啖呵を切る
「さて、その作戦なんだが・・・。」重苦しい雰囲気が漂う。三人?が固唾を飲んでこちらを見守っている。ここだ。ここで昨晩から寝れずに悶々と考えた一世一代の大啖呵を切ってみる。
「セシリアさん。」
「はい。」
「自分は、今の世を嘆き世俗をしばらく離れていました。」
「・・・はい。」理解が追いついていないようだ。しかし、自分でもいきなりそんな話をされたら、こいつ何言ってんのと思って曖昧な返事しか返せないだろう。だがそれでいい。なぜなら実際は、痴態を見られて森に引きこもっただけなのだから。ここは事実を歪曲して押してまかり通るぐらいの必要がある。その為の大啖呵なのだ。
「ユータさんは、隠者様なのですか。」
「そのようなものです。」
「んっ。」・・・気がつくと、マアルちゃんがしかめっ面で袖を引っ張っていた。慌てて椅子を降り膝をついて目線を合わし、できる限り爽やかな笑顔をつくって問いかける。「どうしたの。」「いんじゃ・・・。」「いんじゃって言葉がわからない。」「うん・・・。」お母さんをチラリと見る。微笑みながらも困リマシタ的な表情をしていた。なんだ、あの表情は。なんなんだ、あの重箱の隅をつつくような可愛さは。まあいい。気持ちを鎮めてマアルちゃんに向き直る。
「いんじゃって言葉は。」「うん。」「たくさんの人と住むよりも一人で住む方が好きな人のことを言うんだよ。」マアルちゃんは話を受けて、セシリアさんに顔を向ける。セシリアさんがコクリと頷くと、途端に涙目になった。
「マアルのこと、きらい。」「どうしてそう思った。」「ユータはひとりがいいって。」「前までは一人でいるのが好きだったんだけど、マアルちゃんといるととっても楽しいよ。」「マアルのこと、すき。」「勿論だよ。」「うん・・・。」胸焼けが、正直胸が焼けてコゲついている。焼肉屋だったら金網即取り替えてもらうレベルだ。もう何かのきっかけ一つでこの会話ぶった切ってもいいだろうか。いいタイミングで熊田さんの腹とか鳴らないかな。涎の一つでも落ちれば即拾って流れの本流そっちに切り替えられるのに。・・・そんな余所見をしてるから、大怪我を追う羽目になったのだ。
「・・・じゃあ。」
「うん。」
「じゃあ、お母さんは。」
「大好きだよ。」・・・。
「ホントに。」「ホントだよ。」
「・・・本当ですか。」
「え、ええ・・・。」
セシリアさんから視線を外すと、静かにマアルちゃんがガッツポーズをしていた。どうやら啖呵を切られたのは自分だったようだ。
プロット達成率15%




