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逃避行

 読んで戴けたら嬉しいです。(人´▽`*)♪

 何かに追われるのは、凄く恐い。


 後ろを振り返る余裕も無くて、だからすぐ後ろに奴らが迫ってるようで一層背中がざわつく。


 何か巨大な物に覆われてしまうような恐怖。


 心が押し潰されそうになる。


 大きな通りに出ると丁度出くわしたバスに飛び乗った。


 発信するバスの後部座席の窓から覗いたけど、奴らの姿は無かった。


 人間の身体能力を超えた彼女の速度に生身の人間がかなう筈も無いと云う事か·········。


 苦しいほど張り詰めていた肩と胸の力が一気に抜けて、座席に崩れ落ち突っ伏した。


 その隣に彼女は何事も無かったように腰掛ける。


 彼女に必死にしがみついていて酷い緊張状態だったから、急に緊張状態から解放されてボクはしばらく放心状態になった。


 彼女はそんなボクを見てボソリと言った。


「すまぬ」


 見上げると表情が少し苦し気だった。


 少し落ち着いて来たボクはやっと座席に座った。


「どうして謝るの? 」


 彼女は小首を傾げてボクを見る。


「巻き込んでしまったからだ」


 ボクは言った。


「ボクが勝手に巻き込まれたかっただけだから。気にする必要は無いよ

 それよりどうして、急に居なくなったの? 」


「オヌシは病を抱えておる故、やはり巻き込んではいけないと思ったのだ」


 ボクは肩を竦め言った。


「ボクがそんな事で納得すると思ったの? 

 ボクもアナタと同じだよ

 どうせ死ぬなら、好きな娘(こ)を守る為に命を投げ出したい

 まだ全く役には立ってないけどさ」


 ボクは短い溜め息を吐いて笑った。


 彼女はボクから視線を外すと床を見詰めて言った。


「このくすぐったい感じは何だろうな

 オヌシに好きと言われる度に、オヌシを直視できなくなる」


 その言葉にボクの心に淡い期待が涌き上がる。


「それって、少しはボクのこと意識して貰ってるってこと? 」


 ボクがそう言うと、驚いたようにボクの顔を強い眼差しで瞳を震わせ、それから直ぐに視線を反らしてまた床に落とした。


「解らぬ···········」


 ボクは肩をガックリ落とした。


「そっか··········」


 彼女はボクに視線を戻して言った。


「意識しようにも、お互い名前さえ知らぬではないか」


 言われてみればボクは彼女に名前を告げていないし、彼女の名前が女神である筈も無かった。


 ボクは今更名乗った。


「ボクの名前は工藤紗月、薄絹の月と書いてさつきだよ」


 ボクは改めて握手を求めて手を差し出した。


「ソレガシは神谷夜戯(かみやよき)、夜を戯れると書いてよきだ」


 彼女はボクの手を握り、一度だけ強く握った。


 散々抱き上げられたり抱き締めたりしたのに、この時初めて彼女に触れたような感じがして、ボクは別な意味で胸が騒いだ。


「何を赤くなっておる? 」


 彼女が不思議そうに言う。


「お、お構いなく······」


 ボクは肩を上げ、頭をその間にうずめた。


 彼女には敵わないなあ。


 それより、これからどうしようか········。


 何処に逃げればいいんだろう。


 アイツらに見付からない場所なんてあるんだろうか··········。


 ボクは見るとも無く窓から流れて行く風景に目をやった。


 五十年前の未来予想図って言うのが小学校の教科書に載っていたのを思い出した。


 シャープな造形の建物が立ち並び、車が空を飛んでいた。


 アンドロイドの反乱が無ければ、もしかしたらそんな現実になっていたのかもしれない。


 シンギュラリティが成されていたら、この時代はどれほどの進化を遂げていたのだろう。


 なんだか気が遠くなるような、ワクワクするような······。


 流れて行く風景にシャープな造形の建物も空飛ぶ車も無い。


 普通に住宅が流れて行くだけだった。


 見ると彼女も風景を見ていた。


 夜戯の目には何が見えているのだろう。


 五十年前の街の風景なのだろうか。


 国道に差し掛かるとボクは初めてこのバスが何処を目指して走っているのか気になった。


 天井に吊り下げられたテレビのテロップに戌井方面行と流れた。


 ボクは思い付いて立ち上がった。


「急にどうしたのだ? 」


 夜戯は不思議そうにボクを見上げている。


 ボクは座り直すと言った。


「何処か行く当てはあるの? 」


「無い」


「じゃあさ、ボクのばあちゃんの処へ行こう」


「賛成しかねる、迷惑を掛けるやもしれぬ」


「大丈夫、凄く小さな村だから、アイツらには探し出せないよ」


「良いのか?

 年寄りを危険にさらす事になるのではないか? 」


「大丈夫、大丈夫」


 ボク等は幾つもバスを乗り継いで、ばあちゃん家がある月里村を目指した。




 読んで戴き有り難うございます。(o^-^o)


 昔のヴィジュアル系とかインディーズはやりたい音楽が明確にあって、独特の世界観があったように思います。

 モチーフになるものが文学であったり、芸術であったりしました。

 時が流れて、今のヴィジュアル系が残念なのは、音に広がりが無いんですよね。

 聴いてる者をその世界観で酔わせる事が欠落していると言うか。

 あんまり世界観やコンセプトに想像性を感じなくて、淋しいです。(TдT)

 それが時代と云うものであり、世代と云うものなのでしょうかね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お侍さん言葉が、ここにきて断然「夜戯」さんの魅力を引き出していると感じました。
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