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龍道  作者: 栄光の平橋
金殺編
47/52

47話 一対八

「やっほ~イッちゃん」

龍輝が試合場で、龍一に向けて手を振った。

「速いね」

「まぁね」

龍輝が笑い、龍一が試合場に入る。

「もう始めちゃって」

龍輝が審判に言い、首を鳴らした。

「始めぇ!」

飛び出しながら、左脚を空中で振るう。

龍一が右前腕を立て、それを受けた。

しかし、防御したうえで体勢を大きく崩される。

床に肩から倒れた龍一は、右手で地面を突き飛ばした。

その瞬間に、龍輝の足が落ちてくる。

転がりながら膝をついた状態に体を持ち上げる。

「何だよ、グラウンド専門じゃないのか」

龍一は愚痴をこぼしながら立ち上がる。

「僕の身の軽さを舐めない方がいいよ~」

龍輝はステップを踏みながら、龍一に手招きをした。

龍一が喉を鳴らし、勢い龍輝に向かって飛び出す。

龍輝はステップの動作のまま、身軽に身を躱す。

龍一は躱されても、再び飛びついた。

龍輝が足を振り上げ、龍一の顎を蹴り上げる。

だが、龍一は頭を回転させ、蹴りを流した。

そして、前に進み出て龍輝の体を掴み、地面に倒した。

「まさか、グラウンドで僕に勝つつもり?」

龍輝は上に覆いかぶさっている龍一の脇に腕を入れ体を離した。

そのまま右足で龍一の左脚を払い、右に倒す。

肘で床を突き、転がって龍一の上に覆いかぶさる。

「逆転」

龍輝が右拳を振り上げ、龍一の鼻に落とす。

「っ…」

鼻血が噴き出、龍輝の拳が濡れた。

龍輝が再び拳を振り下ろすと、龍一は首を動かして躱し、肘を掴む。

肘を逆方向へ押すと龍輝の腕が滑り、体勢を崩した。

右方向へ倒れる龍輝に向かって、龍一は思い切り右肘をこめかみにぶつけた。

「ぐっ…」

龍輝は唸りながらも、転がって龍一から離れる。

(加速が足らなかったか…だが、警戒している龍輝にグラウンドで勝つのは難しいし、立ち技も…)

龍一は考えながら、腰を低く落とした。

「レスリングも許容範囲だよ」

龍輝は笑いながら、キックボクサーの様に構えを取る。

「…ふっ」

龍一は素早く息を吹き、龍輝に向かって行く。

「無駄無駄」

右ミドルを繰り出し、龍一の頭を狙う。

龍輝の右足が龍一の側頭部を叩く。

直後、龍一が下に向けて転がった。

龍輝が向き直るより速く、龍一は飛び上がった。

「なっ」

ドロップキックが龍輝の顔面を打ち抜く。

龍輝は仰向けに倒れ、龍一はなんとか受け身を取った。

龍一が龍輝に目を向けるが、龍輝は起きる様子がない。

「…はっ」

龍輝が軽く笑う。

両手を頭の両隣につけ、足を振り上げる。

周りながら飛び上がった。

「あはぁ…面白いね」

鼻から血を流しながら、にやにや笑っている。

引きつった表情をした龍一を見て、龍輝の口角はさらに上がった。

「やっぱ楽しいねぇ…僕も立ち技やってみよっかな?」

両手で頬に触れながら、龍輝はその場で回転した。

「うわっ出たよ…」

入場口の三郎が、怪訝そうにつぶやく。

「ほらっ、やろっ」

龍輝は人差し指で、龍一を招く。

「あんた、おかしいよ」

薄く笑いながら、龍一が飛び出す。

「ふふっ」

龍輝が軽く吹き出し、左ローを放つ。

龍一の頬に、龍輝の左足が迫る。

その瞬間、龍輝の左足に鋭い痛みが走った。

龍輝が目を向けると、龍一の頬の隣に拳があった。

拳の中手骨が、足の骨にヒビを入れたのだ。

「痛いっ!」

そんな言葉を叫びながら、龍輝が飛び上がる。

左足を空中に置きながら、右足で龍一の側頭部を蹴った。

「うっ…」

龍一は一瞬低く唸り、床の上で転がっていく。

金網の側で、龍一は止まった。

「ん?」

龍輝が気付いたとき、龍一の両足は金網に触れていた。

空中の蹴りでは明らかに多い回転は、龍一が自ら転がっていたから起きたこと。

龍一が両足で金網を蹴り、両手で地面を突き放す。

龍輝の腹へ、龍一が頭から突っ込んだ。

「ごふっ」

龍輝は溜まったような息を吹きだし、対の金網まで吹き飛ばされる。

「ごほっ、げほっ」

龍輝は咳き込み、手で腹を抑えながら膝をついた。

「シャッ!」

龍一はすぐに立ち上がり、左ローを龍輝の頭に向けて放った。

龍輝は腕を立て、ローキックを防ぐ。

しかし、衝撃で龍輝は飛ばされた。

試合場の隅まで蹴り飛ばされ、後方をなくすように素早く立ち上がった。

背中は金網のみ、前には龍一がいる。

「立ち技で俺に勝つ気?」

龍一が聞くと、含みのあるような笑いをした。

「ふふ。立ち技で勝つ気か?さて、どうだろうね」

言い終わった瞬間、龍一が飛び込む。

右のミドルキックを放つと、龍輝は両の逆手で金網を掴んだ。

そして、跳びあがる。

龍一のミドルが空を切り、龍輝の両足が両肩に乗せられた。

両足のスナップを効かせ、龍輝は龍一の頭に両手でしがみつく。

「っ…!」

龍一は重みに耐えきれず、背中から崩れ落ちた。

「立ち技で勝つ気なんか、さらさらないよ」

龍輝は言いながら、龍一の左足に上半身を組みつかせた。

「逆方向に、折っちゃうよ」

龍輝が脛を右腕で持ち上げ、左肘でももを押さえつける。

「このっ…」

龍一は咄嗟に、右足で地面を蹴った。

だが、体を持ち上げる訳でもなく、ただ右足が降りあがっただけ。

そのまま右足を振り下げ、龍輝の鎖骨に向かって踵を落とす。

「がっ!」

龍輝は右の鎖骨を抑えながら、龍一の上を飛び離れた。

「…やってくれたね~…!」

龍輝は唾を垂らしながら、這いつくばってそう言った。

龍一が立ち上がると、龍輝も右肩を抑えながら立ち上がる。

「良い攻撃だったよ。最悪の一撃だった」

「どっち?」

龍一が聞くと、龍輝は乾いた笑いをする。

「さぁ、ね」

龍輝は深く息を吸って、龍一に向かって駆けだした。

右上腕に力を入れ、極力肩が動かないようにしながら、龍一に迫っていく。

龍一は牽制するように、左足を少しだけ浮かせた。

龍輝はそれを見た瞬間、咄嗟に立ち止まった。

右腕を痛まないように全力で抑えながら、龍輝は一歩踏み下がる。

距離はギリギリ、蹴りの間合いの外。

お互いに、踏み出せば危険な状況。

ダメージの度合いで見れば、龍一が有利だ。

だが、容易く攻撃を放てば、一瞬で龍輝に絡めとられる。

二人は見合いながら、距離そのままにじりじりと回転していく。

やがて二人は、試合場中央に戻っていた。

「いいかな?そろそろ」

龍輝が右腕を離し、微笑んで言う。

「いいよ」

龍一は応えた。

瞬間、龍輝が地面を蹴る。

右のハイキックが龍一の頬へ迫っていく。

龍一は体勢を下げ、ハイキックは髪の毛をかすめ取っていった。

龍一が右掌を上へ向け、思いっきり突き出す。

龍輝の顎へ、掌底が入った。

しかし、龍輝は掌底が触れると同時に、飛び下がってダメージを軽減していた。

龍一は掌の感触からそれを感じ取ると、飛び下がった龍輝に向かって追撃へ踏み出す。

右ジャブを放ち、龍輝を牽制しようとする。

龍輝は拳がぎりぎり当たらないところまで下がり、目を見開いたままジャブを躱した。

そのまま龍一が拳を戻すのを見届けた後、前に進み出た。

龍輝の額が、龍一の鼻っ柱へ突き刺さる。

「うっ…」

鼻血をまき散らし、一滴の涙が垂れる。

そこへ、右の前蹴りが腹に打ち込まれた。

「ぐふっ」

龍一が地面を転がるのを見た龍輝は、右足を地面に戻した。

腹を抑えながら立ち上がると、龍輝が飛び込んでくる。

龍輝の飛び蹴りが、龍一の脇腹へ。

金網で挟み込むように、龍輝は足を突き出している。

右手を龍輝の下ももに回し、突き飛ばす。

龍輝は多少体勢を崩し、一歩龍一から距離を取った。

龍一は咳き込みながら、金網に背を任せながら立ち上がる。

龍輝が一気に息を吐き、もう一度踏み出してきた。

龍一の顔面に向かって、左ストレートを放つ。

龍一が右に躱すと、体勢が崩れた。

龍輝の左足が、龍一の足を引っかけている。

前傾姿勢になる龍一の顔面へ、龍輝の左膝が飛んできた。

再び、鼻を潰される。

「づぁっ!」

龍一が鼻を抑えながら、地面にうつぶせに倒れた。

龍輝が腰を落とし、左腕を龍一の首へ回してくる。

龍一は咄嗟に、左肘を振り上げた。

龍輝の顎に、肘の先端が直撃した。

「くっ…まじか…」

頭を抑えながら、顔をしかめている。

龍一は右手で地面を突き放し、金網に背を託した。

「いつまでも逃げてちゃ…終わんないよ?」

「確かにね…わかったよ」

俯きながら深く息を吸い、顔を上げる。

龍輝の拳が、眼前に迫っていた。

それを転がりながら躱し、右足を地面に滑らせ、龍輝の足を払う。

龍輝は後ろに倒れることを直感すると、焦ったように体を捻り、左腕で受け身を取った。

四肢で地面を蹴り、龍輝の上に覆いかぶさる。

龍輝は左肘を振り上げ、龍一の後頭部に振り下ろしてきた。

歯を食いしばり、衝撃を耐えながら、右掌底を龍輝の胸に落とす。

「かはっ」

一瞬怯んだ隙に、左足で地面を蹴り、右前腕を龍輝の首に乗せた。

体重をかけ、龍輝の左手を掴んで相手の脇腹へ回す。

龍輝は起き上がることができず、腕は使えない。

そんな状況を作り上げた。

息を吐きながら、右腕に体重を乗せ続ける。

龍輝は軌道が詰まり、呼吸が薄く速くなっている。

龍輝が右膝を必死にぶつけてきているが、びくともしない。

汗が龍輝の顔へ落ちる。

その時、龍輝は下唇を噛みながら、右腕を振り上げた。

予想しなかったところから、右耳を掴まれた。

そのまま龍輝の上から振り落とされる。

「くそっ…!」

片膝をついた状態に起き上がったとき、龍輝の右腕が伸びてくる。

首を傾けて避けると、後ろの金網を右手が突いた。

龍輝は眉間にしわを寄せながら、腰を浮かし、左足を振るってきた。

右腕を立てて、蹴りを受ける。

痛みに耐えながら振るってきた蹴りとは思えないほど威力は高く、地面を転がらされた。

龍輝が左足を大きく後ろに下げ、腰を落とした。

「まだまだ。やれるかい?」

息を荒げながら、聞いてくる。

右腕を振りながら、ニヤリと笑う。

「もちろん。勝てるよ」

「あっ…そう…どうやって?」

「どうって…殴って?」

「じゃあ、警戒させてもらうよ」

龍輝はそう言いながら、両手を胸の前に出し、前傾姿勢に移行した。

「でも無理だね」

両腕を立てて、顔の横に置く。

まるで違う構えが、相対している。

相手の出方によって攻め方を変える二人。

動かない。

「龍一…」

総一郎が観客席で、目を細めながら言った。

「どっちの龍が動くかな…」

聖一が呟く。

その瞬間、動いた。

「同時!」

聖一が言うように、二人は同時に動いた。

龍輝の頭に向けて、左ミドルを放つ。

龍輝はさらに体勢を落とし、左足は空中を蹴った。

左足が過ぎ去った瞬間、踏み込み、龍輝は両腕を胴体に回してくる。

左手でしっかりと右腕を掴みながら、龍輝は突き進む。

しかし、体重は龍輝の方が軽い。

二歩下がったところで、体勢を落とすことで龍輝を止めた。

龍輝は左手を離し、右腕が弾けるように胴体から離れ、右腕が首を抑えてきた。

眉を尖らせ、右腕を一瞬離し、首に左腕を乗せてきた。

その動きに左腕へ重みがかかり、息が閉ざされる。

龍輝が右腕を振り上げた。

それを狙い、左拳で軽く龍輝の右腕を叩いた。

「痛っ!」

歯を噛みながら唾が飛び、龍輝は体を引く。

それを追って、進み出る。

龍輝の顎に向け、右肘を水平に振る。

龍輝が左腕を顎の横に添え、防御の体勢を取った。

その瞬間、龍一の右拳が持ち上がった。

拳は龍一の首の前を通り、肘は下を向く。

そのまま回転するように、横に倒れたような鉄槌が龍輝の左側頭部を叩いた。

「っ…」

脳が揺れるのを感じながら、体が前に崩れた。

その顔面へ、龍一は上に真っすぐかち上げるように左拳を放った。

龍輝の背はその衝撃で後ろへ反り、仰向けに倒れた。

「言っただろ?殴って倒すって。今のは、斗折龍行(トセツリュウコウ)と…龍騰孤高(リュウトウココウ)だ…」

言いながら、膝に手を付く。

「勝負あり!」

審判の声を聴いてからようやく、龍一は落ち着いて息を吐いた。


「いい加減起きろ。ぶん殴って起こしてやろうか」

三郎が拳を振り上げるのを見た瞬間、龍輝は体を起こした。

「起きた起きた!だから殴んないで!」

「誰が殴るかよ。起きたやつを、な」

「じゃあほんとに殴る気だったね。怖いな~三ちゃん」

龍輝は控室のベンチに横たわっていた。

ベンチから立ち上がり、龍輝は首を鳴らした。

「負けちゃったな~三ちゃんとの約束守れなかった」

三郎が天井を見上げる。

「約束…?んなもんしたか?」

「してないよ」

「んだてめぇ気持ち悪い」

「ひっど」

龍輝はブーブー言いながら、控室を歩き回っている。

「やっけに明るいな」

「まぁ僕、組長と戦う気あんまなかったし」

「だとしても、負けたんだぞ?気になんないのか?」

「なんないって。速く試合場行きなよ」

龍輝は面倒臭そうに、三郎の背中を押して控室の外に追いやっている。

「お前セコンド…まぁいいがな」

三郎が控室の扉を閉めた。

「はぁ…悔し」

龍輝が扉に寄りかかる。


47話 一対八 終

47話後書き。

どうも。

お久しぶりの投稿です。

中盤辺りは少しぐだってたのですが、どんどん加速していきました。

テストの結果はあまり良くなかったので、次のテストのときに結構休む可能性があります。

それまでに龍一は終わるのでしょうか。

今回、龍一対八でしたが、軽口叩く同士での戦いなので、会話が結構楽しかったです。

さて今回は、龍輝を既にやってしまったので代わりに龍一です。

少しですが変わっています。

身長180センチ 体重87キロ。

本当に少ししか変わってません。

というか龍一って結構大きいんですよね。

龍輝と10センチ差あります。

恐らく一番でかいのは223センチの日堂恵介さんです。

誰です?

では。

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