03 柳橋美湖 著 南瓜『北ノ町の物語』
【あらすじ】
東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていた。ところが、実は祖父がいた。手紙を書くと、お爺様の顧問弁護士・瀬名さんが訪ねてきて、北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。
お爺様の住む北ノ町。夜行列車でゆくそこは不思議な世界で、行くたびに催される一風変わったイベントが……。
最初は怖い感じだったのだけれども実は孫娘デレの素敵なお爺様。そして年上で魅力をもった弁護士の瀬名さんと、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩さん、二人から好意を寄せられ心揺れる乙女なクロエ。さらには魔界の貴紳・白鳥さんまで花婿に立候補してきた。
このころ、お爺様の取引先であるカラス画廊のマダムに気に入られ、秘書に転職。
――そんなオムニバス・シリーズ。
足成/© 工藤隆蔵さん
42 南瓜
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クロエです。神隠しの少女救出作戦で、軽便鉄道車に乗った私達は、鉄道連絡船で、大海原に浮かぶ氷城に上陸。雪の女王様からお土産の箱を頂きました。そして船が出航した途端、南瓜の仮面をつけた北洋海賊が襲って来たのです。海賊達がデッキに上がって来たとき、お爺様があの小箱の箱を開けて、私達にジャンプするようにと声をかけたのでした。
♢
お爺様の合図と同時に私達はジャンプしました。
雪の女王がくれた小箱の蓋が開けられデッキに転がると、ドライアイスの煙が、ワッと噴きだし、海賊達の足元を瞬時に凍らせました。
「なーるほど、瀬名さん、これなら海賊を一網打尽」
「いや、浩君、問題は、跳び上がった我々も、いずれは床に降りなければならぬということだ」
従兄の浩さんと、瀬名さんが、話をすると、離れたところでワイングラスを傾けていた白鳥さんが、他人事のように言います。そういう白鳥さんはヴァンパイアなので、体重がないのか、ベンチに座っているようで微妙に、宙に浮いているのです。
「そのあたり、御大は何も考えていなかったようですね」
(そんな……)
船内放送で流されていた、「黒馬騎兵中隊」のマーチが一曲終わるころ、跳んでいた、浩さん、瀬名さん、お爺様、マダム、そして私が着地しました。
南瓜仮面の海賊達はすでに足元がギンギンに凍って動けなくなっています。ああ、凍傷になっているかも。痛そう。けれど、不思議と私達は凍らずに済みました。
(この氷は敵味方の識別能力があるのかしら)
キャビンにお客を誘導していた、片手に防弾盾を持った、脚のある人魚族アテンダント・由香さんが、もう片方の肩に担いだ輪にした紐でクルクルと器用に海賊達を縛り上げて行き、デッキの欄干に結わえてしましました。
「次の港に着いたら、港湾警察に引き渡さないと」
南瓜海賊の頭目はお爺様のほうを見て叫んでいました。
「おのれ、鈴木三郎、今に見ておれ!」
「ふっ、昔、同じことを言って捕縛されたのだったな。お前達は儂に絶対勝てない」
お爺様はそういうと、雪の女王の小箱の蓋を閉めて、ポケットに収めました。
お、お爺様、何だか、悪者みたいな口ぶりですよ。
そういうわけで、デッキの上で、私達を取り囲んだ南瓜海賊は、皆捕まってしまったというわけです。
♢
それでは皆様、また。
by Kuroe
【シリーズ主要登場人物】
●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。
●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。
●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住む。クロエに好意を寄せる。
●鈴木ミドリ/クロエの母で故人。奔放な女性で生前は数々の浮名をあげていたようだ。
●寺崎明/クロエの父。公安庁所属。
●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。クロエに好意を寄せる。
●小母様/お爺様のお屋敷の近くに住む主婦で、ときどき家政婦アルバイトにくる。
●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。
●メフィスト/鈴木浩の電脳執事。
●護法童子/瀬名武史の守護天使。
●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。
●神隠しの少女/昔、行方不明になった一ノ宮神社宮司夫妻の娘らしい。
●由香/ダイヤモンド鉱山〝竜の墓場〟のある大陸へ向かう三本マストの鉄道連絡船アテンダント。脚のある人魚。鬼族の軽便鉄道運転士から異界案内役を引き継ぐ。




