表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/39

授業

 「・・・話を戻しても構いませんか。」

「・・・ええ。」「んっ。」セシリアさんは居住まいを正し、マアルちゃんも素直に席に着く。

「どのくらい森で生活していたかはわかりません。正直、過ごしていた記憶が曖昧なのです。なので、年単位に及ぶと現在の一般常識を欠いている所が多々あると考えられます。必勝の策といっても通用しない可能性もあります。」

「はい。」

「もし良ければ村に向かうまでの間、自分の記憶と一般常識との齟齬を理解する為にセシリアさんが知る当たり前の常識を一から自分に教えてくれませんか。」


「・・・あの。」勿論お母さん、立場は理解している。

「マアルちゃんの面倒を見ながら、裁縫の片手間で構いませんので。」「そうですか・・・。」セシリアさんは若干困った顔をした。なんだ、何が間違った。相手の反応を待つ。大抵の場合、こうして続けた言葉は悪手だ。

「私は田舎の村育ちですし、常識に疎いと思います。それで構わないのなら。」

「問題ありません。では宜しくお願いします。」


 その後、これからの各自の割り振りを決めた。まず、セシリアさんだが炊事、家事、掃除、そして教育だ。午前中は家のことをやってもらい、午後はマアルちゃんと自分に一般常識を教える。・・・はずだったが、なぜかその場には熊田さんも出席していた。嬉々として参加していた。まあ、彼?も言葉を理解できるようだし、問題ないだろう。次にマアルちゃんだが、滞在中に意外な才能を見せた。放おっておくと、どこからか新しい食料を発見してくるのだ。これには母であるセシリアさんも、あの子にこんな才能があるなんてと驚いていた。彼女が新たに発見してきたものは現在までに十数種に及ぶ。理由を尋ねると、おいしそう・・・との事。何となく感覚でわかるらしい。熊田さんには、彼女の護衛(御守り)をしてもらう事にした。告げた当初はこちらの顔に尻尾をパチンパチンと当て拒否する意向を明確に示していた。しかし、新食料によって今やクマダミの価値が無いに等しく、且つ堀の中がカオスになっている事実を告げると驚愕のあまりすすっていた魚茶を鼻から噴出させた。非難の視線を送るとしぶしぶと受け入れたようだ。どうやら温泉から離れたくないらしい。今後はマアルちゃんと共に午前中は探索・採集にあたる。尻尾をガッと掴んで交渉は終了した。最後に自分は食料確保だ。午前中は魚や果実などを回収してくる。午後はみんなでお勉強。



 授業を受けるに当たって、まずは形から入ろうと教室を造ってみた。といってもまだ魔法の件はバレたくないため夜中にこっそりとだ。場所は一階がなんやかやで塞がっていために以前に蓋だけしておいた階段を昇った2階だ。位置的にはリビングのまるまる上が教室となった。明かり取り用の大きな窓と、大小の机椅子(後に熊田さんが参加した為に特大サイズを追加した。)、教壇、教卓、黒板という名の黒い薄い岩。「土が、黒い薄い岩となって固まる。」と試しに色指定したら出来た。やった。チョークは地下の地層から石灰がとれたので代用する。セシリアさんのために、手荒れがおこらないようこの後片手だけでも手袋を編んでおくか。これで裁縫が再開できるな。装飾が楽しみだ。手袋を縫い上げた。アップリケは熊田模様。さて、こんなモノか。



 完徹で迎えた朝食後、そういえば二階に教わるのに適した場所があると告げるとマアルちゃんが「嘘だっ。」といった。いやあると断言した所その後全員で確認しに行く流れに。教室に着くとマアルちゃんは驚き、セシリアさんはニコニコしている。熊田さんはチョークの匂いをクンクン嗅いでいた。・・・頼むから食うなよ熊田さん。あ、よかった止めたみたいだ。

 ひと通り確認を終えたあと、お母さんといってマアルちゃんはセシリアさんに抱きついた。それをニコニコと受け止めながら、笑顔をこちらに向ける。不思議ですね、と返す。そうですね、と彼女は言った。それで終わった。その後、授業に熊田さんが参加する事が判明した為、まだ余っていたはずだと特大サイズの机と椅子を倉庫に取りに行く芝居を打たなければならなかったのはご愛嬌だろう。



 解散となり午前中各自の仕事を終え昼食をとり、準備がありますので・・・とセシリアさんが客室に戻ったので三者?は教室の座席に着いて待っている。並びは教卓に向かって窓に近い下手側から小・中・特大だ。マアルちゃんがずっとこちらをガン見している。その視線を受けきれず、自分は熊田さんをガン見している。熊田さんからは涎がひたり、ひたりと垂れていた。・・・昼食足りなかったのかな。もうちょっと追加するようセシリアさんと相談してみよう。そんな事を考えていると階段から、足音が響いてきた。果たして、彼女は準備といって何を準備する気だろう。授業内容は事前にある程度伝えておいたが、物資の少ない中で準備するものがあるのだろうか。そう訝しみながらも教卓に立つ彼女を見上げる。



 ・・・ズキューン。ズキューン。ゆやゆよん・・・・・。心が揺れた。アップや。髪型をアップにしてはる・・・。



 勿論、上記の表現は比喩であって前回のような気絶はしなかった。しかし、心を撃ち抜かれた。ロングをまとめるとこれ程破壊力を増すモノなのか。モデルのように整った顔立ち、色白の肌、髪は亜麻色、柔らかな雰囲気。そんなセシリアさんだったが髪型をアップにすることでその雰囲気がキリリと引き締まる。その佇まいはなんというか、なんという・・・なんというのだろう。ああ、語彙が足らない自分が恨めしいっ。

「先生。」思わず手を挙げた。

「はい、ユータくん。」先生は空気を読んでくれる。流石先生。

「素晴らしいと思います。」

「ウフフ・・・ありがとう。ではこれから私が知る一般常識について説明します。」「はい。」一人元気よく挨拶をする。マアルちゃんが先ほどとは違った視線を送ってくる。やめろよせ照れるじゃなイカ。こういうものはその立場に成り切った方が面白いのだ。


 セシリアさんの授業は一言でいうと丁寧だった。他の生徒が飽きないよう、適度に質問をし考えを述べさせ、答えられると絶妙な加減で褒める。その度に生徒のモチベーションがあがる。生徒が一緒に考えどんどん案を出したくなる、そんな授業だった。またそんな空気になるよう率先して発言を行い、教室の雰囲気を作った。熊田さんは尻尾を縦に振るか横に振るかのみだったが。


 授業から知り得た情報は以下通りだ。

・現在位置はグリース王国、その中でも西端のモルド伯領、モッカ村近郊、絶望の崖。

・グリース王国に隣接するのはクエネ女王国。シャギール商業自治区。グリース王国は大陸西端に位置する。その他の国家は不明。

・村の人口は200人程度だった。奇襲によって生存者は絶望的。

・王都はグリステン。村からは馬車で2ヶ月かかる場所。隣村までは5日間。それ以外は訪れた事がないので不明。

・貨幣価値は白金貨・金貨・銀貨・銅貨・銭貨。銭貨は鉄と銅の混合物らしい。日本円にすると、1億、100万、1万、100円、1円。簡単にいうと繰り上がりが100だった。

・国家の戦争は最近皆無だが、領自体のいざこざはあるらしい。最近でも南方の領が隣を攻め入って併合したとかなんとか。

・生活様式はヨーロッパの中世に近い。銃はなく、騎士団の武装は剣や槍が一般的。伯領とあるように貴族が地方を納めている。この地を収めるモルド伯の評判は上々といった所。前モルド家に子が産まれなかった為、現地の豪商から養子を迎えたらしい。なので平民に明るいとの噂。

・主食はパンと豆などの穀物類。井戸から水を汲み、糞尿は道端に撒く。

・モッカ村は絶望の崖と接していて、その先は前人未到。大陸とされているのはグリース王国の北端から南端までを海で渡った冒険者がいた為だとか。それでも何ヶ月に及ぶ大航海だったそうだが。村より西は国の3分の1を占めるが、魔巣の大森林(まそうのもり)と呼ばれている魔境らしい。どんだけ西危険なんだよ。

・魔法は大衆の一部の人間しか扱えず、できて生活魔法の着火ぐらい。あっぶね。扱う方法は限られ、呪文詠唱か魔法陣記述、精霊魔法だとかなんとか。扱えないため、よくは知らないとの事。可能性があり且つ裕福な人は王都の学院にいくらしい。

・あと・・・セシリアさんは28歳、マアルちゃんは9歳。再三に渡る懇願の末にこっそり教えてくれた。



 ・・・以上が授業の結果だった。そして、約束の一週間を迎えた。

プロット達成率19%

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ