第七話 語り継がれし毒は、善悪を歪める。
[現在の位置は第三十二柱・勝利の起点]
「わーー」
「あれが…平等の国」
まだ遠いが、地図通りに石壁で覆われていた。まるで一つの大地かのように大きく広かった。
「凄いだろ、あれが国って言うやつだ。」
「それとここはな、人類の存続を懸けた場所だ」
「こんな場所が?」
「ふふ」
「馬鹿ね、生きてたら自然に覚えるような言葉を知らないなんて。」
テスカーは少し暗い顔をしている。
「この子、義務教育とか受けてないの?もしかして」
「義務教育は関係あるかもしれないが…拾い子なんだ」
「………テスカーの記憶はない。」
「あ…………ごめんなさい」
「悪気はなかったの。」
「気にしないで、大丈夫」
「人類の存続がなんなの?」
この暗くなりそうな空気を切った。
「ええとねー…」
「私が特別に教えてあげるわ。」
人間と灰人が協力し合い、人類の存続を懸けた争い。悪魔が数え切れないほどに、湧いていた時代。ベンジャミン2世は、この状況のままだと人類は、いずれ滅びてしまうと予感した。その状況を覆す為に、ただ逃げて隠れるのではなく、未知の存在に戦うべきだと大宣言したのだ。その話に乗った者達は、彼についていった。ベンジャミン2世は、協会を創設しだした。その名も旗協会。
ベンジャミン2世は、大きい賭けを宣言した。安全を作るための大地の奪還。国を作ると大きくでた。防衛戦だが、壁を作る時間を設ける為に、死に物狂いで耐えて守り切り、安全地帯を作り上げた。
一つ目に作りあげられたのが名誉の国。大地を取り返せた初めての場所。二つ目に作られたのが食卓の国。三つ目に作られたのが安眠の国だ。そして未知なる存在は悪魔と定義され、その存在は後世ずっと悪魔と言われるようになった。
「――その結果がね、今の平和があって三つの国…うーん四つの国?違うな…三つの国ができたんだ。」
「本来なら四つの国ができるはずだったけど、灰人は悪魔に寝返って、人間を裏切ったの。灰人が生き残る為に。」
「そうだったんだ…灰人は、悪い人なんだね。」
ションボリ
「あー…待って違う」
「灰人は、確かに悪い事したけど…もう過去の話。」
「その時代とは関係ないのに、罪人として見るのはだめだよ。」
「良い灰人だって居るし、悪い灰人もいる。」
(差別ダメー)
「フィリア…いらん事を教えるな」
「灰人は…悪いヤツだ。」
「ゲッ…あんた…もしかして差別主義者?」
「あんたの、お兄ちゃん。ガチで終わってるな…」
ロークに絶句している。
「俺は、そんなんじゃない…」
「あいつらと一緒にするな。」
「ただ…信用できない」
「テスカーは、誰にでも信用するやつだから――」
「だからでも、その教え方は駄目だよ。」
「間違ってる」
「分かってる…そんなことぐらい…」
「はぁ……あんたは、何かあったんだね」
心の奥に傷があるようなロークを眺める。
「深くは聞かないけど。」
「いい?テスカー。全員が悪い人ではないの。」
「分かった?」
「うん!」
「灰人は悪い人じゃないって知ってるよ!」
(灰人の人と仲良いもん)
「それなら良かった。」
ロークは過去を鮮明に覚えているのか、少し気分が低い。後悔…罪悪……自分の正当化…。
この罪は、精算できないだろう。
平等の国に近づくにつれて、壁が大きくなる。目に入る視界が全て石壁だ。青い門は開いている。
「これが平等の国…」
「まだ入ってもないぞ。テスカー」
「あ…忘れてたわ」
「今すぐ土下座しなさい」
「え?」
「は?」
「テスカー、この馬鹿ほっといて先入るぞ」
テスカーの肩に手を添えて門の先に向かう
「ちょっっとあんたらぁ"ー!!!」
「フッ。もう中に入ってるんで」
テスカー、ローク、フィリアの3人は、もう中に入っていた。
[現在の位置は第三十二柱・平等の国:入り口付近]
「はぁー…やらかしたわ」
「楽しくて、つい忘れてた。」
「この国から出たら覚えてなさいよほんとに…」
イライラ
「着いた事だし旗協会に行くか」
旗協会に向かった。テスカーにとっては刺激が強すぎるかもしれない。楽しそうな光景で、人で溢れている。商店街にパフォーマンスしている人、見たこともない果物、初めて見る動物――初めて見るのが多く、テスカーの頭は疲れだす。
「ちょっとお兄ちゃん……疲れた…」
「おぶって…」
「はいはい…」
「え、疲れてお兄ちゃんに甘えるの?」
「なにそれ可愛い…」
「見せもんじゃねーよ。」
「よいしょっ。しっかり掴まれよ」
テスカーを、おんぶしながら歩き旗協会に着いた。
一つの城だった。豪華な装飾をされている。流石は人類のシンボルだ。
扉を開けて緊急受付に向かい事の経緯を話す。
「どうなされました?」
「ローク様」
「悪い緊急だ、よく聞けよトール」
「第二十九柱にて仮面の王が現れた。」
受付人は驚く。
「え?なんですって?」
「仮面の王が外に?」
「被害は!?」
「被害はない。…まだ」
「偵察か分からないが、絶対に何か企んでいる。」
「報告ありがとうございます!急ぎで書類を作り王に報告します!」
「王に報告が終わったら飲みでもするぞ」
久しぶりに会ったんだし
トールは返事をする事なく、急ぎで事務室に向かい書類を作成している。
「あら?灰人は信用できないって言ってませんでした?」
「楽しそうに話してましたけど。」
「…あれは友達だ。」
「それに…この国の人は信用できる。」
「お兄ちゃん矛盾してるね。」
「…………………………」
「そうだな…矛盾してる。」
「俺は……」
「なに深く考えてるのよ。」
「あなたが酷い人なんて、もう思ってないわ」
「あんたの見方がちょっと変わっただけだし」
「お兄ちゃん!」
「報告終わったから次何するの!」
「…はぁ。とりあえずは宿に行くか」
「えー、まだ夕方なのにぃ。」
「まだまだ歩けるよ!」
「え、宿って…ちょっと弟いるのよ?///」
眉間に手を添えながら
「…一睡もしてなくて疲れてんだ。」
「頼む休ませてくれ。」
「お兄ちゃん寝てなかったの?」
「ふふーん。」
「あんたが寝ている間に、テスカーを連れ回していい?」
「いいが、変な所には行くなよ」
旗協会から出て、徒歩20分程度で宿に着いた。
チャラ〜ン
「二部屋でお願いします。」
「分かりました」
「5番と17番です。」
「ねぇねぇ。」
肘で突く
「二部屋でいいのー?」
「二部屋だ」
「テスカーと俺で、お前は一部屋」
「へへー。ほんとは一部屋にしたいくせに」
無視して2階に登るローク
「あの男ぉ、私を無視するとはいい度胸ね」
「行こ、テスカー」
「私が楽しいこと教えてあげる」
ニコ
フィリアとテスカーは、数時間の間だが、平等の国を回りに行く――
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