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誤爆を踏んだらサヨウナラ

 その日は、二人にはその後自由時間としてもらった。心を整理する時間、精神に負った傷を癒す時間。そういった時間が必要だと考えた。浅はかな経験から言わせてもらうと、心的外傷(トラウマ)は辛い。誰にもその手からは逃れることが出来ない。マジで。

 ・・・自分的にも樹海エンドのフラグに見切りをつける時間が必要だった。フラグさんとの事は結構、真剣に考えてた。結婚も視野にいれていた。しかし、こうなってしまっては一度人里まで二人を送り届ける必要があるだろう。樹海を抜けたらサヨウナラ、ではあまりに薄情すぎる。・・・男の泣き言なんてこれくらいでいいだろう。


 その後、セシリアさんは食事には顔を見せるものの終日部屋で過ごしたようだ。マアルちゃんはしばらく母親と部屋にいたようだが、飽きたのかその後は敷地内をドタバタ走り回っていた。まあ、危険な箇所といったらトイレぐらいしかないので、それだけ伝えると安心して部屋に引き篭ることができた。彼女が何をしていたかは不明だが、夕食前にはリビングで仰向けに寝そべった熊田さんの腹の上で既に夢の中にいた。ずっと構ってくれてたのか、熊田さん。しかし、こちらを見つめながら唾液で床の染みを拡げていくのは勘弁してもらいたい。その光景は、ただただシュールだった。・・・4匹だ、と呟くと尻尾が自分の顎をシュルリと撫でた。この野郎。

 その日は露天風呂の使い方を二人に伝えて就寝した。当初二人はその利用方法に戸惑っていたようだが、先輩の熊田さんと躊躇なく一緒に入ることで充分に堪能したようだった。・・・この件に関しては、こちらから発言するような事は特にございません。




 翌日からのセシリアさんは、何かを吹っ切ったのか精力的に活動し始めた。まず、翌朝の投網漁を再開すると、準備の物音で起きてきてマアルちゃんを寝かせたまま付いてきてくれた。こちらが漁の最中は、彼女は滝の周辺で食用の山野草摘みに精を出し片手では収まらない程の結構な量を確保した。その手の職業かと訪ねたら、村では農家であまり詳しくはないがこの場所がいいらしい。あと、村では山野草の知識は子供の頃から教えられると。まあ、それはそうか。


 帰って2人で支度をし全員で山野草が彩りを添えた朝食を済ませると、まずセシリアさんにはそのままリビングで母娘の衣服作りにとりかかってもらった。幸い布はまだまだ余っているし、何せ二人は着の身着のままだ。一週間滞在する訳だし、衣類の確保は最優先事項だろう。ちなみに村では布から自分達の衣服を作っていたらしく、その手際は見事なものだ。最終的には一日で二人の3日分の衣類を縫い上げた。


 セシリアさんの準備を整え裁縫にある程度の目処が立ち、こちらはパーティー犬でも狩ってこようかと考えたところ思わぬ伏兵が現れた。・・・マアルちゃんだ。倉庫に向かおうとした際、上着の裾を引っ張るものがあった。目をやれば、マアルちゃんがしっかり握っていた。しかも、眉間に皺をよせて何か不機嫌そうな表情をしていた・・・。あ、やべ。構ってなさすぎたか。あわてて膝をついて目線を合わし、できる(・・・)()()()やかな(・・・)笑顔(・・・)をつくって問いかける。


 「こんにちは、マアルちゃん。お兄さん(・・・・)の名前はユータ・カドエビだよ。どうしたのかな。」・・・自分で自分を褒めてあげたい。

 「かどえび・・・。」

 「そっちじゃなくてユータって呼んでね。」

 「ゆーた。」

 「そう、ユータ。それで、どうしたの。」

 「んっ。」そう言うと、マアルちゃんは握ってない片方の手で流しの蛇口を指差した。

 「へん。」・・・彼女の質問の意味を考える。村では見かけないし、水が川でない所にドバドバ流れているのを不思議に思ったのか。何よりも蛇口がないか。いや、異世界の文化レベルが判らない。案外流しや蛇口はあるが、水の垂れ流しを変だといっているのかも知れない。そうなると、一農村の上下水道を含めたインフラはどうなってるのだろう。失言はこの場にいるセシリアさんにも疑問を抱かせることになる。慎重に。ただ、慎重に。

 「どこが変。」

 「あれ。」

 ・・・手詰まりだよ、ワトソンくん。助言を頂こう。

 「セシリアさん。」

 「はい。」

 「あのような物は村ではないんですか。」

 「はい。家庭の水は村の井戸から汲んでくるのが普通で、あのように家の中を流れてるのは村ではありませんでした。」

 だったら朝食の準備の際にでも言って欲しいが、よくよく考えたらこちらも知らない立場だった。危ない。

 「そうですか。私も見たことがありませんでしたが、やはりそうなのですね。」いつか、襤褸がでる。このままじゃ。

 「へん。」

 「えと、森さんと川さんにお願いして水を分けてもらっているんだよ。森と川さんにありがとうしないとね。」

 「うん・・・。ありがとう。」

 「上手に出来たね。お利口さんだね。」

 「うん。お母さんに言ってくる。」マアルちゃんはセシリアさんに報告している。報告を聞いているセシリアさんは終始笑顔だ。いいお母さんだな。

 ・・・もういいかと倉庫に足を向けると、再び裾が握られていた。

 「どうしたの。」

 「ゆーた、あれ、へん。」そう、トイレを指差す。セシリアさんはニコニコと裁縫している。


 ・・・思わず熊田さんを探した。昨日で懲りたのか、そういえば朝食後から彼?の姿は見えなかった。

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