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龍道  作者: 栄光の平橋
金殺編
46/52

46話 四対二

二人の男が、試合場で見合っている。

四龍夏秋、伝統武道、舞流拳(マイリュウケン)の使い手。

龍の特訓時から、柔に興味を持っていた。

その後、特訓の成果を活かし舞流拳を修める。

夜頭竜二、藤木組の組員。

成長後も藤木組に入り続け、実戦経験を積み続ける。

「始めぇ!」

審判の声と共に、竜二が飛びだす。

軽い右ジャブを頭部へ。

夏秋は右に避け、右拳を振り上げる。

舞流拳は、舞のように滑らかに、流水のような威力を放つ。

川を流れる流水は、巨岩さえいつか砕く。

竜二の顎に、拳が触れた。

竜二は衝撃で数歩下がった。

「あぁ、そういう系?」

「舞流拳の恐怖は、ここからだよ」

「そっか」

竜二が再び駆け出す。

夏秋が右拳を真っすぐ突き出す。

滑り込むように夏秋の脇へ、竜二は躱した。

左フックを脇腹へ放つ。

しかし、拳が触れる直前、竜二の顔を何かが叩いた。

竜二は仰け反り、鼻を抑える。

「わお」

夏秋はいつの間にか、竜二に背を向けていた。

竜二の顔面を叩いたのは、夏秋の左裏拳。

舞のような、柔軟性。

そして、滑らかさ。

今度は、夏秋が進み出た。

竜二が両腕を上げ、ボクシングスタイルへ。

肩の周辺を守った、オーソドックスな構え。

だが、空いている。

まるで鞭のように右腕がしなり、正確に竜二の鎖骨へ手刀を打ち込んだ。

「っ…!」

竜二は左肩と首を接させながら、次の攻撃へ注意を惹いた。

次の夏秋の攻撃は、右脇腹への突き。

人差し指と中指による、一点を狙った突き。

竜二は交代し、警戒を固めようとした。

しかし休ませる暇なく、夏秋は距離を詰めてくる。

竜二は咄嗟に、夏秋へ左フックを放つ。

夏秋は下に屈んで躱し、右手首で竜二の顎を狙った。

竜二は気付いた瞬間頭を後ろに振り、手首を避ける。

だが、後頭部が金網にぶつかった。

夏秋は屈んだまま、竜二の腹へ縦拳を放つ。

次の瞬間、夏秋の拳が叩いたのは金網だった。

夏秋が上を見上げる。

竜二は飛び上がって拳を避けていた。

「やばっ」

夏秋が呟いたと同時に、竜二の右足が顔面を踏む。

そのまま夏秋を蹴り飛ばすように、竜二は跳んだ。

前に回転しながら着地し、振り返って夏秋を睨む。

夏秋は仰向けの状態で倒れていた。

「いったいな~」

夏秋が足を振り上げ、跳んで起き上がった。

「よし、続きだよ!」

竜二が姿勢を落とす。

低姿勢になることで、夏秋の打つ部位を減らしたのだ。

夏秋はそれを見て、飛び上がった。

竜二が目で追う。

「あれ…」

幸太郎が呟く。

夏秋は空中で体を捻っている。

「回天落としだ…!」

智が驚いて声を上げた。

竜二が両腕で頭頂部をガードする。

そこへ、夏秋の右踵が落ちてきた。

「ぐぅっ…!」

竜二が声を上げる。

夏秋は竜二の腕を蹴って着地した。

「龍一とはちょっと違う、踵から落ちる回天落とし」

微笑みながら言った。

「へぇ、面白いこと考えたね。確かにあれならガードを貫くぐらいの威力をだせる」

竜二は屈んだ状態のまま、だらりと両腕を下ろした。

(骨に響いたな…まだ始まったばっかだってのに)

深く息を吐き、立ち上がる。

「あれ、二発目行こうとしたんだけど」

「なっ…ホンっと嫌なこと考えるね」

竜二が目を細める。

歯を食いしばりながら、蹴りを受けた両前腕に力を込めた。

「…うわぁ、すごいことするもんだねぇ」

「ヒビが入ったわけじゃないなら、耐えれば打てる」

夏秋は薄く笑いを浮かべ、竜二のもとへ歩いて寄って行った。

「できる?そんな腕で」

「兄にそんな口でいいの?」

「実のじゃないでしょうよ」

「少なくとも、俺が思う弟には負けない」

言い終わった瞬間、夏秋の左頬を右拳が殴った。

「一発からの…」

竜二は殴り飛ばされた夏秋を追った。

左拳を振り上げ、夏秋の右上腕を殴る。

その殴打の勢いが消える前に、竜二は右足で地面を蹴った。

夏秋の左腕へ、右の脛が飛んでくる。

ビキッと、骨の音が鳴った。

夏秋が眉間にしわを寄せる。

その隙に、竜二の右足は地面を踏み込み、左拳が夏秋の顔面へ打ち込まれた。

夏秋の鼻から血が噴き出る。

夏秋が体勢を立て直そうとした瞬間、次の左アッパーが腹に刺さる。

夏秋が痛みを受け入れる前に、右肘と右膝が頭部を挟む。

目の回復を図る前に、胸へ後ろ蹴り上げが飛んでくる。

「かはっ」

ようやく、攻撃が止んだ。

夏秋は防御の体勢を取りながら、竜二へ目を向けた。

竜二は歯を噛みながら様子をうかがっている。

深呼吸をし、夏秋は構えを解いた。

「ひどいんだもんなぁ、竜二は。回復もさせてくれない」

竜二は鼻で笑った。

「あぁ、だから、お前は間違えた」

竜二の左足が、夏秋の足の前へ踏み出された。

「なっ!?」

夏秋が体を後ろへ下げた。

竜二の左拳が、目の前を通って上へ突き出された。

(速いっ)

竜二が右ストレートを放つ。

夏秋は転がり、竜二の拳を避ける。

顔を上げた瞬間、竜二の足が飛んでくる。

夏秋は両腕を顔の前でクロスし、蹴り飛ばされた。

金網に背を打ち、顔をしかめる。

そこへ再び、足が飛んでくる。

夏秋は右に避け、足首を左手で掴んだ。

そのまま足首を捻り、竜二の体勢を崩す。

竜二が地面に倒れ伏した瞬間、夏秋は跳んで離れた。

竜二は素早く体を起こし、夏秋に向かって飛び出した。

飛び出した勢いのまま、右ストレートを放つ。

夏秋は、左手の甲で拳の軌道をずらした。

右拳を握り、竜二の脇腹を突く。

しかし、竜二は怯む様子なく、右腕を曲げ、夏秋の肩甲骨へ肘を落としてきた。

「くっ…」

夏秋の両腕ごと、胴体を竜二の両腕が挟んだ。

夏秋の腹の前で、竜二の両手が組みあう。

「うわぁ…」

竜二が上へ飛び上がる。

夏秋が頭から落ちるような、そんな体制で。

(やばいやばい。ガチで死ぬかもっ!)

夏秋は焦りながら、左腕に全神経を集中させ、全力で自分の上へ引っ張った。

ドンッと、轟音が鳴り響く。

しかし、夏秋は左前腕から地面に落ちていた。

竜二は両腕を離し、跳び下がった。

「痛ぅっ…!」

夏秋は左腕を抑えながら立ち上がった。

(骨イッたかな…?)

夏秋は脂汗を垂らしながら考えていた。

竜二は好機と言わんばかりに、左腕を狙ったミドルキックを放つ。

夏秋は体を捻り、背中でミドルを受けた。

竜二は右足を戻し、再び飛び下がる。

「…ふぅ」

今度は夏秋が駆け出した。

右の拳を振るいながら。

竜二はしっかりと夏秋の拳を避けた。

そして、避けた先から拳が飛んでくる。

竜二の顔面を殴り飛ばした。

竜二はふらつく足を止め、顔を上げる。

「…まじか」

夏秋は左の拳で殴ってきていた。

ダメージが大きい方の腕で。

夏秋が再び駆け出す。

左脚を前に突き出す。

竜二はその脚を、右肘で打った。

「ぶっ」

だが止まらず、そのまま左足が竜二の腹をド突いた。

夏秋は汗を滝のように流しながら、浅い呼吸を繰り返している。

痛みに耐えながら、攻撃を繰り返す。

流れを取るには、これしかないと判断した。

夏秋が右足を振り上げる。

竜二は前傾姿勢でその右足を掴んだ。

そこに、左肘を落とす。

竜二の後頭部を叩いた。

痛みが大きいのは夏秋だろう。

しかし、ダメージとして大きいのは竜二であった。

脳が揺れる。

防ぐ気がなかったところからの攻撃が、竜二の脳を大きく揺らしている。

ふらつきながら竜二は距離を取った。

「逃がすかっ!」

夏秋が左足を突き出す。

竜二は体を落として蹴りを避けた。

そのまま、転がって竜二は距離を取る。

それを逃がさぬよう、夏秋は蹴りを放つ。

竜二の体勢が低いため、腕で狙えないからだ。

そう、それを利用していた。

竜二の状態と、夏秋の状態。

夏秋が右前蹴りを繰り出す。

また、竜二は下に避ける。

これまで、竜二は転がっていた。

だがもう、回復は済んだ。

竜二が勢いよく立ち上がる。

左腕で太ももをかけ、右手で夏秋の顎を突きながら。

油断したところへの攻撃は、より響く。

夏秋を頭から地面に落とした。

夏秋は、今度も転がるだろうと油断していた。

油断しようとした油断ではなく、無意識下で思ったから。

だから、咄嗟に受け身を取れなかった。

竜二が夏秋の体の上から降り、立ち上がる。

「勝負あり!」

審判の声が上がり、竜二は息をついた。

「まずは一回戦…」

竜二は呟きながら、試合場を出て行った。


「龍一」

龍一の控室に、総一郎が入る。

「ん」

総一郎が部屋を見回すが、龍一の姿は見当たらない。

「どこ行ったんだ?あいつ…」

総一郎が呟いた。


金殺のあるビルの屋上。

「なぁ、こんなとこ入ってよかったのか?」

幸太郎が聞く。

「入っても問題ないだろ」

武美が答える。

「思いっきり関係者以外立ち入り禁止って書いてたけどな」

龍一が言う。

三人は屋上に来ていた。

久しぶりに会ったから黄昏ようと、武美が言いだしたのである。

「星が近いな」

幸太郎が夜空を見上げる。

「あれは…デネブか?」

武美が指差す。

「何で個で言うんだよ」

龍一が言うと、武美が笑った。

「正直、龍一と喧嘩になってもギリ勝てるんじゃねぇかと思ってたけど、無理そうだな」

武美が言うと、龍一は鼻で息を吹いた。

「そりゃそうだろ」

「タケはちょっと自信過剰なとこあるからね~」

「なっ」

「龍一は、なんであの高校に行ったんだ?お前結構自頭いいだろ。もうちょいいいとこ行けただろ」

「いや~試合のせいで休む可能性あるから、不良に紛れようとね」

「不良校いったのかお前?俺は地方イチだぜ」

「知ってる。というか、はぴおは何でそんなこと知ってんの?」

「情報収集は俺の得意分野だから」

幸太郎が胸を叩く。

「龍ってのは、バケモンしかいねぇのか?」

武美が龍一に聞く。

「多分あれを見る限りね。俺の叔父さんはどんなだったんだろう」

「そりゃ、怪物だろ」

「人の叔父さんを怪物呼ばわりしないの」

「幸太郎は真面目だなぁ」

武美が面倒くさそうに言う。

「勝ったのは何だっけ?」

「八嶋龍輝と登竜門三郎と夜頭竜二。次戦うのは八嶋龍輝だよ」

「三郎と竜二はどっちが勝ちそう?」

「う~ん。もちろんフィジカルで言えば三郎だけど、そのフィジカルを逆に利用されるかもだからな~」

「んなことは終わってから考えろよ。重要なのは二回戦の八嶋だろ?」

「八嶋龍輝は…極められた瞬間終わるから、精神力の戦いになるかな…」

「あの回天落としってやつは、当たるか?」

「難しいかな。後隙を考えると」

「面倒くさそうなこと考えて戦ってんのな」

「お前ほんとに地方イチか?」

龍一が疑わしげに聞く。

「舐めてんのか。お前がどっか行くから頑張ったんだぞ」

「俺を超えたくて必死になってたもんなタケ」

「なってねえし。力で言えば、お前なんか一捻りだし」

「その力は龍一に負けてるけどな。因みに俺学年でも一桁だけど、お前は?受かってからも勉強してるか?」

「…数Ⅱとかいうやつは捨てた」

「あらら、数学捨ててるよこの人」

「はぴお、何部入ってんの?」

「ん?パソコン部。情報を頭に入れるのは得意だからな」

「へっ、部活なんか入っても何もなんねぇよ」

「甘いね、タケ。パソコンは将来に役立つんだよ」

頭を指で小突きながら言う。

「龍一は?」

「俺、格闘技の部活に入ろうと思ったんだけどさ。部室入った瞬間木刀見えて部活はいるのやめたわ」

「どんだけ荒れてんだお前の学校」

幸太郎が手首の方に目を向ける。

「そろそろ戻ろ。不戦敗になるよ」

「そんな時間たった?しょうがない…!」

三人が立ち上がる。

「ボコしてやれよ」

「頑張るよ、出来る限りね」

龍一は二人に向けて笑った。


「三ちゃんありがとね~。セコンドなんてしてもらってぇ~」

龍輝が椅子に座りながら、立っている三郎を見上げている。

「お前がしつこくセコンドやってあげたお礼とか言ってきたんだろ?こっちは頼んだわけでもねぇってのに」

「ままっ、それはいいじゃん!楽しくいこうよ!」

「お前のは能天気のバカっていうんだぞ」

「失礼な!能天気とバカは違うよ!」

「どっちみちだろ」

龍輝が立ち上がる。

「まぁ見ててよ。僕の試合、興奮しないでよ」

「おお、寝て待ってる」

「んも~照れ屋さん~」


46話 四対二 終

46話後書き。

どうも。

あまりうまく扱えないキャラ2人目?3人目?です。

二重人格ってどっちの扱いすればいいんでしょう。

四龍夏秋はあまり戦わないかもです。

正直戦闘がうまく書けなかったので、会話劇を頑張りました。

武美と幸太郎と龍一の会話は頑張ってキャラごとの特性でだれが喋ってるか見分けてください。

今回は四龍夏秋です。

身長176センチ 体重69キロ。

四龍夏秋ってよんりゅうなつあきって打たなきゃ出てこないんですよね。

夏秋でナツアって何ですか?

では。

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