第五話□ 武藤武史少年と文芸部
文芸部室前にてトラブル発生。
「いや~感激でござるよ」
とろろんとした顔で帰ってきた武藤。そこまでうれしいのか、お前。
「うれしそうだな」
「ただ話せただけじゃないのだよ。拙者めの力量如きを認めてくださっていたのでござる」
「そりゃぁ、お前がすごいんじゃないのか?」
「いやいやまだ拙者。もののふとしてはまだまだ…全く最初から成長してござらん」
目を閉じ、むぅと言った顔でうなずきつつ話す武藤。そう言う奴に限って強いというのが世の常である。
「じゃあとりあえず見回るか」
俺は何もプラン無しで引き連れることにした。
と言うことでまず文化部の確認。こいつは入る気はさらさら無いだろうが、俺としては運動部に身を置くほど自分の身をタフだとも思っていない。ということで、文化部入ろうかなみたいな気分で文化部が密集する特別教棟にやってきた俺である。
「文ゲイ部?」
「文芸部でござるよ。村山殿」
「ああ、いや分かってたんだけどな」
文芸部という張り紙の張ったドア。部活動勧誘は剣道部を見ている間になりを潜めているので、現在は各部活動が自然に部活をやっている様子が見られる貴重な時間なのだ。
「どんなことやってると思う?」
俺は聞いてみる。
「やはり本を書いたりだとかそう言うことをやっているのでは? 文の芸術、そんな意味で文芸であるから」
「いややっぱりそうだよな。乗り込む?」
「仮にも先輩方だ。失礼は無きよう」
ふ、文芸部がそこまで堅いはずがないではないか。
「よしいくか」
俺はまずノックをする。
「一年生ですが部活動見学をしてかまいませんか?」
そして確認を取る。面接の基本だ。
「ええ!? ちょっと待ってください!」
なんだ? 予想と違う返答だな。
「入っても良いですか~?」
さらに聞いてみる。反応に期待しちゃうよね。
「ホントに待ってください! 今は絶対開けないでください!」
そう言われると…もっと開けたくなっちゃうなぁ!!!
「開けますよ?」
「ちょ! 村山殿! 無礼はないようにと言ったではござらぬか!」
「…ちぇ」
ドアの向こう。文学少女である西暁寺静は自らを小説の主人公に見立て、西暁寺家の余りある財産を使って衣装を作り、やっと部活動見学が終わったと言う所で安心し、そして衣装を着込んで一人劇を始めた途端にドアをノックされたのであった。
そしてドアの手前。
さて、開けるかな。
「村山殿。まだOKは出ておらぬよ」
ドアに手をかけた所で後ろからグサッ。
「いいじゃん」
「仮にも先輩であるのだぞ?」
武藤の声をスタイリッシュに無視してガチャッ。 ……ああん?
「ああん?」
つい声が出てしまった。声は心にとどめることはできないのだよ。村山君。 決してメンチを切ったときなどに出す声ではなく、いきなりの出来事に状況がよく分からなくなっているときの声だ。ああん?
「……あ…」
目の前の女性も状況が分からないようで、パンツとブラジャーの姿で固まっている。さて、何をやっていたのでしょうか。
「村山殿…いい加減に…ん?」
ドアの影になっていて見えなかったようで、現時点で武藤は気づいたようで、口をあんぐり開けたまま固まっている。ここで俺の意識が最初に復活する。
「いやぁすいませんね。顔洗って出直してきます」
そういって笑顔のままドアを閉め、スタコラサッサ。美人だったが、その下着を見ることはできたが、いかんせん罪悪感にさいなまれてうれしくない。
「ああああああ!」
その後、その人らしき人間の叫びが聞こえてきた。すいませんでした。
「あえ…? 村山殿。拙者はどこへ行っていたのでござるか?」
俺がさっさと手を引いて一緒に退却してきた武藤はここで気がついた。しかし女性の着替えのシーンをつい見てしまって固まるなんてシチュエーションは存在したのか。妹の場合は反応速度の問題で、こっちが視認する前にぶっ飛ばされる。
「heaven(天国)」
「そうでござったか…ってそれは拙者が死んでいたと言うことであるか!?」
「まあ良いんじゃないか?」
冗談が通じないなこの人!
「それは良くないことであるぞ! 浄土に行くというのはもののふの一生を終えると言うことでござる! 重大でござる!」
「あ~! もう嘘だよ嘘! ただ意識がどっか行ってただけだよ」
「それならいいのだが…」
ウェーブが激しいなこの男は。
「で、これからどうする? 俺はもう探索飽きたぞ?」
次の予定について聞いてみた。
「拙者は剣道を見られただけで満足でござる」
「じゃあこのくらいで良いか」
「解散でよろしいか?」
「そうしよう」
と言うことで、俺達はそこから解散し、帰路に着くのであった。




