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口八丁

 「・・・それは本当ですか。」

 「はい、昔からそう伝えられていました。実際、死者を弔いにいった者が何人も目撃しているので。」

 「そうですか。」・・・正直、余計な事を言って目立ちたくない。


 テーブルに肘をつき、熟考する姿勢を見せる。さて、ここからが本番だ。セシリアさんに如何に不自然さを感じさせずにこちらの現在の状況を納得してもらうか。それが問題だ。いわばここが前世界と今世界の接点となるターニングポイントだろう。現在の状況をうまく説明できねば、今後この世界で生活していく中でこちらの違和感・不信感は永遠に拭えないモノになるのではないか。元世界の自分の前職は営業職ではなかった為、対人交渉の極意は学ばなかった。ただ、思考をフル回転させ少なくともこちらが優位に立てるよう話を展開させてみよう。


 「ちなみに、その目撃情報は何日前のものですか。」

 「(はす)向かいのお爺さんが亡くなったので、日にちでいうと60日ぐらいでしょうか。」

 こちらに時間の感覚はないがオー窟にきて一月は経過してないだろう。そうすると、そこら辺が攻め所か。

 「それは、ご冥福をお祈りいたします。自分はここに来たのはだいたい30日くらい前です。森を彷徨っていた所を見つけました。住みやすい環境で、且つ誰もいないようなので寝床とさせて頂きました。」

 よし、言い切った。挙動に不自然さもみられなかった筈だ。第一関門は突破したか。

 「忌まわしきオークは、いなかったんですか。」

 「自分が来た時には。しかも、家具や器もあり、まるで誰かが生活していたかのような痕跡でした。3日は待ってみたのですが、誰も来ないようなので今はそのまま利用させてもらっています。」

 「そうなのですか・・・。」

 「はい。」

 「・・・。」

 暫く、沈黙が流れた。現在の状況を納得させられただろうか、第二関門もクリアだ。


 「あの、このお料理がのせてあるもの、とても綺麗な色ですね。私の村では木の皿がほとんどで、こんな皿は見たこともありません。」あ、お母さん。そういうとこに目がいくか。

 「はい、私もこんな皿は目にしたことがありませんでした、ですが、便利なので使っています。もしかしたら、前の人が造ったのかも知れませんね。」・・・予想外の反応に咄嗟にでた言葉。正直、苦しすぎる。

 「そ、そうなのですか。」

 「はい。」・・・ゴリ押せたか。なかなか最後の関門が、開きそうで開かない。

 「私は解らないことが沢山あります。解らないことは、人間には多すぎます。人は焦らずに、解ることを一つ一つ理解していけばいいと思います。」「はぁ。」とりあえず、聖者っぽく言ってみたら納得させることができたようだ。「冷めない内にどうぞ。」「・・・ありがとうございます。」ここに至って、彼女の心の関門は完全に突破した。母が食事をし始めると、マアルちゃんも熊田さんとの果て無き応酬に区切りをつけ朝食を摂り始めた。ようやく一息つけた。


 食後、食器を片付けたところで、改めてテーブルに座り話を聞いた。

 「ここは安全ですが、貴女方は今後どうしたいと考えていますか。」

 セシリアさんは一瞬躊躇いをみせた後、こう言った。 

 「私たちの住んでいた村はもう駄目でしょう。それは、逃げる時にわかっていましたから。盗賊が村に留まって何かをするにしても、もう村には何も残っていないでしょうし数日ぐらいかと。一週間程匿って頂ければ、村に帰ります。・・・夫や皆を、弔ってあげたいです。」

 「仰ることはわかりました。では出発は1週間後で。その時は自分も熊田さんも護衛を兼ねて付き添います。滞在中は今の部屋を使ってください。ただ、自分の故郷には『働かざる者食うべからず』という格言がありまして、滞在中はこちらの食料確保に付き合って頂くことになります。宜しいですか。」

 「はい、構いません。」


 そして、三人一匹の生活は始まった。

プロット達成率12%

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