第11話
「ここ...は...どこ...だ」
俺は気付けば知らない所に倒れていた。
記憶を遡ればどうやら気を失ったあと山から転がり落ちたようだ。
動こうとすると俺の腹の上に何かが乗っているのか重さがあった。
「うわっっと!お前かよ...」
俺の腹には気絶したままの白狼天狗が乗っていた。
俺はゆっくりその体を俺から下ろし執事のジャケットを脱ぎ体にかけてやる。
「ってここはどこだ?まだ妖怪の山にいるのは確かなんだろうが...」
この状態で登ればどうせまた落とされるのが関の山だ。
「ん...ここ...は」
俺があれこれ考えてると天狗が目を覚ましたみたいだ。
「俺も知らん...と言うかここはお前さんらの領域だろう?」
「う...はっ!貴様!うぐ......」
天狗は腕を抑えてうめいた...と言うか骨折れてるのによく腕の力で上体を起こせたもんだ
...。
「大丈夫か?一応折れた部分には添え木をしてあるが...あと腕に刺さっていた破片も抜いておいたぞ」
すると治療してある腕を見つめ一言ボソッと
「ありがとう」
と告げてきた。
「いや...いい...今回は済まない...俺のせいでお前まで殺されかけた...」
俺はそう言って刀を創造し少女に投げる。
「俺を殺して手柄にすればお前はあの連中の中に戻れる...首でも持っていけばすぐにでも戻れるさ」
俺はそう言って目を瞑る。
「無理...ですよ...私に貴方を斬るなんて...」
「何故だ...そうすればお前は群れに帰れるんだぞ...」
「あのお方は...天魔様は...冷酷で残酷です...見切りをつけた者にはもう...」
そう言って徐々に瞳が潤っていく。
つまり泣きそう状態になっている。
「いやまて!泣く必要はないと思う!絶対俺が戻れるようにしてやる!だから!な?泣くな!いや...泣いてもいいんたが...いや!俺がどうすれば...と...とにかくだな!」
泣かれたらどうすりゃいいか分かんねぇんだ...と言葉を繋げようとしたとき相手が笑い始めた。
「ふふふ...優しいんですね...」
「優しくなんかないさ...ただ人一倍...人付き合いが苦手なだけだ」
俺はそう告げてそろそろ暗くなっていく空を見つめ周りの木を集める。
「でも...敵だった私をここまで気遣ってくれるなんて...嬉しいです」
「知らん...とにかく明日はもう一度あの女豹天狗野郎に挑んで今度こそぶっ飛ばしてやる...」
「無理ですよ...天魔様は桁違いに強いんですよ?ふうっと息を吹きかけるだけで相手は吹き飛んでいくんですから...」
つまり風速を操った訳か...。
拳速も操れる...瞳は使えんな...。
「どうしたものか...」
地味な能力だが厄介だ...。
その気になれば嵐なんてお手の物ってか...。
俺も反則的な能力を持ってはいるものの俺の能力の絶対条件は相手を見つめ焦点を合わせること。
速い速度で動き回る相手には分が悪い。
地、空共に相手のフィールドじゃあ戦える訳がない...。
俺はそこまで考えてやめた。
勝てるイメージがここまで浮かばない相手は初めてだ。
この能力を幽香が持っていたらと思うとぞっとする。
骨を砕き肉を粉砕する一撃をあのスピードで放たれたら溜まったもんじゃない。
「どうしたのですか?」
急に声をかけられ俺は天狗を見る。
「いや...勝つイメージが全く浮かばねぇと思ってな...」
俺はそれだけ伝えると空を見上げた。
先ほど日が沈み暗い中に星が見え始める。
「大層な能力を持っていてもやはり相性ってのは大事だな...」
「貴方の能力って何ですか??」
「俺の能力は瞳を通して破壊と消失を司る能力と創造と発生を司る能力だ」
「うぇ...なんて反則的な...でも瞳を通すのは私と似ている能力ですね」
ん?どういうことだ??
「どういうことだ?って顔してますね...私の能力は千里先まで見通す程度の能力です」
「そうか...」
千里先まで見通す程度の能力ねぇ...。
だめだ...参考にならね。
「だーみだ...勝てるイメージか全く浮かばねぇ...どうにかならねぇか...」
徐々に冷えてくる。
既に寒いと感じ震えそうになるくらい冷えている。
「大丈夫か?」
俺は焚き火に当たりながらもガタガタ震えている天狗に目を遣る。
「だ...大丈夫です...すいません...寒いですよね...貴方のジャケットを返します」
そう言って俺にジャケットを差し出す天狗。
「俺は貴方って名前じゃねぇ...アレスだ」
「そうですか...じゃアレスさん私のことは椛と呼んでください..」
「あ...あぁ分かったが寒くないのか?」
「さ...寒くないです」
そう言ってガチガチ震えているのはどこの誰だ...。
俺は黙って椛の後ろに移動しジャケットを膝にかけてやる...そして椛の背中に自分の背中を合わせる。
「それなら多少は暖かいだろう」
俺はそう言って腕を組み目を瞑る。
後ろで何か言っている用だが俺の意識は徐々に夢の中へと旅立っていった。
チュンチュン......チュン!
「朝...か...」
にしてはやけに背中があったかすぎる。
「ってうぉい!てめぇはなにしてやがんだ!」
俺はどうやら地面に寝転んでいたようだが...何故か椛が俺の背中に抱きついて眠っていた...いやまぢでなぜ?
いや...やけにあったかいのはいいんだが...いや...まぁ天国極楽安楽浄土って何考えとんじゃ!
まぁやけに背中の上の方が一段と暖かい...意外と...って言わせねぇよ!
ダメだ!考えがまとまらん!
思考があっちの...ダメな方に...。
でももうちょっと感じていたい...って!
だぁぁぁぁかぁぁぁら!俺は何がしたいんだぁぁ!
もう起こす!起こして終わらせる!
この超天国......じゃなくて!地獄を!
「起きろ!起きろ!いつまで抱きついてんだっつーの!」
俺はそう言って顔をのぞき込んだ。
「おい!」
だがここで大声を出したのがいけなかった。
「ひゃわっは...はい!何ですムグッッ」
「おい!ちょとまっフムゥッ」
俺の思考はここで停止した。
いや...してないんだが...なんかいつもより冴えてるんだが......かんっっぜんに失敗した!
現在お互い目を丸くして唇を重ねている。
しかも今も数秒数秒が過ぎていくが未だに離れていない。
しかも何故かお互い目を合わせて視線も外していない...。
いやもうこれ何?ナニコレ珍〇景...いや...すまん...なにか電波を受信したようだ。
ってもうこれいい加減にしない?
これ俺の思考なんだが焦ってるの分かる?分かるよね?わかってもらわねば困るよ?
って終わらせたいんだが体が硬直して...動かん...案外厳しい体勢なんだけど...。
もう思考がグッチャグチャなんだけど...見ての通りさ...いや...誰にこれ話してんだろう?いやまただし...。
口調まで変わってるよこれ...多分素だ...。
これが俺の素だな...。
うむ...久しぶりに自覚した...。
よし...そろそろ落ち着いてきたな...。
俺はゆっくり身をひこうと思い動こうと思った。
がまさか腰に手を回されるとは考えてなかった。
恐らく椛はっておいいいいーー!!
目を閉じてますよ!完全アウト!顔真っ赤...俺も真っ赤...。
って言うか舌が入ってきてるんだが...はぁ...
俺は思わず舌でこたえてしまった。
一瞬ビクッとなってびっくりしたようだがすぐに腕に力を込め抱きしめてくる。
もうナニコレ...。
あ...ヤヴァイ...こんなとこで理性崩壊させてたまるか!!
「「はぁ...はぁ...」」
互いの口から口へと糸が繋がっている。
やはりお互い顔真っ赤...いやだって俺の顔めっちゃ暑いんだもん。
ダメだ...いつもの口調が素に戻っちまう。
もうごっちゃだよこれ...。
「す...すまない...」
「ふぇ...あ...いえ!こちらこそ!」
アタフタする姿が可愛いと思ってしまった。
「そ...そろそろ起きていいか?」
「あ...はい!すいません!」
そう言ってお互い体を起こす。
「すまないな...」
俺は立ち上がり手を差し延べる。
どうやらもう立ち上がれるようだ。
なんつー回復力...空気中に治療薬が入ってる訳じゃねぇんだぞ。
「ありごとうございます...」
俺はジャケットを受け取り内ポケットから小さな包を取り出す。
包の中から小さな粒を3つ取り出し口に運ぶ。
完全に苦虫を噛み潰したような顔になってるだろうな...。
「一体何を食べたんですか?」
「これか?携帯食だ、3つで1日に必要な栄養分を全て取ることができる」
その代わり滅茶苦茶苦いがな...。
俺が紅魔館のキッチンで作った...疲れも吹っ飛ぶ最高の物だが......どうにも苦いのは変えられなかった。
「食うか?」
俺が3つ差し出すとそれを受け取りその流れで口に放り込んだ。
がすぐに顔をしかめる。
「すまん...栄養がある分味がな...」
「い...いえ...ゴホッゴホッ...」
俺は背後に気配を感じナイフを数本投げる。
「あら...椛こんな所で何してるの?」
はい誰?ってかまた女かよ...。もう懲りた。
「文様...貴方こそ私を始末しにでも来ましたか?」
何こいつら知り合い?ってか仲わりぃの?
「この辺の空気が汚れてるから来てみれば...そりゃあんたがいりゃ汚くもなるわよ」
「......」
無言で俺の横に座り込む椛...。
なんでこんなに天狗族って...
俺を怒らせるのが好きなのだろう?
「...おいそこの鳥串野郎...」
「何よ?あんた...はは〜ん...さては天魔様にボコボコにされて無様に負けた半妖?半妖如きが何の用よ?」
「今度はお前を天魔の元に引き摺っていってやる」
俺はそれだけ言うと今までに無いくらい落ち着きそして目を閉じる。
「あの...アレスさん...文様は天狗族でも結構強い方なのですよ?戦わない方が...」
俺はそれを聞いて顔がにやける。
「なぁに...今の俺なら余裕も余裕...超楽勝!」
急に俺の口調が変わりびっくりしたのか俺の顔をうかがってくる。
「にひっ...全て壊してもいいよねー!」
俺の狂気モード..全てを破壊したくなる衝動を抑えない状態なだけだけど...この場合...俺の能力は左眼だけではなくなる。
左半身全てが武器だ!
俺は左腕を振り上げ目の前の天狗に突撃する
「そんな一直線な攻撃あたるわけ...!?」
俺は既に先手をうってるんだよ...。
右手で斬糸を操り既に網状にして逃がさないようにしてあるんだよ!
なんの為に狂気モードになったんだか...弱すぎる。
どうせ負けないって過信しすぎたんだろーがな...。
俺は首に手刀を落とし気絶させる。
「ついて来るならついて来い...今日から天魔は別の奴になるからな」
そう言って俺は山を登る。
どうやらついてくるようだな。




