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その後、ミソコイから言われてギルドの個室へ戻ることになった。
「そこで座って大人しくしてろよ」
部屋に入り俺がゴンタコに言うと、背負って寝たままのパーを隣の席に無造作に置いたので、背もたれに足が引っかかって頭に血が上りそうだった。そうなるのな...
「そいつも、しっかり座らせろ!」
今度はパーの顔が背もたれにきていた...体が柔らかいな...ってわかってねえ...
「お前と同じように座らせろおおおお!」
俺が再度文句を言うと、やっと普通になった。疲れる。
すると、緊張した面持ちのシャビイと少し興奮したミソコイさんが何かの袋を持って入って来た。
「ゲッゲさ〜ん!馬2頭の売却代金と盗賊の報奨金で合計金貨40枚で〜す!...なんと、この前の報酬の25倍ですよ〜!」
「え!?...こ、この前の?...25倍ですか?...やった...あ、ありがとうございます」
俺はこれで当分は楽だなと思うと、にやけてしまった。
ただその喜んでる時に、ゴンタコは机の上に乗り、お金の入った袋の匂いを嗅いだ後に、「えぇ!?」という顔で固まったシャビイの頭を入念に嗅いでいたが、俺につられて笑顔になっていた。
「また机に乗って匂いを嗅ぐんじゃない。大人しく、す、わ、れ!」
ゴンタコに気付いた俺は掴んで座らせると、なぜか頷いてから笑顔になっていた。そして解放されたシャビイは明らかにホッとしていた。
それを死んだ目で華麗にスルーしたミソコイが笑顔でバンザイして立ち上がった。
「あと大手柄だったので〜冒険者ランクもBに上がりましたあ」
そう言われ慌てて、俺も空気を読んで同様にすると笑顔のゴンタコと涙目のシャビイもなぜか元気よくバンザイしていた。何これ...
その後、保護した子供達は明日以降でいいので連れてきてくださいと言われギルドを後にした。そして報酬も大量に手に入り、俺は予定よりたくさんの食料を買って帰ることにした。ということで残りの馬1頭に荷車を引かせ、俺とゴンタコと寝たままのパーを乗っけると市場に向かっていた。
その途中でゴンタコが馬を眺めていて何か思いついたようだった。
「兄貴、この馬の名前、俺がつけたい!」
「は?...まあいいけど、何にすんだ?」
俺は言いながら、どうせ碌でもねえだろと思っていた。
「名前はね...うみゃああああああああああああああああああああああああ!」
「長えよ!って叫びたいだけだろがあ!」
やはり案の定だった。笑い出すゴンタコ...俺は頭を掴むと、馬に蹴られれば正常になるかもしれないと思ったが、健気な馬と無駄に嬉しそうな馬鹿に悩んでいた。むしろ馬を乗せこいつに引かせるか...まさに人馬一体?...無病む(なやむ:無駄なことで悩む)...無いな。
その頃シャビイの部屋にはエヴィフレアが入って来ていた。
「ギ、ギルド長、すっごい音がして、あっの頑丈な石人形壊れてましたけど...さっきの変な3人組がしたんでっすか?」
「き、君も見たのかね?あのスキップ魔王を!」
シャビイは驚いて口走ってしまった。
「ス?スキップ?...魔王って?...あの消えた魔王がやったんですっか!?」
エヴィフレアは目を見開いて呆然としている。
シャビイは慌てながらも、最終的には息を吐き出し答えた。
「い、いや、違うんだ。魔王は関係ない。...あの我々のギルドの仲間の3人のうち一人が破壊したんだ」
「ただ魔王並みに強いがな...」
そして、聴こえないほどの声でさらにつぶやいてから、何も知らずその強さに驚いているエヴィフレアを見て閃いた。
「そ、そういえば君は、いつだったか商人の横流しの証拠探しで使用人として潜入していたな」
「は、はい。以前はそっの...うまくいかなかったでっすけど...」
エヴィフレアは肩を落とし落ち込んでいる。
「まあそれはいい...実は君に頼みたいことがある...」
シャビイは慎重な顔で話しかけた。
そんな事が進んでいたが、俺達はというと串焼きの屋台の前で動かなくなり食いたいと叫び出したバカパーに呆然としていた。そして大人しく手伝ったら後から買ってやると言いくるめた。それから金もあったし、よくわからないので行きつけの露天商のモリグッチや、雑貨屋のオーステラに荷台に乗せられるだけの食料を揃えてもらい家に戻ることにした。 まあ、貧しい時からの付き合いだから、安くしてくれたみたいだ。ありがたいな...
そんなこんなで屋台の食い物を食いながら家に着くと、すでに夕方になっていた。
とりあえず馬を入り口の近くの木に留めておき、夕食になりそうな物をいくつか持ってドアを開けると、コメコとメーナーと捕まってた子供達の他に赤黒いローブを着た冒険者がそこにいた。それは確かゴンタコが石像壊す前に魔法を撃っていた女性だった。
そして近くにメーナーが来たので俺は聞いてみた。
「あの赤いのいたっけ?」
「大手柄だったがら、ギルドが派遣しだぁ家事手伝いのエヴィフレアだっぺ」
メーナーはそう言うと更に俺に耳打ちした。
「ギルド長がゲンタ達゛強すぎで怖いから、見張り付けたみたいだなあ...まあコメコの家事が楽になるし、いいべえ」
俺は、楽ができるならどうでもよかったので頷いた。
「わったし、ギルドから派っ遣されたエヴィフレアでっす。家事でもなんでもできまっす!」赤いし、頭も跳んでそうだ、まあエビでいいな。何も知らないエビがニコニコとお辞儀をしていた。何しろエビからすればシャビイの依頼は、家事手伝いと不審なことがないか見張るだけなのに高給だったのだ。しかも、石像を壊した強者だとは分かっていても、全員武器も防具も付けてないので家の中では安心だろうと高を括っていた。
そこにゴンタコが、前傾姿勢で瞬時に近づくと神妙な顔で頭の匂いを嗅ぎ出した。
「な、なあ!?...わああっああ!?」
エビは驚いて後ろに飛び跳ねた。やっぱエビ...じゃなくて。
「こらゴッゴ匂いは嗅ぐなって言っただろ!あれ?パッパは...」
そしてパーを探すと、奥にいた子供達のそばに立ち、口を押さえて叫ぶのを我慢して震えていた。いつの間に...
「か...かわ...しんぼぅ」
すると目が逝って荒い息を吐いているパーの所へゴンタコまで来て子供達の匂いを嗅ぎ出した。
「叫ぶ、我慢...匂い、嗅ぐなああああああああああ!」
叫び出したパーがゴンタコの後ろから首を絞め落とそうと飛びついた。それから、なぜか俺の目の前まで転がってきたゴンタコがロックを力で外して立ち上がりパーと向かい合い一触即発の威嚇を始めた。
「うらあああああ!」
「ふなあああああ!」
「お前ら!やめろおおおお!」
俺はバカパー両方の首を抱え込んで説教すると、なんとか落ち着いた。しかしバカパーの洗礼を受けた子供達とエビはしばらくの間離れたところで警戒していた。
その時、呆れていたメーナーが何かに気付いて話しかけた。
「兄貴゛ぃ他゛の荷物ど馬っごは、どうしだべえ」
「とりあえず入り口につないでおいたままだな」
俺は思い出し、頭を掻いて誤魔化していた。
するとコメコが健気なことを言ってきた。
「荷物運びと馬のお世話は私がします」
それを見て、何もかも分かってない顔で俺を見ているゴンタコと笑顔で首を傾げるパーに涙が出そうだった。
ということで可哀想だし、居候の体力系担当の俺とバカパーも手伝うことにすると、エビも手伝ってくれた。そして他の荷物と馬を倉庫兼納屋に運び、馬達には水と餌をあげて戻ることにした。
その後、コメコとそれより頭ひとつ上の女の子とエビが料理をしてくれたので、全員で食べると一息つくことにした。そして同じ顔ぶれで片付けると、ゴンタコとパーはすでに大の字で寝ていた。
「ギルドに保護した子供達を連れてこいって言われたけど、何か分かったのか?」
俺はメーナーに聞きながら見たが、年上の女の子以外はもう寝ていた。
「昼間聞いてみだけど、年下゛の7歳ぐれえの子達゛はイナナカ街の子だっぺ、年上゛の12歳ぐれえの女の子は違うだ」
メーナーはそう言って子供を優しい目で見ていた。
「じゃあ、年下の子達は親に返せそうだな...けど年上の子はどこの子なんだ?」
俺が更に質問すると、メーナーは困った顔で答えた。
「聞いてみるといいべ、結構しっかりしてるべ」
「あれ、寝ちゃってまっすねえ...おっまかせくださっい!」
寝てしまった子達に気づいたエビがベッドへ連れて行ったので、年上の女の子に質問をしてみた。
「俺はゲッゲだ。よろしくな。...君の事を教えてくれないか?」
「た、助けてくれてありがとうございます。私はヤトミルです」
ヤトミルは頭を下げ感謝していた。白目向いてた時と違ってしっかりしてるな。
「君はどこから来たんだ」
「私はイナナカ街じゃなくて、魔王に破壊された隣のトーカイ街の生まれです。」
ヤトミルは悲しそうな顔で答えた。
「そ、そうなのか。てことはご両親はその...」
俺が言い淀んでいると、ヤトミルが泣きそうな顔で話しだした。そしてコメコが横にきて布で拭いていた。
「...りょ、両親は死んで、おじいちゃんと暮らしてました...けど魔王が来たから逃げて旅してる時に盗賊に襲われて捕まりました」
「そ、そうか、じゃあ一人きりか...」
俺はなんと言っていいか答えが見つからなかった。
その時コメコが決心した顔で俺に言った。
「ゲッゲさん、ヤトミルもここにいていいですか」
「ん...へぇ!?」
俺は驚いてメーナーに耳打ちした。
「メーナーこれは、どうなるんだ?いいのか?」
メーナーも真面目な顔で俺に耳打ちした。
「こんままだと、両親をギルドで探しても、わからねえと思うがら、孤児として扱われるべ...」
そして、ニヤニヤした顔になると続きを耳打ちした。
「だがら、コメコがいいならいいべ...たんだ食費出すのはゲンタだけどな」
俺は内心また余計なのが増えたなと思ったが、それ以上に可哀想なので作り笑いをしながら言った。
「そうか...それじゃあ今日からよろしくなヤトミル」
「あ、ありがとうございます」
「よかったね、ヤトミル」
奥を見ると気持ち良さそうに寝るバカパー。目の前ではヤトミルの涙をコメコが拭いている周りでエビとメーナーが喜んで飛び跳ねていた。俺も泣きながら意識を飛ばすかな...




