若さ故の過ち
翌日、・・・痛い。身体の節々が痛い。寝台を起き上がることも苦痛極まる。やっぱり来たか。ふふん。これでこそ備えていた甲斐があったというものだ。年相応でなかった報いは甘んじて受け入れよう。
手足を動かそうとするとその度にビキビキと関節に稲妻が走る。これは・・・無理か。落ち着くまで数時間を要するか。幸い手元に果実もある。それを手にして何とかこの難局を乗り切ろう。安心して、2度寝した。
・・・次に目を覚ましたのは正午過ぎだったか。窓は外に張ったネットの御蔭で木陰になっている。といっても、地面の照り返しからくる日照具合でそう推測した。もう眠気はない。しかし、相も変わらず身体は動かせないようだ。必死で手元の机にある果実に手を伸ばし口に含んでいた所、庭?方面から壮絶な水音が聞こえてきた。・・・どうせ熊田さんだろう。放っておいた。
・・・1時間経過して、眠れなかったのでぎこちない身体をおして用を足すついでに外に出てみた。熊田さんが溺れていないかほんの少し気になったからだ。もし落ちていればいい加減溺死しているかもしれないが、熊田さんのご遺体を除去するのは相当な手間だ。それに、やはり目覚めが悪い。玄関を出てネットの木陰をくぐり状況を確かめてみると、正にいま熊田さんが飛び込み台からプールに飛び込む所だった。・・・悶々と悩んだ1時間を返してくれ。轟音と共に着水した熊田さんは、また飛び込み台までゆらゆらと泳いでいき、のそりのそりと梯子を登っている。・・・また轟音が響く中、自室に戻った。
体感時間で午後8時頃、熊田さんがひょっこり自室に顔を出した。何だ、と思ったが好きなようにさせることにした。熊田さんは俺が動けることを確認すると、またどこかにいった。何だったんだアイツ・・・。いいか。いまは休息がなにより必要だ。
更に1時間程、また熊田さんが自室に顔を出した。よく来るな熊田さん。別に気にしないが。すると、熊田さんが今度は部屋に入ってきた。何。熊田さんは俺の横に来ると、机に見たこともない果物を全部で3個置いた。・・・何のつもりだ熊田さん。見舞いか?熊に見舞いの習性はあるのか。
置いて立ち去るのかと思ったが、熊田さんはこちらの反応を伺っている。・・・食えと。食えというのか熊田さん。熊田さんは微動だにしない。・・・食うしかないのかこの流れ。熊の食べ物が人間の口に合うかわからないだろう。深呼吸を一つする。食うか。毒なら毒だ。食べてその瞬間に判断出来ないなら、樹海で暮らすうちにいつかこの果物を食しているはずだ。遅いか早いかの問題だろう。意を決して口に含む。
・・・超美味い。思わず熊田さんを見る。熊田さんは表情こそ読み取れないが、多分満足そうだった。果実全てたいらげ、熊田さんに食えなかった芯の部分を突き出しおかわりを要求する。・・・通じなかったので、今度は言葉にして「もしこれを毎日5個持ってくるなら、代わりに今の部屋を使っていい。」と熊田さんに伝えた。・・・反応はない。・・・通じているのか、いないのか。判断しかねる。
試しに「・・・毎日4個でいい。」と言ってみた。熊田さんはやはり微動だにしない。通じていないのか。「それなら本当は3個でいいと思っていたが、諦めて追い出すしかないか。」と視線を外しながら独り言を呟くと、熊田さんが一瞬ビクリと反応した。すかさず熊田を睨みつけた。熊田さんは部屋のタペストリが気になるようだ。・・・通じているのか。いないのか。どうなんだ、熊田。
彼?がここを訪れている時点で、何らかの目的があると理解した方が早いか。長い沈黙の末、「・・・2個でいい。」と言うと熊田さんの長い尻尾がしゅるりと俺の顎を撫でた。・・・何だ、この表現は。YESか、熊田流YESと受け取っていいのか。激昂するが、すぐ鎮火する。まあいいか、熊だ氏。
・・・笑みを浮かべ、顎を撫でている尻尾をしっかりと掴んだ。すると熊田さんは大きく頷いた。・・・熊田さんは交渉上手でもあった・・・。
プロット達成率9.9%




