第12話
俺は椛と文と呼ばれる烏天狗?とやらを運び山を登っていた。
途中何度か哨戒天狗に見つかるが血の海に沈めてやった。
まぁ椛は流石に同僚がやられるのはものすごーーっっく不服そうだったが...。
ギリギリ殺してはないぞ?一応...容態の急変はあったかもしれんが...。
「大見得を切った所で勝てるのでしょうか?」
「さぁ?確率は5%未満じゃない?」
「一応0じゃない分マシですね」
「確率っていっても適当だがな...」
ポカンっと間抜けな顔をこちらに向けてくる椛...面白い顔してるぞ?
「ま、勝てない訳じゃねぇんだ」
「そ...そうなんですか?」
「また来たか...半妖よ...しつこい奴よのう...それとあからさまに裏切りよったな...白狼の娘よ」
「裏切り...結構です!負ければ殺され逃げれば殺される!そんな組織に属して何が良いのですか!天魔様は私も殺すおつもりだと聞きました!ならば帰る必要性を感じなかった!それだけのことです!」
「言うじゃねぇか...長は交代だ...覚悟しろ!天魔!」
「貴様こそ!生きて返さぬ!後悔し泣き叫ぶ貴様を!我が食うてやる!」
俺は裾からナイフを取り出す。
「.........覚悟!」
「推して参る!」
その瞬間2人の中央に衝撃波が走る。
なんて強さ...天魔様に挑む覚悟...私とは違う...私はただ怖くて...逆らうこともせず必要あらば人間をさらい...この手を紅く染めてきた...
確かに何故自分達が汚れ仕事をと...愚痴をこぼした時もあった...。
烏天狗達は自由気ままに過ごしているのに対して...私達白狼天狗は哨戒から人さらいから殺し...なぜ...なぜ私達がと...。
でも変わるかもしれない...変えてくれる人が目の前にいるかもしれない...。
その事に私はとても期待してる...。
今も瞳に映る妖力のぶつかり合い。
短い剣と鉄扇がぶつかり合う...。
既にほとんど眼で追うことは難しいほどの高速の斬り合い...。
期待してもいいのでしょうか...?
いえ...します!
応援します!
あの方が勝てるように!
「頑張ってください!」
俺の後ろから声が掛かる。
その声を聞いた瞬間どうしようもなく顔がにやける...。
「殺し合いの最中によう乳繰り合えるもんじゃのう!せめてあの世でゆっくりするがよい!」
そう言って鉄扇が振られるが俺は上に跳ぶ。
「宙に逃げるなど愚の骨頂!終わりよ!」
ふっ...掛かったな!肉を切らせて骨を断つ!
「壊れろ」
俺は喉元に迫った鉄扇を頭を下げてよけその腕を掴む。
能力発動...。
「うむう...」
「...くそ...やられた...」
結果は痛み分け。
俺の左眼は鉄扇で斬られ目が見えない...もうこの目は使えない...完全に潰れた...。
それに対して相手は俺の能力が中途半端に発動したお陰か鉄扇をもつ腕を吹き飛ばした。
そしてナイフを足に2本刺す事に成功した。
「くっ...足に力が入らんのう...対魔の物か...」
「おいおい...左眼を潰しておいてそれはねぇだろう...」
俺は天魔の両足に目を向ける。
右目の能力発動...俺は天魔の両足の上に刀を数十本創造し落とす。
「うぐぅ......っ!貴様...これで我を張り付けたつもりか!」
「実際張り付けたと思ってるんだが...ッッ!?!?」
「ふぐ...がっ!...これでまだ戦えるぞ?」
天魔は自分の両足を刀で断ち片腕で上体を起こす。
するとこちらに向け地面を殴り飛んできた...
「速度を操ったか!」
よけきれない...俺は天魔を腹で止め胸の心臓がある所にナイフを振りおろした。
ザクっぶシュッ!
「く...くはははは!...ゴボッ...どうやら我の負けのようだ...貴様の肉は旨いのう...はぁ...まぁ負けは負けじゃ...貴様の要件...聞き入れよう...かはっ...はぁ...娘っ子を幸せにしてやれ...楽し...かった...ぞ.........姫雪よ...」
うま...て...きて...て...ありがとう......む...こ...よ...。
そう言うと俺の腹から落ち徐々に闇に囲まれ消滅していく。
「まて!天魔!どういうことだ!ゴハッッ...野郎...律儀に俺の腹食いやがって...」
俺の横腹には抉りとった痕があり...そこから夥しい血が溢れ出てくる。
だが戦いが終わっても俺が弱ってるのが分かってるのに誰も襲ってこない...なぜ...。
俺は重力に従い地面に倒れふす...前に誰かに抱えられた。
「大丈夫...ですか?」
「そう見えるなら...眼医者を呼べ......いい医者を紹介...して...やる...」
「ちょっ!アレスさん!アレスさん!」
俺の意識はそこで暗転した。
暗い...痛い...死んだのか...。
気付けば俺は知らない部屋で布団に寝かされていたって.........。
「ここは...っとうお!お前は何してんだ!」
こいつは何がしてぇんだ...毎回毎回。
俺の布団には椛が入り胸の所に顔を埋めて寝ている。
障子の外はまだ暗い...夜だろうか。
と言うより何故俺は天魔を殺した張本人なのに他の天狗に狙われねぇんだ。
みんなアイツ嫌いなのか?いや...そんな都合のいい話はないだろう。
なら何故...。
俺は布団の中で未だ眠る椛を撫でる。
気持ちよさそうに頭を手にすり寄せてくる。
「犬みたいだな...」
そう言えば俺はこいつの刀をばっきばきにしたんだっけか...ばっきばき?壊す?眼!
俺は眼に手をあてる...包帯が巻かれているが...未だに鈍い痛みが続いている。
能力を使おうとしても全く発動しない。
右眼の方は発動した。
俺は鞘に収められた青い鞘と白い柄の刀を抜く。
キィーーー......ン...。
綺麗な音をたてて暗い部屋の中で弱い光を拾って輝く刀。
小波...この刀に合う名前を考えたらその名前が出てきた。
長さは110cmほど...普通の刀より長い。
だが青い鞘に描かれた金の波のような線...月光に輝く蒼く見える刃...。
恐らくこれ程までに見事な刃を見たのは初めてだ。
俺はこの刀に自分の右眼の能力のうちの一つ...発生の能力を付加した。
左眼の能力は恐らくもうないだろう。
俺の能力は体に宿るものではなく眼に宿るものだからな。
刀を振り弱い風を発生させる。
風が起こり揺れる障子。
「成功だな...妖刀小波」
「う...ん...」
すると俺の布団の中でモゾモゾと椛が動いた後起き上がってくる。
「あ!アレスさん!起きたんですね!良かったです!その~...傷口とかは大丈夫でしょうか?あと...その刀は?」
嬉しそうな顔したり心配そうな顔したり不思議そうな顔したり.....よくコロコロ表情を変えるな...まぁ...可愛いといえば...可愛いが...
はっっ!思考が変な方に...。
「あぁ...多少痛むが問題ない...まぁ左眼はを無くしたのは痛いが...能力が無くなったのはマイナスではないからいい」
「そうですか!よかったです!治療したの私ですよ!」
そう言って目を輝かせ尻尾を横に激しくふる椛...もう犬でいいか?
「あぁ...ありがとう...でこの刀なんだが」
俺は抜き味の刀を鞘に仕舞い椛に差し出す。
「俺が作った刀だ」
能力でな。あぁ普通に打ってやる事も出来るが...これ程いい刀が出てくると思わなかったからな...。
「綺麗な刀ですね...何と言うか...不思議な力を感じます...」
ポーっと刀を見つめる椛...。
俺が刀を右に揺らすと視線を右にして左に揺らすと左にと視線で追ってくる...欲しいのだろうか?まぁもとよりそのつもりだが。
「妖刀小波...俺が付けた名前だ」
ちなみに刀身に刀の銘が掘られている。
「椛...お前の刀は俺が折っちまったからな...まぁプレゼントだ」
「ぷれぜんと?」
あぁ...そうか...国が違うんだったか。
「好きな人や親しい人に上げる餞別のようなものだ」
すると暗い部屋なのに分かるほどに顔を赤くする椛...俺なんか言ったか?
「す...好きな人...親しい人...うぅ...あぅ...」
「いらねぇのか?」
「い!いります!」
俺は椛に刀を手渡す。
それを抱きしめてこちらを見つめる椛ってかなんで涙目なんだよ。
「か...返してくれなんていっても返しませんよ!!いいんですか?返せと言うなら...」
「言うわけないだろう?それはお前のために作った刀だ...大事にしてやれよ」
「あ!当たり前です!なんて言ったってアレスさんからの贈り物てすから!」
凄く尻尾振って喜んでいるんだが...と言うか...耳までピクピク動いている...そんなに嬉しいもんなんだろうか?
「その刀には俺の右眼の能力の欠片...発生を司る能力を付加させてあるからな...使い方は教えてやる」
そう言うと刀を見て目を丸く...ほんとにまぁーるくする。
「じゃ...じゃあ...いつでもアレスさんと居れるわけですね」
「すまんなんて言った?」
聞き取れなかった。
何を言ったんだ?
「なん...なんでもないです!絶対大切にします!」
そう言って刀ごと俺に突っ込んできた。
ってか柄が俺の鳩尾に...。
き...傷が...。
だがそんなこともお構いなしに抱きしめてくる椛。
俺は頭を撫でながら表に気を配る。
すると障子が開き俺が倒した烏天狗が入ってきた。
「!?あ...文様!こ...これは...その...」
「椛...ちょっと席を離れてくれない?」
そう言って座布団の上に座る烏天狗。
明らかに目の色が変わる椛。
「文様だからって上げませんよ...」
今にも抜刀体制に入る椛だが俺が手で制した
「どうせあの天魔のことだろう?椛...ちょっと席を外してくれ」
「わかりました......」
不服そうに部屋を出ていく椛。
それを確認して烏天狗は俺に話をふる。
「さて話を勧めましょう......と言っても何から話せばいいのでしょうか...」
俺はその後の話を聞き驚きに口が閉まらなかった。




