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煙の民ヨハネ  作者: 牛タン
第一章 旅人の始まり
8/8

第八話 貴方を知っている。貴方は忘れている。


宿から少し遠いが、平等の国を案内程度で歩き出す。


「フィリアお姉ちゃん」


「!?!?」

「もう一回言って…」


「?フィリアお姉ちゃん」


キャァァァァ

(お兄ちゃん呼び……)

「お姉ちゃん呼びされるのいいかも…」


「え?」


「なんでもない。なんでもない。」

えへへ


お姉ちゃん呼びで照れてるフィリアは新鮮な感じがする


「今からどこ行くの?」


「えーとね」

「今から食べ歩きでもする?」


「食べ歩き?」

「食べ歩きって…食べて歩くこと?」

「なにそれー面白くなさそう…」


「食べ歩きも知らないの?!」

「あ…そっか」

「ごめんね…」

「それと、私の奢りだから感謝しなさいよね」


「買ってくれるの?」


「ええそうよ」


「お姉ちゃんありがとう!」


(あ…やばい…調子狂う……)

ブフォ


フィリアは、ロークの手を握り連れ回す。甘い果実やらフライドチキンなどなど…色々食べた。二人は食欲旺盛で、特にテスカーは限界を知らない胃袋だった。


(この子ったら…手握られて嫌がりもしない…….…)

(いけないいけない。)

「その小さな体で、よく食べれるね」

「もうお腹いっぱいでしょ?」


「うーん…」

「まだかも?」


「えぇ!?」

「あんなに食べたのにぃ?」

「………でも確かに…お腹とか何一つ膨らんでない…」


「まだ食べていい?」


「ちょっと…お財布に相談だよそれは…」


「えぇー分かったー」


(いったい胃袋どうなってるのよ…)

「いつも、どのくらい食べてるの?」


「いつもはー、出された分だけ食べてる」


「その出された分が、どのくらいなのか分からないのよ」


「えっとね…このぐらい」


テスカーは、手と腕を使って大きさを現す。だが、その大きさは、さっきまで食べた量と、比較的に極小だった。


(???)

「???」


一般的な、平均の量だった。


「いつもそのぐらい?」

「満足できてるの?」

「今日あんなにも食べてたのに???」


「え、うん。」

「くうふく?とか分からないんだ」


「空腹になったことないの!?」

「なにそれ、すご!」

(あんだけ食べて何もないとか絶対嘘でしょ…)

(もしかして、この子…特異体質?)


「テスカーはすごいなー」

「お姉ちゃんは、もう8割は来てるよ」


「ふふーん。凄いでしょ」

「僕は、まだまだ0割だよ」


(後で、ほんとかどうかロークに全て聞いてみよ……)


食べ歩きの中で、信じられない話と信じられない事を目にしたフィリアは、疑いつつも、テスカーが美味しく食べる顔を眺めていた。なぜだか分からないが、フィリアはテスカーに純銀のネックレスを買った。そしてフィリアの所持金は、半分も消費した。



〈フィリアの所持金〉

201ゴールド→140ゴールド

4シルバー→37シルバー



帰りの道中にオーダーブロン(純白の処刑人)が、道のど真ん中で立っていた。


「あら…黒服がいる」

「ねぇ見てテスカー、ラッキーよ」

「あの人はね、この国の平和と秩序を保つ人よ」


「あの全身真っ黒な人?」


その見た目は、全て黒一色で統一された人だった。唯一の色があるとしたら顔の部分の肌色だろう。黒色の武器を手に持っていた。それはツヴァイハンダーだった。


「えーあの不審者みたいなのが国を守ってる人なの?」


「失礼な言い方ね」

「そう、あの人が国の人達を守ってるのよ」

「ささ、もう戻りましょ」

(なんかあったのね….)


フィリアは、早歩きで歩き出し、テスカーを引っ張る。そのうち宿に着いた。


「あの人見てから焦ってたけど何かあったの?」


「いや…ちょっと嫌な予感がしてね」

「もしかしたら近くで犯罪が起きてたかもしれないから」

「それと一緒に寝る?テスカー」


「お姉ちゃんと寝るの?」


フィリアの目つきは怖かった。まるで捕食者の目をしていた。鼻息は荒く犯罪の目だった。近くにオーダーがいたら、速やかに処理されていただろう。


「……なんか嫌な予感するので、お兄ちゃんと寝ます」


「えーーそんな水臭い事言わないでよ」

「部屋に来るだけでもいいからさ」


「ほんとに大丈夫です…」


フィリアは手を伸びて、テスカーの手首を掴んだ。優しく扱うように握りしめている。



『また煙の匂いがした』



「お姉ちゃん…?」


フィリアはテスカーの怯える顔を見て、瞬間的に手を離してしまった。そしてテスカーは手を離されてから全力疾走で2階に登り17番の部屋の扉を開け中に入った。


「あらら…」

「逃げちゃった…私怖かったかな…」


一方ロークは不在で、トールと酒を飲んでいた。


「……お兄ちゃんがいない」

「こ、来ないよね…お姉ちゃん…」


フィリアはしょんぼり気味で5番の部屋に入っている。


「フィリアお姉ちゃんは、危ない人と覚えておこっと」

「それに眠い…」

「もう寝よ…」


ベットを独占するかのように、真ん中に寝た。



テスカーは夢を見る。

一人の女が、ずっと見つめてくる夢だ。

起きるまで、ずっと見てくる。

その女は特徴的なのが、何一つなかった。

誰なのかすらも分からない。

顔は霧で覆われて見えない。

その夢を見ている時は、いつだってなんの感情も湧かない。

虚無に近いだろう。

でも…煙の匂いがする度に、何か分かってくる。

それが何なのかは分からない。

けど…なにか分かってくる気がするんだ。

前は、真っ黒な空間で孤独を感じる場所だった。

だけど煙の匂いがする度に、段々と変わってくるんだ――



【697年1月22日】


「うぅーん。」

「重い……」


テスカーは酔い潰れて寝たロークに下敷きになっていた。テスカーの顔の横にロークの顔がある。


「お兄ちゃん起きて……」

「それと…よだれが肩に着いてる………」

「起きろよお兄ちゃん!」


ロークをしばいた。全く起きない。


「はぁ…」

「起きろよお兄ちゃんっ」

「……昨日お姉ちゃんに襲われた」


ピクッ

「なんだとっ!!!!!」

「あのクソ女殺す…」


気づいたらロークは、殺傷力の高い短剣を握っていた。酔い潰れて寝ていた人と思えないほどに元気よく起きたのだ。彼にとって殺意は動力にすぎない。


「嘘だよお兄ちゃん」

「それと早くどいて」


「あ…ごめん。」


ロークは直ぐにどいた。


「それと昨日はどうだった?」

「俺が不在の旅は」


「楽しかったよ!」

「食べ歩きして、いっぱい食べた!」


(あいつ今、所持金とか少ないだろうな…)

「いっぱい食べさせてもらえて良かったな!」

「それと、そのネックレスなんだ…」

「凄く高そうに見えるが…」


「あ、これ?」

「お姉ちゃんがプレゼントしてくれたの」

「結構高かったんだって」


58ゴールドもした代物だ。


「それは良かったなぁ」

「ずっと付けるのかそれ?」


「付けるよ!」


(やっぱあの女殺すか……)



嫉妬なのか分からないが、朝っぱらからイライラしているロークと、さっきまでの夢を忘れたテスカーは下に降りてフィリアを起こした。


「ちょっともう…」

「レディの部屋に勝手に入ってくるのは、どういうつもっ…」

「あ…テスカー」

「昨日はごめんなさいね…」


(!?!?)

(昨日はごめんなさいね?)

(何があったんだ昨日…)


「いいよ!」


「テスカー…昨日は何があったんだ」


「多分、フィリアお姉ちゃんが僕の――」


「あーぁぁ!ちょっとねっ…道歩いてる時に、転ばしちゃって…」


「僕、転んだっけ?」


慌てて言い訳したフィリアは墓穴を掘った。ロークは鋭い視線で、フィリアを睨む。ロークは懐に手を入れて、いつでも殺せる姿勢に入った。


「フィリア…テスカーを傷つける事を次したら…」

「何があっても殺す…」


「ごめんなさい…」

「もうしません…」

「気をつけます…」


「気をつけるじゃないだろ」

「なにがあってもテスカーを不安にさせるな」


「はい…」

「その通りです…」


「お兄ちゃん僕は、許してるからいいよ」


「許しているのなら…分かった」


戦闘態勢を崩したロークは宿の受付に行き、鍵を渡した。


「楽しく観光できたか?テスカー」


「楽しかったよ!」


「今から旅に出るぞ」

「次の目的地は食卓の国に行こうか」


「分かった!」


「食卓の国ね…」



3人は平等の国から出た。



昨日――

【697年1月21日】

[平等の国・宮殿]

火傷の王は、一人の男と話している。



「そうか…」

「仮面の王が、外に出たと」


「そうです。王様」


「この事は、旗の皆に言ってはないよな」


「いいえ…まだ公言していません。」


「よろしい…この事は、秘密にしてくれ」


「…なぜ…ですか?」


「それは――」




「分かったな」


「…王様…いえ…」

「エルウィン王よ」

「貴方は…貴方様は…それでいいんですか…」


「…………」


「ごめんなさい」

「王の選択に対して口を挟み、申し訳ありません。」


「…トールにとって今はどう思う」


「……私にとって今は――」



火傷の王は、待ち侘びている…………救世主を――

最後まで読んでくれてありがとう!


「用語紹介」

オーダーブロン(純白の処刑人)

国ができ初めて暗殺が横行している時に誕生した。

かつて王を護るために存在する影の人達だった。だが、平等の国ができ、国として公認されてから、エルウィン王は、オーダーブロンを公開した。

11人のエリート部隊で構成されており、どれも二つ名を持っている人よりも強い。一つの国に11人配置されている。それぞれの国に法の違いがあり、処刑に触れる犯罪を犯せば、速やかに処理される。

平等の国、食卓の国、安眠の国に存在する。

平等の国だけ、灰人もなれる。

なぜ黒服と言われるのか、それは単純に黒一色だからだ。

なぜ黒い服を着ているのか、それは罪人の血を浴びれば、罪人の業を背負うと同義であると定義されたからだ。なので血を浴びても分かりにくい黒の服が採用されている。

武器も黒色で、伝説の鍛治職人によって作られた武器。

見た目に反した軽量差や、重量も自在で、遺物並みの絶対的な耐久度を誇る。

オーダーの武器は、特注品で、その人に合う武器を作られる。加入して直ぐにオーダーの武器を貰えるが、一体だれが、その人の特徴を知って作られるのだろうか。まるで…全てを見透しているようだ。

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