第11話 夢の中のジン
夢の中に閉じ込められたジンはほくそ笑んでいた。
最強であろう能力者たちが、自分の部下になっているからだ。
その能力者達が結集したアルファは、間違いなく、現実の世界では最強の組織だろう。
それ以上の組織など想像だに出来ない。
ただ一人の能力者を除いて。
そう。
そのただ一人とは、正に「想像」が具現化してしまう能力【ダークマター】を持つ能力者、マウ。
ダークマターは、未だ、マウ本人にも理解出来ないほどに奥が深い能力だが、おそらく、それを身につけた能力者は、自分の想像した事象を魔法のように具現化する、言わば、魔法使い(ウィザード)のようなものだろう。
それ故、彼の能力であれば、ひとたび
「アルファを私の操り人形に!」
と唱えるだけで、アルファはマウの意のままに操られてしまうことだろう。
幸い、マウは好奇心が旺盛で、簡単にコトを終わらせることをせず、ゆっくりと攻めるのを楽しむタイプだから、アルファを一瞬で消すようなマネはしない。
しかし、ジンは、念には念を入れ、不測の事態に備え、無力化と衝撃波の能力者を同じ組織に共存させることで、全ての能力を打ち消し合うとされる「ミラーワールド」というバリアを常にはっている。
「ミラーワールド」とは、いかなる能力者もその効果を発揮することなく、場合によっては、攻撃を仕掛けた側が、まともに反射して自らが受けてしまう、まるで鏡のような、虚像と実像が交錯する世界のことだ。
そのミラーワールドに加え、ジンはさらに、パラリシスとインパクトの効力が届かない領域でも、バリア効果を発揮出来るよう、遠隔催眠により、仲間の体を共有化させるという結界も張っている。
実際、そのおかげで、仲間のヒョウマが一命を取り留めた例がある。
ヒヤリハットした程度であれば、辛うじて、ジンによって時空操作を発動できる。
時空操作とは、時間軸と空間軸を操作出来る能力のことで、時間を止めることはもちろん、時間を進めたり戻したり、その場の景色を切り取り、別の場所を持ってきたりと、まるで、映像編集さながらのことを実現してしまう驚異の能力。
しかし、そのディメンションだけでは危機を回避出来ない場合も中にはある。
油断して不意をつかれ、ヒョウマがやられそうになった時がそれだ。
この時は、往々にして、忍術により立場を入れ替えるなど、他の能力と連携する。
忍術は、文字通り、忍法。
変わり身の術はもちろん、分身から隠れ身など、多くの術が使えるのが特徴だ。
ジンは、BJE(大日本電気)に勤めていた時、偶然、当時、ジンの上司であった「ミロ」のボディガードをしていた「リュウ」と出会った。
その時は社内のカフェでリラックスしていた時だった。
突如、震度6強の強い地震が皆を襲い、例外なく、ジンも動揺して、瞬時に時を止めたものの、時が動き出した時、その事象に何ら変化もなく、再び、地震という恐怖が訪れることに気付き、大自然に対する自分のちっぽけさを痛感していた矢先のこと。
まるで、それを嘲笑うかの様に、底知れない忍術を操るリュウを目撃したときの衝撃は、未だ、ジンの脳裏から拭いきれない。
なんと、彼は、天と地の事象を入れ替えてしまったのだ。
轟音と共に地響きは鎮まり、やがて、その轟音は天に集まった。
そして、その強大なエネルギーが集まったその躍動は、激しく雲を吹き飛ばし、雲ひとつない快晴にしてしまった。
その彼の能力を間近で目撃して、自然すらも凌駕する、このリュウという男に対し、一種の憧れに近い感情すら持ってしまった。
結果的に、今では、同僚のヨウコの遠隔操作によって、奇跡的に組織の傘下とすることが出来たが、今なお、ジンが最も敵にしたくない人物に変わりはない。
それらの想定をも超える、時空操作や忍術でさえ、食い止めれない事態があった時、その時が、アルファの誰かがやられる時だ。
しかし、その最悪事態にも、とっておきの能力者を最終兵器として仲間にしている。
その能力は、物体再生。
その能力者であるノリコは、最悪の事態でも、ある程度、蘇生させることが出来てしまう、いわば、神の手を持っている。
ただ、その能力の恐ろしさには、未だ、誰も気付いていない。
夢の中から操っているジンにとっても、それが今後、大きく影響を及ぼす能力であることにも・・・。




