れない?
まさか!。。。無力化か?!」
無力化。
過去に一度耳にしたことがあった。
いかなる能力をも吸収してしまい、能力者を無力化するという、まさに能力者泣かせの能力。
ただ、本来、それは能力者によって発動されるもの。
物体にその能力を発動させるなどあり得ない。
ただ、ミラーマテリアルを除いて。
。。。
ミラーマテリアル。
かつて太古の昔、人類が生まれて間もないころ、誰もが特殊な能力を持っていた。
しかし、触れたものは全て衝撃で吹き飛ばす、衝撃波を持つ能力者により、世界は混沌とし始めていた。
そこに無力化の能力者が現れ、衝撃波を抑えていたのだ。
無のパラリシスと無限のエネルギーのインパクトがぶつかり続けた。
そのぶつかり合った狭間に出来た、強大なエネルギーとゼロエネルギーの中和、、、それが、ミラーワールド。
その世界を閉じ込め、現在では誰もがその世界を目にしている。
その世界とは、すなわち、「鏡」。
別名ミラーマテリアル。
それは、、全ての能力を無効にしてしまう。
実在しない、ただの伝説に過ぎないと思っていたが、、、。
まさか、今、自分の目の前に実在するとは。
しかも、それが、耳にくっついて取れない。
「・・・そうか!
リュウの隣にいた幹部。」
マウはリュウの隣にいた男、その彼の正体を今、悟り、そして、それは震えに変わっていた。
「ミラーワールドの使い手、「ミロ」か。。。」




