第二十六話 束の間の休暇
敵の本拠地を特定した紅たち。いざ決戦というところで、まさかの休暇に───?
《影の箱庭》殲滅作戦の概要が決定された後、各自戦隊本拠地に戻り、各々準備を進めていた。日々の業務を変わらずこなす者、作戦に必要な準備を進める者、鍛錬に励む者など様々である。
そんな中、紅含む西部第七戦隊はと言うと...
「「めんそーれー!」」
沖縄来ていた。
「ちょっと桜花、薫姉、空港出たばっかりではしゃがないで。てかメンソーレはようこそって意味だから」
そう呆れたように言う菫だが、本人もウッキウキでそわそわしているのでまったく説得力がない
「わぁ!私沖縄初めてだからすごく楽しみです!」
「うっ、暑い...溶けちゃうぅ...」
「おいお前ら、あんまりはしゃぐなよ?一応任務なんだから」
いつもの光景に思わず頬が緩むが、遊びに来ているわけではないので、気を引きしめるすると後ろからまたしてもはしゃぐ声が1人
「そうデースよ!あくまでも今日は任務!気を引きしてしめて行きまショーウ!」
シュノーケルに浮き輪、ビーチボールを抱えて言うアリューシアだったが、こちらもまったく説得力がない
──なんで最年長が1番遊ぶ気満々なんだよ
すると後ろから狭霧が紅に寄ってきた
「すみません、アーシャさんがはしゃいでしまって」
「いえいえ、うちもこんなノリですから、大丈夫ですよ」
お互い苦労する、と苦笑し合う
何故最後の希望である2人と一緒に沖縄でバカンスを決め込んでいるのかと言うとというと、時は作戦会議直後に遡る──
「泊まるところがないデース!」
見事敵の拠点を特定したアリューシアだったが、今は愁翠に泣きついていた
「狭霧の家かホテルにでも泊まればいいだろう!?なんで俺の家に来ようとするんだ!」
するとアリューシアはびえーと泣きながら言う
「だって〜!さーちゃんが泊めてくれないんだもん!それに、今お金持ってないしホテルなんて泊まれないよぉ〜!」
さっきまでのかっこよさが嘘のように情けない姿に、全員が思わず呆然としていた
「ん〜そうは言ってもな〜...あ!紅のとこで一緒にいればいいんじゃないか?西部第七には、先に沖縄に言ってもらうつもりだったし」
「初耳なんですけど!?」
紅が愁翠の方を見るが、口パクで、すまん!と言っているので、それ以上言えなかった。
「そういう事でしたら、手配のお手伝いは私が」
そしてここまで我関せずだった狭霧が手を挙げる。ここまできたら観念するしかないだろう
「はぁ〜。大したことはできませんが、それでも良ければ」
すると目をキラキラと輝かせたアリューシアが紅に飛びつく
「本当に!?Thank you!助かりマース!」
「!?」
すると、アリューシアの非常に豊満な双丘に顔がうずめられる。思わず柔らかい感触が襲うが、後ろからの殺気(主に朱音と菫から)が紅の平常心を引き戻した
「じゃあ決まりだな!紅たち西部第七は一足先に沖縄に言って事前調査をしていてくれ。なーにほぼ休暇のバカンスみたいなものだ。頼んだぞ♪」
こうして、紅たちは《最後の希望》と行動を共にすることとなった
───そして現在に至る
「紅!早く海いこーよ!」
「こーくん!私サーターアンダギー食べたい!」
「コウ!さーちゃん!美味しいお酒はどこデースか!?」
どうしてこう騒がしいのが揃いも揃って違うことを要求するのだろう。
「先が思いやられる...」
だが、紅も紅でこの状況を少し楽しんでいたりする。久しぶりの休暇に、みな浮き足立っていた。魔の手は、そこまで迫っているとも知らず...
──同時刻、与那国島近海
「報告、現在島周辺の魔力値、異常ありません」
「了解。引き続き観測を頼む」
海上自衛隊駆逐艦『白凪』の若手の艦長川上は、そう言って双眼鏡で島の方を見る。
この地域の自衛隊は、元々危険区域に指定されている与那国島の定期的な巡航と調査が通常業務となっていた。さらについ先日《MAA》からの通達で、与那国島で大規模な作戦があるということで、いつもの巡航では1隻で行うところを、今回は合計4隻で行っている
「それにしてもなんで今更与那国島の攻略なんてするんでしょうね?艦長なにかご存知ですか?」
川上はあくまでも厳かに首を振る
「俺も詳しいことは知らされていない。大規模な作戦があるということだけだ。嫌な予感がするのは確かだが...知ったところで俺達には関係の無い話だ。分かったらさっさと終わらせて帰るぞ」
そう言い放った矢先、けたたましい警報とともに、魔力の観測を行っていたものが声を上げた
「艦長!12時の方向!距離およそ1200!基準値を大幅に上回る魔力を感知!映像出します!」
「!なんだ...?子供...?」
映し出された映像には、自分の身の丈の倍ほどの三又槍を抱え、大きなヒトデの髪飾りに、珊瑚礁のような柄のワンピースを身にまとった少女が。その時点でも異常な光景だがそれ以上に
「なんで、海面に立っているんだ?」
そう、少女は海面に足をつき、立っていた。そしてこちらに気づいたように顔をあげると、艦内にいるはずなのに、直接首元に爪を突き立てられているかのように錯覚するほどの殺気と魔力を感じた。
「!全速旋回!直ちに距離を取り、迎撃体制!あれは...!」
瞬間、艦全体が、強烈な衝撃で大きく揺れる
「艦前方に攻撃!浸水、炎上多数!これは一体...!?」
すると映像に映る少女の周りには水が形をなして浮いていた。
「あれは...大砲?」
『白凪』に装備されている主砲や、機関砲、その他武装類が水で形作られこちらに砲口を向けている。
「なんなんだ...!あれは...!」
その後、海上自衛隊の司令室では、与那国島近海を巡航中だった『白凪』を含めた4隻の駆逐艦及びイージス艦が、レーダーから消失した




