第260話・アルスVS剣聖グリード・ランチェスターⅡ
––––グラジオン大陸。
地球の反対側にあたる平原で、俺とグリードは対峙していた。
周囲一帯には『グラウンド・ゼロ』が張られ、俺は今や魔力の一切を封じられている。
それに留まらず、グリードは全盛期の剣聖時代と同レベルの強さとなり立っていた。
「さぁアルス……もう勝負見えたろ、サッサと土下座しろよ。もう選択権なんかねぇんだからさぁッ! ほらほらほらァッ!!」
これまで見たことがないくらい上機嫌のグリードは、剣を向けながら意気揚々としている。
全く––––これだから。
「おい剣聖、本当に良いのかよ?」
「はぁ? 何がかなぁ?」
「こんだけお前に有利な状況で負けたら、今度こそ本当に言い訳効かねえぞ」
「ありえもしねえ戯言を抜かすくらいにビビったか? じゃあ良いぜっ、望み通りたっぷりと皮膚の薄皮から内臓まで切り刻んでやるッ!!!」
『身体能力強化』で大幅に強化されたグリードが、俺目掛けて愛剣を振り下ろした。
「ズアアァァッ!!」
俺は先端に付いた銃剣で、魔力武装したグリードの剣撃を真正面から受け止めた。
俺の顔面数センチ手前で鍔迫り合う火花が散った。
強烈な魔力の嵐が、俺の額を切って血を流させる。
「なっ!?」
「ッ……!! 勘違いしてんじゃねえよグリード、お前は確かに今全盛期の力を持ってるかもしれねぇがなッ」
繰り出される数度の剣撃を弾き、俺はグリードの肩へ銃剣を掠らせた。
「ッ!!?」
「お前はただ“結果”だけを求めて、本来そこに至るために必要な過程全てをすっ飛ばしてきた。『フェイカー』なんていう誰であっても強くなったと錯覚できるアイテムでな!」
「ぬああっ!!」
グリードは凄まじく速い剣筋を見せるが、そのどれもが直線的で俺の鍛え抜かれた反射神経の前では意味を持たない。
掻い潜った先で銃床による打撃を、ヤツの腹へ叩き込む。
「ごふっ!」
「ここがお前の“限界”だ、俺はギルドを追放されてから今日に至るまで––––世界最高峰の天才たちと戦い続けてきた。その意味がわかるか?」
「ギッ……! わかるかよぉッ!!!」
既にふところへ入った上での斬撃など怖くもない。
力でゴリ押そうとしているのだろうが、逆に動きを単調化させているだけっ。
今度は左肩に銃剣を突き刺し、ショットガンの引き金をそのままひく。
発砲音と同時に、グリードから鮮血が噴き出した。
「がああああぁッ!!? アガッ、ぐっ! うおあっ!?」
痛みに怯んだグリードへ、容赦なく打撃の応酬と散弾の至近距離発射を食らわしていく。
「俺は戦い続け、考え続けてきた! 今までとんでもなく強い奴らと戦ってきた!! 言ってやるよ、テメェの斬撃はユリアに比べりゃ赤子同然! 拳のパワーもアリサ以下!! 道具の使い方だってミライにゃ遠く及ばねえッ!!」
「グガッ!?」
弾が尽きた銃そのもので、グリードの顔面を殴り飛ばす。
「そしてこれが––––お前より遥かに強い軍人にしごかれて得た体術と、大英雄に鍛えられたCQB戦闘だ! もうお前の全盛期なんざ、こっちは魔力無しでも遥か以前に通過してんだよッ!!」
1発だけ装填。
最後の残弾を腹部に叩き込んだ。
吐血し、転がったグリードは地面に這いつくばった。
「ガハッ……! げおっ! ざっけんな……。ざっけんなざっけんなざっけんなざっけんなざっけんな!!!!!!!! こんなことあり得ねえ! あっちゃなんねえっ! 俺は剣聖だぞ!! 世界最強の剣聖だ!! 竜王級を超えうる唯一の人間だ!!!!」
地を蹴り、再び向かってきたグリードの剣をこちらも銃剣でかろうじて弾く。
重い衝撃に手が痺れたが、こんなの苦でもないッ。
「ッ……!!!」
「剣聖だと? 他人に尻拭ってもらうしか能のない人間が笑わせる! 俺は今日という日をずっと想定してきた、いざ魔力が使えない状況でもこうして生き残れるためにな!!」
「んだとッ!?」
「剣聖グリード––––他力本願のクソ剣士、教えてやるよ」
数歩踏み込み、掌底突きを真下から顎へ叩き込んだ。
ヤツの前歯が宙を舞う。
すかさず腰のホルスターからハンドガンを取り出し、4発を叩き込んだ。
「があぁっ……!!!」
後ずさったグリードの顔は、ドンドン青くなっていった。
当然だ、向こうは変身で大幅に強化されてる上で俺は魔力を一切使っていない。
完全に経験値で圧倒していたからだ。
しかしまだだ、ヤツにはもっと––––さらなる絶望を教えてやろう。




