サンブレイク
第13話です。
今回はアリサ回です。剣術やフィジカルトレーニングがどうなるかってところですね。
ちんばみに「伏魔師養成機関・入学編」は今回までとなります。
第13話 いってらっしゃい
とある日、晴馬は自身の職員室にてPCやモニターを前に作業をしていた。
そのモニターには、養成機関生であり晴馬の生徒に当たる女子生徒、陽鋒アリサの映像。熱心に見ているが、年頃の女性相手の度し難い趣味による行動ではない。
先日、アリサの主な戦闘スタイルである剣術の映像を撮り、その映像を見てPCで作業をしていた。
本日は養成機関の授業は休み。とは言っても、直近で別件の任務もなければ特段、プライベートの用もない。
それゆえに、仕事の一つである生徒のことについて行動することは、晴馬にとってなんら不自然なことではない。
アリサはこの剣術を強みとしており、それゆえに晴馬が考案したフィジカルトレーニングを行えない事情があった。変に他者が持ってきたトレーニングを行えば、筋肉のバランスが崩れて剣術の持ち味が失われてしまうかも知れないという懸念によるものだった。
事情は理解した晴馬。仮にアリサが現状に満足なら、晴馬もこんなに熱心になってはいない。ただ、現状に対してアリサは色々と思うところがありそうな様子につき、このように教師の模範とも言える行動をしている。
モニターでアリサの剣術を見ていく晴馬。確かに《陽練の舞姫》と呼ぶに相応しい剣術なのだろう。
しかし、晴馬は違和感を感じていた。ただ、こればっかりは本人に聞いてみないと分からない。それでも対応策がないわけではなかった。
ひとしきり作業を終えた晴馬は、備え付けの印刷機から数枚のコピーされた様子を取り出す。ブルーライトカットのメガネを外し、その数枚の紙面を丁寧にホッチキス留をする。
(さて、あとは彼女次第ですね)
心の中で呟き、紙面の束を丁寧に引き出しにしまった。
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数日後の午後。本部の養成機関備え付けの運動場にて、授業の一環として対人戦が行われていた。
対戦カードは、片桐vsアリサ。
すでに相応に戦闘は加熱しており、アリサが優勢。
アリサの剣術の強みである、素早いフットワークと突きによる攻撃が繰り出され、片桐は対応を余儀なくされる。
しかし、ずっと一方的というわけでもない。徐々にではあるが、片桐がアリサの剣術を凌ぎ始める。
まだ防戦ではあるが、アリサの攻め手が潰されていく。
側から見ればアリサ優勢ではあるが、心理的にはむしろ片桐が優勢ですらあった。
そして、片桐もノープランではない。狙うべきは、アリサの剣術のとある隙。一定の行動の後、後方に下がって間を入れるタイミングがある。休憩なのか仕切り直しなのかは片桐には分からないが、これまでの情報から隙であることは恐らく事実。
片桐の思惑通り、その瞬間はやってくる。一定の行動の後、アリサが後方へ後退。やや膝をついた状態となった。
そして片桐が肉薄する。アリサも膝をつきつつも剣を眼前に防御の体制で構えた。
片桐が狙いを定めたのは、アリサの持っている剣。まずはメインの獲物を対処し、決定打を加えようとしかける。
片桐が剣に向かって右拳をしかける。
が、その拳は空を切る。無論、アリサの身体も捉えていない。
アリサは咄嗟に剣を宙へ手放し。膝をついた状態からさらに姿勢を低くして回避していた。
「うえっ!?」
予期せぬ状況に、片桐は思わずうわずった声を発した。直後、片桐の顎に直撃するアリサの拳。
数m後方に飛ぶ片桐の身体。
なんとか姿勢を整える片桐の喉元に、アリサの手刀が当てられた。
「そこまで!」
戦闘を見ていた晴馬の号令により、勝敗が決定。
「かぁーっ!もう少しだったのにー!」
「狙いがバレバレだったからねー。でも、かなり強くなったじゃん!」
互いに労いつつ軽い反省会となる片桐とアリサ。
アリサの言う通り、片桐はかなりの成長を見せていた。入学前の晴馬の特訓からすでに相応の力は身につけていたが、入学後のアリサや統と切磋琢磨するうちに、さらなる成長を見せていた。
そのことは、同級生である統や担任の晴馬も感じていた。
それ以上に自身に焦りを感じているアリサ。
確かに片桐の成長は素晴らしい。短い付き合いではあるが、人間的にも仲の良い片桐の成長は素直に嬉しくはある。
決して片桐を経験の浅い者として舐めているわけではない。しかし、こうも短期間で対処される自分の剣術でもないはず。そう思っていた。
ただ、現実は目の前にある。なんとかアドリブで対応しているが、いずれはそれも通じなくなっていく。片桐だけではない。統も他の養成機関生もみんな成長していく。それが当然。
なのに、自分が成長できていない。
片桐に出会う前からその焦りはあった。だが、ここにきて片桐に明確に思い知らされることにもなっている。
片桐や統に悟られないよう、自分の怒りと焦りを右拳にこめて握りつぶす。
「アリサさん。少しお時間よろしいですか?」
「はいはーい?」
そんな心中、晴馬に呼ばれるアリサ。いつものように、いい意味でフランクに返事をする。
「今日、これからなのですが、少しお話しするお時間をいただけないでしょうか。剣術に関して少しお話しがありまして」
タイムリーというか、心中に対してドンピシャな話が舞い込む。
「うーん。そしたら、17時くらいでどうかな?」
「了解しました。では、お手数ですが私の職員室へお越しいただけますか。その方が話しやすい方思いますので」
「うん!リョーカイ!」
「では、後ほど」
心中の焦りを出すことなく、アリサは晴馬とのやり取りを終えた。
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時刻は17時手前。
アリサは晴馬との約束の為、晴馬の職員室を目指して歩いていた。その足取りは少し重く、いつもの快活さはなかった。
本日の日中に片桐との戦闘を行い、改めて自身の成長の無さを突きつけられたアリサ。厳密には成長はしていないわけではない。しかし、その曲線が理想よりも平坦ではあるという自己評価。
そして、その自己評価は正しい。
そんな心中を抱えて、晴馬の部屋の前に辿り着く。
「陽鋒アリサでーす」
名乗りと共に扉をノックする。
「どうぞ」
部屋の中から聞き覚えのある男性の声が返ってきた。
「失礼しまーす」
部屋に入るアリサ。目の前に広がるのは、当然ながら晴馬の部屋。ただ、アリサとってはあまり見ない光景なことも事実。思わず見渡してしまう。
部屋はやや縦長で、生活スペースを中央に両壁に沿うように、ズラリとたくさんの蔵書や札がしまってある棚が並ぶ。
「何か?」
その部屋の上座。モニターやPCを前にした晴馬が、椅子に座ってアリサの行動理由を問いかける。
「あー、いや、ごめんなさい。こんなにたくさんの本とか札とか初めて見たから。コレ、全部先生の?」
「ええ。ですが、本にしろ札の練術にしろ、ここにある大体の内容は習得してますからあまり必要ありませんけど。欲しければ差し上げますよ」
「いやいや。アタシは読書も札もあんまり好きじゃないからさ。統なら喜ぶんじゃないかな」
読書などにあまり縁がなさそうという、晴馬のアリサに対する偏見はあながち間違っていないようだった。
「では雑談はこれくらいに。こちらはどうぞ」
晴馬はアリサへ、自分の前の来客用の椅子へ案内する。
「さて、ご足労いただいたのは、お伝えした通り剣術に関することです。まずは、改めてアリサさんの剣術は確かに素晴らしいです」
「……ありがとうございます」
「……今は好意的に受け取れませんよね」
アリサの返事に快活さがないことはすぐにわかった晴馬。
「……ごめん。顔に出てた?」
「ええ。まぁ、正確には、なんとなくアリサさんの様子に違和感を感じましてね」
短い付き合いだが、自らに自信のない者の様子は意外と分かりやすい。
「まだまだ子供だなー。アタシ」
「そりゃ、そうですよ。まだ16歳ですから子供です」
「……それを言ってる先生も16歳でしょうが。16歳に見えないけど。本当は中年だったり?」
「はやりの転生者か何かですか私は…。まぁ、いいです。話を戻しましょう」
晴馬の雰囲気が真剣な方面へ変わる。アリサも察して心の襟を正す。
「まず、剣術に関してお伺いしたいことがございまして、これは突拍子もない私の推測にはなるのですが…」
少し考え込む晴馬。頭にハテナマークを浮かべるアリサ。
「今の剣術に、続きがあったりしますでしょうか」
「!?」
晴馬の言葉に、驚愕の感想を抑えられないアリサ。
「…アリサさん?」
「……ごめんごめん、びっくりしちゃって。いや、ほんとびっくり。なんで分かったの?」
「正直、半分は勘です。今の剣術がどうにも準備運動のように感じまして。仮に続きの剣術があれば、個人的にはしっかりきたものですから」
アリサの剣術は確かに素晴らしい。力強く、美しい。
と、いうのが多くの伏魔師からの評価ではある。しかし、晴馬がアリサの剣術を見た際の正直な感想としては、
思ったより地味
で、あった。本人には直接、言わないが。
そして、晴馬が感じていた違和感。それは、どうにも剣術が準備運動に見えるという点。言い換えれば、メインで使う剣術にしては迫力に欠けという印象。
無論、準備運動や剣術の続きなどは本人に聞かなければ分かりようがなかった。
「改めて、正解ということでよろしいですか?」
「うーん、半分ね。準備運動ってのはアタシもよく分かんないけど、剣術の続きに関しては正解かな」
「ほう…?」
「この話をするには、まずアタシの剣術のモデルから話す必要があるんだけど…、聞いてもらってもいい?」
「もちろん。お願いします」
教師の立場にある今の晴馬にしてみれば、願ったり叶ったり。
「アタシの剣術って、とある《神楽》をモデルにしてるんだ」
「神に捧げる舞、みたいなものですか」
「そ。アタシの実家が神社みたいなところでね。そこでとある神様を祀ってるんだ。その神様に捧げる独自の神楽がモデルなの」
「ほう…」
過去を遡れば同様の事例もあるかもしれない。だが、少なくのも晴馬の記憶に同様の事例はない。
「その神楽が、本来なら1番から3番まであるらしんだ」
「らしい…?」
アリサの妙な言い回しに気になった晴馬。アリサも意図してはいたが。
「その神楽を全部知ってるのが、アタシのおじいちゃんなんだけどね。そのおじいちゃんから、神楽を剣術に応用することに大反対されてさ。「神聖な神楽を戦いの道具にするとは何事だー!」ってさ」
「まぁ、おじいさんの言っていることも一理ありますね」
「……今となっては、アタシも変に頑固になってたなーって思うんだ。けど、もう色々と遅いんだよね」
「遅い…?」
「殺されちゃったの。おじいちゃんも含めて、アタシ以外の家族全員が」
思わぬカミングアウトに、流石に驚愕を隠せない晴馬。
「それは…、お気の毒に…」
少し晴馬が他者に関心が薄い人間だとしても、他者への弔意を渋るのはそれ以前の問題だ。
「ありがとう。でも、だいぶ前の話だから、流石に慣れちゃった」
そうは言うものの、ことさら快活さが失われたのは目に見えている。
「その時に、保安官が現場検証とかやったみたいなんだけど、やっぱり金目の物目当ての魔徒の仕業だって。ホラ、ウチって神社って言ったじゃん?高価な仏像とかを狙ったんだろうってさ。笑っちゃうよね、ウチは特段、価値のあるものなんて置いてないのにさ」
苦笑いしつつ、少し上を見上げるアリサ。涙こそ出ないが、色々と思うところがあるのだろう。
「まぁ、そういうのは、噂が変に独り歩きして、くだらない輩を惹きつけてしまうこともありますからね」
一応、類似する事例はいくつか知っているし、なんなら未遂の事件を解決したこともある晴馬。
「つまりね、モデルの神楽には確かに続きはあるんだけど、その続きを知る手段がもうないんだ」
あらかたの事情を聞いた晴馬。思わぬ過去を聞き、改めてアリサという人間を見つめ直す。
そんな過去があったことを匂わせることはなく、いつも快活で統や新人の片桐にも優しい女子生徒。伏魔師としての実力やポテンシャルは言わずもがな、成長に対する熱意もしっかりある。
そんな人材が、自信を腐らせてしまうかもしれない事情が現実として広がる。1人で解決するには限界がある。
ならばこそ、ここから先は今の教師である晴馬の出番だ。
「色々と教えていただき、ありがとうございます」
「いいえー」
無理して明るくしようと努力するアリサの返事だった。
「その上でですが、ここから先が本題です。こちらをどうぞ」
晴馬はモニターが置いてある机の上にあった、一枚の紙面をアリサに渡す。
「これは…?」
「それは、アリサさんの1年前の戦闘データと、直近の戦闘データとを比較したものです」
紙面には細かい数値が載ってあったが、アリサは正直あまりピンときていない。それを察してか、晴馬が「ここを見てください」と、とあるグラフを指す。
「そのグラフは、少しわかりやすくデータを比較したものです。一年前のデータと直近のデータであまり差がありません。つまり、一年前より戦闘面で大きな成長がないということでもあります」
「そう…、みたいだね」
アリサも流石に理解しているのか、少し苦笑いを浮かべる。
「誤解のないよう言っておきますが、現実を突きつけるためだけにお呼びしたわけではありません。コレはあくまで案の一つに過ぎませんでしたが、事情をお聞きした限りそのまま使えそうですのでご提案を」
晴馬は机の上にあった、とあるもう一つの紙面の束をアリサへ差し出す。その紙面の一枚目にはタイトルが印字されてあった。
『陽鋒アリサ。剣術開発計画』
「どうでしょうか。剣術の続きを知るすべがないのなら、いっそのこと自分で剣術を作り出すというのは」
「剣術を…、作り出す…!?」
聞き慣れない言葉に、驚愕よりも混乱しているアリサ。無論、新たな剣術を作り出すなど発想すらできないからだ。
「刷新という意味ではなく。あくまで現状の剣術から活かせる、強力かつ弱みを補えるような剣術を開発しようということです」
「いや、まぁ、そりゃありがたいけど…。できるものなの…、そんなこと…?」
混乱のまま、晴馬の提案を受ける選択をしかねるアリサ。そのアリサに向けて、少し前屈みで見つめる晴馬。
いわゆるイケメンの顔立ちをしているが、それ以上に目を離せない不思議な魅力のある晴馬。恋愛的な意味ではなく、歳は相応な人間としての格がそうさせているのかもしれない。
「色々と疑問や懸念は尽きないかと思います。しかし、私個人としては、アリサさんがここで停滞するのは勿体無い人材だと思っています。実力もポテンシャルも熱意もある。その上で、それらの魅力を半減させてしまう事情もわかりました。そして、それらを解決する提案は私が持ってきました。結果は後からついてくるもの。まずはやってみるところからだと思います」
晴馬の真剣な説得に、アリサも引き込まれていく。そもそも、混乱気味で色々と思考がまとまっていなかっただけで、アリサの答えはもう出ていた。
脈打つ血潮、高鳴る鼓動。それらを発生させている正体を、アリサは無意識に知っている。
好奇心だと。
「一意専心!気炎万丈!」
いきなり四字熟語を口にし、自身の両頬を叩くアリサ。
「アリサさん…?」
思わぬアリサの行動に、引き気味の晴馬。
「ああ、ごめん。これはおじいちゃんから教えてもらった言葉でね。よく神楽を舞う前に言っててさ。「気合い入れて集中!」ってことなんだって」
細かい四字熟語の意味合いは置いておいて、答えは出た模様。
祖父に生前、神楽を剣術に応用することには反対されはした。が、ここまで尻込みすることは、祖父の説教を遺言にし、自分の好奇心を殺す材料にすることと同じ。少なくとも、自分の説教を遺言にすることも、孫である自分を縛る言葉にするつもりもなかったであろう。そんな祖父なのである。
もしこの先、天命を全うして祖父に会うことがあったら、その時、存分に説教をしてもらう覚悟をした。
「では?」
「うん!その提案、乗った!改めてよろしく!先生!」
「そうかなくては…!」
互いにハイタッチを交わす両者。
「では、早速運動場に向かいましょう。フィジカルトレーニングからやってみますよ」
「え!?今から!?」
「現在の時刻は18時ですので、1時間やっても19時。入浴や食事の時間には間に合うハズです」
「いや、そういう問題じゃ…」
「おや、さっきのそれらしい言葉はどちらへ?それとも、その程度の意気込みなんですか?」
「あー!もー!分かった!分かったよ!先生の非常識ジェットコースターに乗ってやるさ!」
「ジェットコースターはともかく、非常識はやめてもらえます?」
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翌日、いつも通りに養成機関の校舎へ登校する片桐。
「おはようございまーす」
「おはようございます」
「お%*9ー」
「…なんて?」
「おはよー、だそうですよ」
「ああ、そう…」
いつも通りの片桐の挨拶に対し、これまたいつも通りの統の挨拶。
そして、項垂れつつ机に顔面を伏したまま喋ることにより、今朝は統による要通訳のアリサの挨拶であった。
「アリサどうしたの?元気なさげ?珍しいじゃん」
「き@_&ywー」
「…なんて?」
「筋肉痛ー、だそうです」
「筋肉痛?昨日、そんなキツい授業やったっけ?」
「うーん。記憶にありませんねぇ」
「だよなぁ」
昨日の授業から筋肉痛になりそうな内容を検索するも、片桐も統もヒットなし。尤も、アスリートでも卒倒しそうなフィジカルトレーニングを昨日もこなしておいて、キツい判定をしていないのは中々に仕上がっていると言えよう。
「おはようございます」
始業時間5分前に、晴馬が挨拶と共に教室に入る。
「おはようございまーす」
「おはようございます」
先に晴馬と統が挨拶を行う。それを聞き、アリサも顔を上げた。
「…ます」
「お、今度は聞き取れた」
相手が教師の晴馬とあってか、机から顔を離して挨拶をするアリサ。無論、今度は通訳不要だった。
「お、筋肉痛ですか?フィジカルトレーニングをしっかりとこなした証拠ですね」
やや嬉しそうに微笑む晴馬。
「鬼、悪魔、ドS…」
「お褒めに預かり光栄です」
片桐と統にはなんのこっちゃ分からない、晴馬とアリサの会話。
「ああ、お二人には午後の戦闘訓練の時に説明します。まずは座学ですよ」
ある意味の午後への楽しみが増え、午前の授業はそのまま進行していった。
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午後の授業を迎え、運動場にて約束通りアリサの筋肉痛に関連する説明となる。
「さて、ご自身で説明されますか?」
「うーん。せっかくだから、先生にお願いするよ。我ながら上手く説明する自信ないし」
「分かりました」
アリサの依頼に、少し咳払いをして喉を整える晴馬。
「これまでアリサさんは、とある事情によりフィジカルトレーニングに参加されませんでした。しかし、昨日、その事情にひと段落つきまして、今日から本格的にフィジカルトレーニングに参加となります」
「なるほど。昨日、そのフィジカルトレーニングをやってみた結果の筋肉痛とみた」
「せいかーい。鬼だったよ、鬼」
「マジ解る」
初めて晴馬のフィジカルトレーニングが鬼という共通認識を得たアリサと片桐。表には出さないが、改めてほぼ日課のようにこなしている統と片桐を少し尊敬もしていた。
「その事情って、やっぱり剣術関連ですか?」
反面、フィジカルトレーニング云々とは別の方面で気になるところがあった統。今更だが、ここまできて変に隠す必要もないのかもしれない。
「ええ。つい昨日、新たな剣術を開発する方向で話が進みましてね」
「本当ですか!?良かったじゃないですか!アリサ!」
「うん。ありがとう、統」
本人以上に喜ぶ統。一応、統はアリサの事情をある程度は知っていた。家族が被害にあったことや、剣術の葛藤なども。
同期であり、親友であるアリサの悩みではあったが、だからと言って統が明確に何かできるわけでもなかった。
ある意味で、本人とは別のベクトルで苦しんでいたかもしれない。
そんな親友の曇りが晴れるかもしれない。統にとって、本人以上に喜ぶことに十分に値するのだ。
「わざわざお伝えしましたのは、片桐さんと統さんには事情を知った上で、訓練などで変に手加減しないようにお願いするためでもあります。手心を加えたくなることもあるも分かりませんが、そこはアリサさんのためを思って、いい意味で心を鬼にしてください。もちろん、アリサさんもそのつもりで」
訓練に対して容赦のない鬼が言っているのだ。説得力が違う。
「モチ、リョーカイ!」
それとは別に、アリサも手加減はしてほしくはない。せっかく道が開けたのだ。どうせなら、傷つきながらも遅れを取り戻す心意気だった。
「さて、来月からは《新星祭》となりますので、そこに向けて訓練も引き締めていきましょう」
晴馬の発破に、改めて心のハチマキを締め直す一同。そして今日も、晴馬を相手に一撃も入れられずに運動場に横たわる3人であった。
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伏魔師養成機関、第一支部。その一室。
「来月から新星祭だねー!」
ソファに座りつつ、テンション高めの成宮。第一支部の支部長にして、伏魔師養成機関第一支部の学長でもある。
「学長が出るわけじゃないのに、なんでそんなにテンション高いんです〜?」
対面してソファに座る男性。かなりゆったりした喋り方。
伏魔師養成機関、第一支部特進科生徒、《宙良大河》。
標準より更に黒い髪に、前髪を星が模してあるピン止めで留めつつ軽くおでこを出している。
「だって祭りだよ?せっかくなら楽しもうぜー!なんなら優勝しちゃえ!」
テンション高めの成宮に対し、少し面倒くさそうな宙良。実際、新星祭も少し面倒くさいことは事実だ。ただ、全部が全部に嫌気があるわけではない。
「優勝はともかくとして、鴉間君とはお手合わせしたいですね~」
「あの本部の?知り合いだったっけ?」
「特別仲が良いわけじゃありませんけど、前回の新星祭がお互いに少し不完全燃焼でしたのでね~。どうせなら今回は勝ち切りたいな~」
ゆったりしつつ、その眼に少しだけ宿る熱。それは成宮も感じ取っていた。
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伏魔師養成機関、第二支部。トレーニングルーム。
一人の女性がトレーニング機器を使用して、汗を流していた。
そこに近づく一人の男性。
「いつにも増して精が出るな、蓮」
伏魔師養成機関、第二支部特進科担任教師、《宝生親弥》。
やや気だるげな雰囲気で、軍服を身に纏ってはいるもののやや着崩している。しかし、その内に秘める屈強な肉体は凡夫が持ちえぬ才と努力によるもの。
「お!親弥君、おっつー!」
脅威の来訪に、トレーニングを中断してフランクな挨拶をする女性。
伏魔師養成機関、第二支部特進科生徒、《侑蓮》
鮮やかな金色の長髪と、両耳にピアス。ノーメイクでも整った顔立ち。見たらわかる、ギャルである。
上半身は豊かな胸部を最低限守るトレーニングウェアと、下半身はデリケートラインを死守しつつも、長い脚を惜しげもなく露出している装い。
汗をぬぐいつつ、宝生の挨拶に応じる。
「いつ以上に頑張るのは、やっぱりアイツのためか?」
「モチ!ハル様が見てくれるかもだから、犯罪的にモチベ高いよ!」
ハル様とは晴馬のことである。
「気持ちは分からんでもないが、晴馬は晴馬で自分の生徒みるだろうに、他のとこの生徒を見てる暇あるか?」
「いいの!見てるって信じて頑張るのが、犯罪的に大切なんだよ!」
まるで神を崇拝するように、両手の指を絡ませて遠く離れた想い人を空想に映し出す。
宝生は侑のことも、晴馬のことも良く知っている。侑の晴馬への気持ちも、晴馬がどういう人物かも良く分かっている。
「ま、頑張れるのはいいことだ。ただ、オーバーワークだけはすんなよ。せっかく目に留まっても、満足なパフォーマンスできなきゃ魅了するもんもできねえからな」
色々と言いたいことはあるが、それらを飲み込んで後頭部を右手でかきつつ、オーバーワークについてだけ釘を刺した宝生。
自分が何を知っているかはおいておいて、教え子のモチベーションを下手に下げることだけは、教師としてやってはいけないと思ったからだ。
「あーい」
知ってか知らずか、恐らく宝生の心中は知らないであろう侑は、再びトレーニングへ戻っていった。
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伏魔師養成機関、第三支部。から、やや離れた郊外。
一人の男性がとある山の上で座し、真剣に自分のデバイスを見つめる。
伏魔師の軍服で上背は190㎝はあろうかという長身に、引き締まった肉体。頭部を覆うように、黒い手ぬぐいを巻いている。
伏魔師養成機関、第三支部特進科生徒、《三神新波》。
彼が座している山。それは、20人はいる敗北した魔徒が積み重なった山だった。無論、三神が任務で20人近い魔徒を成敗したのだった。
ただ、本人はいい意味でも悪い意味でも、あまり今回の任務に身が入っていなかった。
「……天征」
デバイスから目を離し、虚空を見つめてつぶやく三神。そのデバイスに映っていたのは、新星祭の出場登録者名簿。
そこに、三神の目当ての名前である荒木天征の名前はなかった。
ご覧いただきありがとうございます。
アリサの道が見えてきましたね。タイトルの「サンブレイク」は、曇天から差し込む陽の光を表した言葉だそうな。その名の通り、アリサの心にかかる曇りに陽が入った状態です。これから快晴になっていくのでしょうね。
一気に新キャラチラ見せですね。詳細は後程にしましょう。
第13話 お疲れ様でした。




