第二十五話 魔族
裏切ら者や魔族の存在が、見え隠れする《影の箱庭》。
紅たちは最後の作戦会議を進める────
「魔族...だって...?」
魔族。魔物達を統率する異世界の侵略者達の総称であり、魔神王オロバスの収める種族である。その姿は人類に酷似しているが、総じて血赤の双眸に、漆黒の角を携えた、人ならざるものである。その生態は残忍で冷酷。魔族以外は徹底的に破滅に追いやる邪悪な存在であり、今までも幾度となく人類を苦しめてきた。
愁翠は神妙な面持ちで続ける
「あぁ。実際に目撃情報もある。こりゃまた大きな戦があるかもな...」
すると瑛介が声をあげる
「でも、魔族と今の裏切り者の話に、なんの関連があるのでしょうか」
今度は銀次が口を開く
「ほな逆に考えてみ?今まで表立っては活動してへんかった犯罪組織が急にここまで強気になって動き出した。その時点で何かあったはずやろ?《光の箱》にしてもや。ふつーに考えたら犯罪者ならそないなもん盗み出すなりなんなりする方が性におうてる。のにこんな回りくどいやり方してくるっちゅうことは裏で手ぇ回してるもんがいるはずや。とはいえ、たかが犯罪者組織。《MAA》相手に潜入するんはほぼ不可能やが、かと言って裏切り者を作り出すんも骨が折れる。そこで魔族や。アイツらの力があれば、手なんかいくらでもある。ほんでこのタイミングで魔族共もきなくさい動きしだしよった。関係ない言う方が不自然やろ」
要するに、魔族という強力なバックアップが着いたことで《影の箱庭》が強化され、《MAA》相手でも対抗できる力をつけた。そこで手段は不明だが、裏切り者を作り出したということだろう。
瑛介が納得したように頷く
「そうか...!それが、魔神王の封印にも繋がるのか...」
「え、何どういうこと?」
すると朱音が不思議そうに聞く
「《光の箱》は人の魂、つまり聖の魔力の集合体だ。魔物はもちろん、魔族でさえ触れることすらできないはずだ。だから、どうしても人の手を借りる必要がある。そこで見つけたのが《影の箱庭》ってことだろう」
つまり魔族は自分たちでは《光の箱》に触れることすら出来ないから、《影の箱庭》を使って魔神王の封印を解こうという算段なのだろう。
珀治がボソリと呟く
「こん中にも、裏切り者がいるかもしれねぇってことなのか...?」
一瞬、空気がピリつく。すると愁翠がパンッと手を叩き、口を開く
「ま!不確定な要素を今考えてもしょーがない。まずは目下の作戦に集中しよう」
そうして話題を切り替える
「でも、《影の箱庭》のアジトの特定って言っても、範囲も数も膨大です。何か策はあるんですか?」
瑛介が苦言を上げる
なんせアジトの候補地は日本全土に満遍なく数十箇所もあり、ある程度の検討もなく捜査するというのも無茶な話である。
「あぁ、それは援軍でくる《最後の希望》の奴らがそういうの得意な異能持ってるから手伝ってもらうつもりなんだ。もうすぐ着くと思うんだけど...」
すると、ドタバタと歩く足音が2人分、会議室に近づいてきた。
「Sorry!遅刻しまーシタ!ってあれ?もしかしてもう終わっちゃった?」
勢いよく扉がバーン!と開けられたかと思うと、西洋風の顔立ちの金髪美女が飛び込んできた
「終わってなかったとしたら、今の入室は絶対にやめてくださいね」
するとあとから入ってきた黒髪ポニテのこれまた美女が眼鏡越しにジト目で見る
全員の頭の上に「?」が浮かぶ。すると金髪美女の方が愁翠に気がつくと、パァァっと表情を明るくする
「シュウ!久しぶりー!!」
そう言って全速力で愁翠に飛びついた。愁翠はと言うともう慣れた様子で微動だにしていない
「おぉ久しぶりだな、アーシャ。でもとりあえず1回離れような?」
すると金髪美女はブーと頬をふくらませながらも素直に離れてこちらに向き直った。
「初めまして皆さん!私の名前はアリューシア・ミグルディア!アーシャって呼んでくださーイ!」
そう言ってアリューシアは綺麗な金髪をたなびかせる
「私はアーシャさんの補佐をしています黒崎狭霧です。どうぞよろしく」
続いて黒髪のポニーテールを揺らして、狭霧はぺこりとお辞儀する
そのままお互い自己紹介を済ませ、事情を説明して本題に入ることに。
「⎯⎯ということなんだ。頼めるか?」
「I see!そういうことならお易い御用デス!」
するとアリューシアはスウッと目を閉じ、魔力を練る。そして指をパチン!と鳴らす
「スキル『反響定位』」
すると魔力の波紋のようなものがアリューシアを中心にどんどん広がっていく。
異能力『音響者』。音波や音に魔力を乗せて干渉する能力。今は『反響定位』というスキルで、自身が発する音波の反射で、ものの位置などを把握するものを日本全土を範囲に行っている
「日本全土とか、どんな効果範囲だよ...」
「その気になれば地球の反対側でも聞こえるそうよ」
そう言った狭霧も能力の発動準備をしていた
「───特定完了しまーシタ!さーちゃん!お願いしマース!」
「了解です」
そう言って狭霧がアリューシアの手を握る。
「スキル『同調』」
続けざまに別のスキルも展開する
「スキル『情報展開』」
するとパソコンの画面のようなものがいくつも現れ、地図や細かい情報が記されている。
異能力『電脳者』。世界中のありとあらゆる電子情報に干渉したり、他人や自身の思考を電子情報に変換して表示するなどその使用方法は多岐にわたる。
「いくつか拠点を発見しました。そして本拠地が...」
「この場所ってことですか...」
地図に記されているのは日本列島を南下して行った、日本の西端。強力な魔物も数多く生息しており、高危険度の《門》も存在する、日本で最も危険な場所のひとつ
与那国島
南部戦線の第一戦隊である珀治と王介が苦い顔をする
「なるほどな...ここならそりゃあ見つからねぇ訳だ」
「島自体が《門》内と同じくらい危険っすからね」
全員、これからの戦いを考えて、緊張が走る
「さぁお前たち。敵本拠地は突き止めた。あとは奴らを倒すだけだ。」
《MAA》と《影の箱庭》との全面戦争の幕開けはすぐそこに迫っていた




