信用できませんね
第3話です。よろしくお願いします
「というわけで、片桐さんとの取引に応じることとなりました」
「そっか.....!よかった.....!」
晴馬の報告に安堵する片桐。それに対しても違和感を感じる。ただの一般人が首を突っ込み、自分を危険な場所へといざなう取引に安堵さえしているからだ。
「では、本日の夜、校舎にてお待ちしております」
早々にやり取りは終了し、片桐は一人暮らしの自室にてとある写真を手に取る。
「待っててね。父さん、母さん」
◇
晴馬は片桐とのやり取りを終え、とある資料に目を通す。それは片桐についての身辺調査の結果。
片桐招也16歳。
今回の晴馬の任務地である学校に通う学生。
......以上。
それ以上も以下もない。何の変哲な経歴もないただの一般人であった。強いて言うなら、両親がすでに他界。現在は親戚に支援を受けて一人暮らし。
父親は元医者。そして一番目に入った情報である、母親が元ジャーナリストであるということ。
片桐の行動と思考、特に度胸は一般人としては異常。ここに関して、仮にジャーナリストである母親の仕事柄の度胸を考慮すれば、遺伝していてもおかしくはないものかと考察していた。
しかし、どうにもそれだけで納得はしきれない。
片桐への警戒は解かずに、晴馬は仕事場に向かうのだった。
◇
「ここだな....」
片桐の頭に響く情報を元に、夜の校舎へ赴く晴馬と片桐。到着した先にあったのは、学校の敷地内にある木の生い茂った外れ。日中では活気ある学校も、この場所は不気味な雰囲気もあって誰も近づかないらしい。
「ふむ....」
晴馬は何か感じ取ったようで、茂みの中のとある場所を目指し、土と落ち葉を払う。現れたのは、地面に埋まっているとある古びた鉄の扉。開けた先には、地下に通じる階段があった。
互いに顔を見合わせ、階段を降りる二人。
その先は、約六畳ほどの殺風景な部屋。
「何にもないな.....」
「例の声はいかがですか?」
「まだ響いている。けど、ここで正解なのは間違いない」
片桐の情報を聞き、晴馬は行動に移す。それは今回の考察などではなかった。
片桐の後頭部に突き付けられる、鉄のような感触。それは、晴馬が突き付ける片手銃の銃口だった。
「俺、何かしたか.....?」
「申し訳ありませんが、下手な真似はせずにそのままで」
両手を上げて降参の意思を示す片桐に対し、謝罪はするものの低く圧のある声。まさしく脅迫。
「どうにも貴方という人が分かりません。魔属との戦闘を見たうえで首を突っ込み、わざわざ取引という形でこちらの情報を得ようとする。どう考えても異常だ。到底、伏魔師の世界に興味があるからという理由で納得などできない。
それに、貴方はからは妙な気配がします。ただの人間ではありませんね?
諸々、話していただきましょうか」
晴馬の問いに、片桐はため息を吐く。
「答えたいんだけど、一つ条件がある」
「.....なんですか?」
「答えがなんにせよ、すぐに殺すのはやめてくれ。そして、話を聞いてくれ」
「....話は聞きますが、信用するかは私が決めます。それまで銃口は外せません」
「.....分かった。じゃ、俺の右手を見ててくれ」
警戒をしつつ、片桐の右手に着目する。
「それは,,,,,!!霊気.....!?」
それは魔属のみが持つエネルギー。それが片桐の右手から立ち上っていた。
「片桐さん....貴方、魔属だったのですか....?」
思わず銃のトリガーに手をかける。無論、引き金は引かない。いや、話を聞いた上で、内容によってはすぐに引き金を引く気ではあった。
「......魔属とのハーフってやつだよ」
「魔属とのハーフ.....?」
「正確には、父さんが魔属の血を継いでるんだ。その影響で、俺も魔属の特徴を少し受け継いでるみたい」
霊気という動かぬ証拠がある限り、この話は本当だろう。
「なるほど。で、なぜ我々の世界の世界のことを知りたがっているのですか?まさか、伏魔師転覆なんて考えてませんよね?」
「まさか...!そんな....!」
「信用なりませんね。霊気を隠し、嬉々として私に近づいた人間の言葉をどう信じろと?いや、もはや人間と呼べるかもわかりませんが」
ここに関しては、片桐に否定するだけの材料がない。魔属の血を継ぎ、嬉々として晴馬に近づけば何かしら晴馬や伏魔師にとって害となるような事情があると見られても仕方ない。
このまま晴馬が引き金を引く段階までことが進みそうになる瞬間、晴馬と片桐が立つ地下室の床が沈み込む。
「!?」
「何これ!?」
晴馬と片桐も反応するが、二人はそのまま黒い沼のような床に引きずり込まれてしまった。
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