第八話 貴方を知っている。貴方は忘れている。
宿から少し遠いが、平等の国を案内程度で歩き出す。
「フィリアお姉ちゃん」
「!?!?」
「もう一回言って…」
「?フィリアお姉ちゃん」
キャァァァァ
(お兄ちゃん呼び……)
「お姉ちゃん呼びされるのいいかも…」
「え?」
「なんでもない。なんでもない。」
えへへ
お姉ちゃん呼びで照れてるフィリアは新鮮な感じがする
「今からどこ行くの?」
「えーとね」
「今から食べ歩きでもする?」
「食べ歩き?」
「食べ歩きって…食べて歩くこと?」
「なにそれー面白くなさそう…」
「食べ歩きも知らないの?!」
「あ…そっか」
「ごめんね…」
「それと、私の奢りだから感謝しなさいよね」
「買ってくれるの?」
「ええそうよ」
「お姉ちゃんありがとう!」
(あ…やばい…調子狂う……)
ブフォ
フィリアは、ロークの手を握り連れ回す。甘い果実やらフライドチキンなどなど…色々食べた。二人は食欲旺盛で、特にテスカーは限界を知らない胃袋だった。
(この子ったら…手握られて嫌がりもしない…….…)
(いけないいけない。)
「その小さな体で、よく食べれるね」
「もうお腹いっぱいでしょ?」
「うーん…」
「まだかも?」
「えぇ!?」
「あんなに食べたのにぃ?」
「………でも確かに…お腹とか何一つ膨らんでない…」
「まだ食べていい?」
「ちょっと…お財布に相談だよそれは…」
「えぇー分かったー」
(いったい胃袋どうなってるのよ…)
「いつも、どのくらい食べてるの?」
「いつもはー、出された分だけ食べてる」
「その出された分が、どのくらいなのか分からないのよ」
「えっとね…このぐらい」
テスカーは、手と腕を使って大きさを現す。だが、その大きさは、さっきまで食べた量と、比較的に極小だった。
(???)
「???」
一般的な、平均の量だった。
「いつもそのぐらい?」
「満足できてるの?」
「今日あんなにも食べてたのに???」
「え、うん。」
「くうふく?とか分からないんだ」
「空腹になったことないの!?」
「なにそれ、すご!」
(あんだけ食べて何もないとか絶対嘘でしょ…)
(もしかして、この子…特異体質?)
「テスカーはすごいなー」
「お姉ちゃんは、もう8割は来てるよ」
「ふふーん。凄いでしょ」
「僕は、まだまだ0割だよ」
(後で、ほんとかどうかロークに全て聞いてみよ……)
食べ歩きの中で、信じられない話と信じられない事を目にしたフィリアは、疑いつつも、テスカーが美味しく食べる顔を眺めていた。なぜだか分からないが、フィリアはテスカーに純銀のネックレスを買った。そしてフィリアの所持金は、半分も消費した。
〈フィリアの所持金〉
201ゴールド→140ゴールド
4シルバー→37シルバー
帰りの道中にオーダーブロンが、道のど真ん中で立っていた。
「あら…黒服がいる」
「ねぇ見てテスカー、ラッキーよ」
「あの人はね、この国の平和と秩序を保つ人よ」
「あの全身真っ黒な人?」
その見た目は、全て黒一色で統一された人だった。唯一の色があるとしたら顔の部分の肌色だろう。黒色の武器を手に持っていた。それはツヴァイハンダーだった。
「えーあの不審者みたいなのが国を守ってる人なの?」
「失礼な言い方ね」
「そう、あの人が国の人達を守ってるのよ」
「ささ、もう戻りましょ」
(なんかあったのね….)
フィリアは、早歩きで歩き出し、テスカーを引っ張る。そのうち宿に着いた。
「あの人見てから焦ってたけど何かあったの?」
「いや…ちょっと嫌な予感がしてね」
「もしかしたら近くで犯罪が起きてたかもしれないから」
「それと一緒に寝る?テスカー」
「お姉ちゃんと寝るの?」
フィリアの目つきは怖かった。まるで捕食者の目をしていた。鼻息は荒く犯罪の目だった。近くにオーダーがいたら、速やかに処理されていただろう。
「……なんか嫌な予感するので、お兄ちゃんと寝ます」
「えーーそんな水臭い事言わないでよ」
「部屋に来るだけでもいいからさ」
「ほんとに大丈夫です…」
フィリアは手を伸びて、テスカーの手首を掴んだ。優しく扱うように握りしめている。
『また煙の匂いがした』
「お姉ちゃん…?」
フィリアはテスカーの怯える顔を見て、瞬間的に手を離してしまった。そしてテスカーは手を離されてから全力疾走で2階に登り17番の部屋の扉を開け中に入った。
「あらら…」
「逃げちゃった…私怖かったかな…」
一方ロークは不在で、トールと酒を飲んでいた。
「……お兄ちゃんがいない」
「こ、来ないよね…お姉ちゃん…」
フィリアはしょんぼり気味で5番の部屋に入っている。
「フィリアお姉ちゃんは、危ない人と覚えておこっと」
「それに眠い…」
「もう寝よ…」
ベットを独占するかのように、真ん中に寝た。
テスカーは夢を見る。
一人の女が、ずっと見つめてくる夢だ。
起きるまで、ずっと見てくる。
その女は特徴的なのが、何一つなかった。
誰なのかすらも分からない。
顔は霧で覆われて見えない。
その夢を見ている時は、いつだってなんの感情も湧かない。
虚無に近いだろう。
でも…煙の匂いがする度に、何か分かってくる。
それが何なのかは分からない。
けど…なにか分かってくる気がするんだ。
前は、真っ黒な空間で孤独を感じる場所だった。
だけど煙の匂いがする度に、段々と変わってくるんだ――
【697年1月22日】
「うぅーん。」
「重い……」
テスカーは酔い潰れて寝たロークに下敷きになっていた。テスカーの顔の横にロークの顔がある。
「お兄ちゃん起きて……」
「それと…よだれが肩に着いてる………」
「起きろよお兄ちゃん!」
ロークをしばいた。全く起きない。
「はぁ…」
「起きろよお兄ちゃんっ」
「……昨日お姉ちゃんに襲われた」
ピクッ
「なんだとっ!!!!!」
「あのクソ女殺す…」
気づいたらロークは、殺傷力の高い短剣を握っていた。酔い潰れて寝ていた人と思えないほどに元気よく起きたのだ。彼にとって殺意は動力にすぎない。
「嘘だよお兄ちゃん」
「それと早くどいて」
「あ…ごめん。」
ロークは直ぐにどいた。
「それと昨日はどうだった?」
「俺が不在の旅は」
「楽しかったよ!」
「食べ歩きして、いっぱい食べた!」
(あいつ今、所持金とか少ないだろうな…)
「いっぱい食べさせてもらえて良かったな!」
「それと、そのネックレスなんだ…」
「凄く高そうに見えるが…」
「あ、これ?」
「お姉ちゃんがプレゼントしてくれたの」
「結構高かったんだって」
58ゴールドもした代物だ。
「それは良かったなぁ」
「ずっと付けるのかそれ?」
「付けるよ!」
(やっぱあの女殺すか……)
嫉妬なのか分からないが、朝っぱらからイライラしているロークと、さっきまでの夢を忘れたテスカーは下に降りてフィリアを起こした。
「ちょっともう…」
「レディの部屋に勝手に入ってくるのは、どういうつもっ…」
「あ…テスカー」
「昨日はごめんなさいね…」
(!?!?)
(昨日はごめんなさいね?)
(何があったんだ昨日…)
「いいよ!」
「テスカー…昨日は何があったんだ」
「多分、フィリアお姉ちゃんが僕の――」
「あーぁぁ!ちょっとねっ…道歩いてる時に、転ばしちゃって…」
「僕、転んだっけ?」
慌てて言い訳したフィリアは墓穴を掘った。ロークは鋭い視線で、フィリアを睨む。ロークは懐に手を入れて、いつでも殺せる姿勢に入った。
「フィリア…テスカーを傷つける事を次したら…」
「何があっても殺す…」
「ごめんなさい…」
「もうしません…」
「気をつけます…」
「気をつけるじゃないだろ」
「なにがあってもテスカーを不安にさせるな」
「はい…」
「その通りです…」
「お兄ちゃん僕は、許してるからいいよ」
「許しているのなら…分かった」
戦闘態勢を崩したロークは宿の受付に行き、鍵を渡した。
「楽しく観光できたか?テスカー」
「楽しかったよ!」
「今から旅に出るぞ」
「次の目的地は食卓の国に行こうか」
「分かった!」
「食卓の国ね…」
3人は平等の国から出た。
昨日――
【697年1月21日】
[平等の国・宮殿]
火傷の王は、一人の男と話している。
「そうか…」
「仮面の王が、外に出たと」
「そうです。王様」
「この事は、旗の皆に言ってはないよな」
「いいえ…まだ公言していません。」
「よろしい…この事は、秘密にしてくれ」
「…なぜ…ですか?」
「それは――」
「分かったな」
「…王様…いえ…」
「エルウィン王よ」
「貴方は…貴方様は…それでいいんですか…」
「…………」
「ごめんなさい」
「王の選択に対して口を挟み、申し訳ありません。」
「…トールにとって今はどう思う」
「……私にとって今は――」
火傷の王は、待ち侘びている…………救世主を――
最後まで読んでくれてありがとう!
「用語紹介」
オーダーブロン(純白の処刑人)
国ができ初めて暗殺が横行している時に誕生した。
かつて王を護るために存在する影の人達だった。だが、平等の国ができ、国として公認されてから、エルウィン王は、オーダーブロンを公開した。
11人のエリート部隊で構成されており、どれも二つ名を持っている人よりも強い。一つの国に11人配置されている。それぞれの国に法の違いがあり、処刑に触れる犯罪を犯せば、速やかに処理される。
平等の国、食卓の国、安眠の国に存在する。
平等の国だけ、灰人もなれる。
なぜ黒服と言われるのか、それは単純に黒一色だからだ。
なぜ黒い服を着ているのか、それは罪人の血を浴びれば、罪人の業を背負うと同義であると定義されたからだ。なので血を浴びても分かりにくい黒の服が採用されている。
武器も黒色で、伝説の鍛治職人によって作られた武器。
見た目に反した軽量差や、重量も自在で、遺物並みの絶対的な耐久度を誇る。
オーダーの武器は、特注品で、その人に合う武器を作られる。加入して直ぐにオーダーの武器を貰えるが、一体だれが、その人の特徴を知って作られるのだろうか。まるで…全てを見透しているようだ。




