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自作小説倶楽部 第15冊/2017年下半期(第85-90集)  作者: 自作小説倶楽部
第89集(2017年11月)/「南瓜」&「ノート」
29/38

04 E.Grey 著  ノート『黒谷御前4 公設秘書・少佐』

   //粗筋//

.

 衆議院議員島本代議士の公設秘書佐伯祐は、長野県にある選挙地盤を固めるため、定期的に彼の地の選挙対策事務所を訪れる。そして、空き時間をみては、遠距離恋愛をしている婚約者・三輪明菜とデートを楽しむのだった。今回の長野入りは、センセイの縁者である黒谷夏帆が、愛車スバル360に佐伯を乗せての登場だ。幼馴染の不穏な動きに明菜は心穏やかではない。

挿絵(By みてみん)

足成/五十嵐優美さん/©工藤隆蔵さん




    04 ノート

.

 部屋には、布団に仰向けに寝かされた黒岩御前の遺体があり、周りに、家政婦長の菊乃さん、新米の楓の二人が呼びかけをしていたのだが応じない。亡くなっているようだった。さらに、長女の朝比・次女の夕比、それから孫娘の夏帆が、駆けつけ、布団の周りを囲んで、故人の名を呼んでいたのだが、声を返すことはなかった。

 黒岩御前は脳震盪を起こして、意識不明の重体になった。私・明菜の腰にむしゃぶりついたとき、叩き落としてやったら、エロ爺は轟沈したわけだが、そのまま無視して部屋を出たのがいけなかった。

「明菜、アンタ、大変なことをしてくれたわね」

 そう怒鳴ったのは、幼馴染の夏帆だ。

 しかしながらだ。禿げた御前の頭を見ていた佐伯が言った。

「左耳から僅かに血が出ている」

 佐伯は吹矢の矢を見つけたのだ。このため、私が張り倒したことによって、御前が死んだという嫌疑は晴れた。

 さて、黒岩御前の枕元には帳面が置かれてあった。頁を開いてみると、漢詩やら俳句やらが書いてあったのだが、途中に、遺産相続に関するメモがあった。全財産を長男の娘・夏帆に譲ると書いてある頁があった。エンディングノートと言って法的な効力はない。いやしかし、正式な遺言状の下書きかもしれないではないか。

 佐伯が家政婦長の菊乃さんに聞いた。

「菊乃さん、弁護士とかの出入りはありますか?」

「弁護士さん、ああ、出入りの弁護士さん、いらっしゃいますよ」

 そのあたりの事情は警察官の真田さんが電話連絡した。

 先方からは、『黒岩御前の遺言状は確かに預かっている』という回答があった。

 真田さんが言った。

「全財産を夏帆に譲る。……犯人はそのノートを見たというわけですな。遺言状こそ、公開されていないけれども、ノートに書かれてある以上、遺言状にどう書かれているかは明らかだ。このノートを見て、不満を持った御身内の一人が手を下した」

一同は、夏帆の叔母である朝比・夕比姉妹を見遣った。

「わ、私達じゃありませんよ。脱衣場にいたじゃないですか」

「叔母様達、推理小説にあるようなトリックを使ったじゃありませんこと……」

「夏帆ちゃんまで何ってことを言うの。実の娘である私達が実の父親を手に欠けるわけないじゃない」

 佐伯が部屋を這うようにして部屋を見遣りながら、押し入れが僅かに開いていて、その下に、時限式で吹き矢を飛ばす装置を発見した。装置には殺虫剤スプレーがセットしてあり、そのガス噴射によって吹き矢を飛ばす仕掛けになっており、横になった老人の耳のあたりに毒針が刺さるように向けられていたのだった。

     つづく

  //登場人物//

.

【主要登場人物】

佐伯祐(さえき・ゆう)……身長180センチ、黒縁眼鏡をかけた、黒スーツの男。東京に住む長野県を選挙地盤にしている国会議員・島村センセイの公設秘書で、明晰な頭脳を買われ、公務のかたわら、警察に協力して幾多の事件を解決する。『少佐』と仇名されている。

三輪明菜(みわ・あきな)……無表情だったが、恋に目覚めて表情の特訓中。眼鏡美人。佐伯の婚約者。長野県月ノ輪村役場職員。事件では佐伯のサポート役で、眼鏡美人である。

●島村代議士……佐伯の上司。センセイ。古株の衆議院議員である。

●真田巡査部長……村の駐在。

.

【事件関係者】

●黒谷御前……地方名家で島村センセイの縁者。

●黒谷源一郎……黒谷御前の一人息子で夏帆の父。先の大戦で戦死した。

●黒谷朝比……黒谷御前の長女。源一郎の妹。

●黒谷夕比……黒谷御前の次女。源一郎の妹。

●黒谷夏帆……黒谷御前の孫娘で女子大生。現在は東京在住。明菜の幼馴染にしてライバル。

●菊乃……黒谷家の家政婦。

●楓……菊乃の養女。

*全10話程度の予定です。

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