第二十話 敵襲
突如として現れたS危険度級の《門》。
しかし全員何か違和感に気づく───
栗田と共に全体を見渡せる高台にたどり着いた桐生と出雲は緊急事態なのは理解しているが、英雄の戦いに興味深々だった。
「僕らの戦いを見るのは初めてかい?」
突然の質問にびっくりしたが、落ち着いて答える
「はい、話には聞いていましたが、まじかで見るのは初めてです」
すると栗田は指で眼鏡を押し上げた
「ならばよく見ておくといい。自分で言うのもなんだが、中々に面白いぞ」
森の一角。まるで火の海のごとく燃え盛る青い炎が見えた
「スキル『青炎』」
まるで波のような青い炎が、森に溢れるゴブリンやコボルトの群れを焼き払う
柊朱音。異能力『炎纏者』。炎を纏い、自在に操る異能力。汎用性が非常に高く、炎属性魔術よりも取り回しが効くことから主に中、近距離射程での戦闘が得意である。その姿から《不死鳥の天女》という二つ名が着いたんだとか。
「スキル!『重力増強』!」
そう言って強大な重力によって振り下ろされる大剣が2メートルはあるオークを真っ二つに引き裂く。
泉珀治。異能力『重力操者』重力を自在に操る。こちらも汎用性が高く、あらゆる戦況に即時対応することから《千変万化》と言われるように。しかし、実際は、如何なる攻撃でも倒れず、ひたすらに戦況を掻き回すことで有利に運んでいる節があり、一部からは《不屈の狂犬》とも言われている。
「天魔二刀流『鎌鼬』」
高速の斬撃と共に人影が同じく目にも止まらぬ早さで魔物の群れを切り裂きながら進んでいた
その時、桐生が気づいたように言った
「太刀川隊長が持ってるのって、もしかして《古代遺物》ですか?」
すると栗田が驚いたように言う
「おお、そうだ。よく気がついたな」
すると桐生根拠を言う
「はい、太刀川隊長からは魔力が2種類感じられたので、片方が《古代遺物》で、もう片方が本人の魔力かなと」
すると栗田は笑いながらいや、と否定する
「惜しいな。正確には《古代遺物》が2つだ。ひとつは雷の力を司る魔剣『雷帝』。もうひとつは風の力を司る魔剣『風魔』。どちらも扱いが難儀な短剣だ。それをああも簡単に手懐けてしまったんだから大したもんだよ。」
そこまで聞いて、出雲に1つの疑問が浮かぶ
「あれ?じゃあ本人の魔力はないの?」
すると栗田は少し驚いたように言った
「...案外鋭いんだな。颯はいわゆる特異体質で、生まれつき魔力がほぼゼロだったそうだ。ただ、五感と身体能力が異常な程に高い。そういう特異体質らしい」
まるで魔力と規格外の身体能力を交換したかのように。
言われてよく見てみれば、確かに泉本人からは全くと言っていいほど魔力が感じられない。だとすれば、《古代遺物》のバフがあるとは言え、魔力強化なしの純粋な身体能力で文字どうり目にめえない速さで戦っているということになる。規格外というのは本当らしい。
すると、またしても出雲が気づいたように言う
「そういえば、栗田さんは戦わないの?」
すると栗田はメガネを指で押し上げながら息を吐く
「僕はあくまで後方支援や指揮官としての戦いが主だ。あの戦闘狂共と同じにしないでくれ」
戦闘狂、という言葉に2人とも苦笑する
ちなみに栗田瑛介の異能力は『先導者』。将棋の駒をモチーフにした兵士を召喚したり、味方への強化支援などをして戦う。今も何体か召喚して、偵察に出ているようだ。
「...おかしいな。敵が弱すぎる。S危険度級のゲートならもっと強い奴らが出てきてもいいんだが...」
今のところ出てきているのはE~D危険度級のゴブリンやコボルト、C危険度級のオークぐらいである。
この違和感は桐生も感じていた
「確かに、私達でも難なく倒せるような相手ばかりですね」
S危険度級の決壊ならばもっと強敵が大量に出てきてもおかしくはない。しかし《門》自体の魔力はS危険度級そのもの。栗田も難しい顔をしていた
ちょうどその時、戦っていた剣崎から通信が入る
『瑛介。《門》の前に到着したが、なんか様子がおかしい。』
《門》前に到着した4人も違和感を感じ始めていた。
「明らかに魔物どもが弱いな」
泉が怪訝そうに言い放つ
それに柊も言う
「えぇ、どう考えてもS危険度級の決壊とは思えない」
全員が違和感を感じたことで《門》の前で立ち往生していた
(たまたま弱い魔物しかいなかったのか?それにしても数も少ない。嫌な予感がするな...)
その時、太刀川が突然気づいたように叫んだ
「全員跳べ!」
反射的に何かあると感じた4人はその場から高く跳躍する。すると今まで立っていたところに無数の棘のようなものが地面から突き出した。
「なんだこれ?!」
すると周囲にいくつかの魔力が現れたのを全員が感じ取った
(魔力!?いつの間に現れた?!)
そして魔力の正体は、フードを被った5~6人の人間だった。
「っ!お前ら何者だ?」
剣崎が警戒心マックスで聞く。
その時、男のひとりがフードを外しながら答えた
「俺たちは《陰の箱庭》。魔神王様に使える者だ」
その男は、赤髪に薄い黒のサングラスをかけ、服の隙間から見える肌には体中にあるであろう刺青が見えた。
そして名前を聞いた4人は警戒を高める
「《陰の箱庭》!?そうか...暗殺はブラフか!」
そして奴らの狙いは...
「俺の名はマモン!《陰の箱庭》《七大罪》が一人、《強欲の罪》マモン様だ!テメェら《七聖》を皆殺しにしに来た!」
マモンの高笑いが森中に響き渡った




